ニュースレター

2015年02月27日

 

市民防災世界会議 ~ セカイと学ぼう。市民のための防災会議へ!

Keywords:  ニュースレター  防災・減災 

 

JFS ニュースレター No.150 (2015年2月号)

写真:国連防災世界会議Copyright 2015防災世界会議日本CSOネットワーク All Rights Reserved.

2015年3月14~18日の5日間、仙台市で国連防災世界会議が開催されます。10年ごとに開かれる会議の3回目。世界193カ国から、防災・減災に取り組む5千人以上が集まります。前回の会議では、世界で唯一の国際的な防災指針「兵庫行動枠組(HFA)」が策定されました。今回は、その後継となる「ポスト兵庫行動枠組(HFA2)」の採択を目的としています。

この会議と並行して3月14~17日の4日間、各国の市民同士による学び合いを目的に行われるのが『市民防災世界会議』です。東北の経験を発信する企画、海外の防災の事例を学ぶ企画、気候変動や貧困といった地球規模の課題とのつながりを考える企画など、最初の3日間で9つのセッションを行います。最終日には、各国ゲストとこれからの市民防災を考える1日と題し、東北の伝統芸能パフォーマンスや国際シンポジウムを交えたメインイベントが行われます。動画配信も予定されていますので、現地には行けないという人でも、現場の雰囲気を味わうことができます。
http://jcc2015.net

『市民防災世界会議』を企画・運営するのは、2015防災世界会議日本CSOネットワーク(JCC2015)です。持続的で災害に強いレジリエントな社会の構築に向けて、世界の人々と共に学びを分かち合い、提案していくために、日本のCSO(市民社会組織)に参加を呼びかけ、ネットワークを築きました。今回の活動をきっかけに何を目指すのか、JCC2015の事務局を務める、ピースボート災害ボランティアセンター理事の合田茂広さんに伺いました。


日本の教訓を世界へ

国連防災世界会議は、今回の仙台もそうですが、過去2回も日本で行われています。なぜ日本で開催されるのだと思いますか? そこには、日本開催を後押ししてきた世界の人たちの、日本に対する期待があります。

日本は災害大国です。古くから地震や津波、水害や雪害、噴火などの自然災害に見舞われてきました。近代化に伴い、工場の大規模火災や化学物質の流出、原発事故といった産業災害も経験しました。これだけ多種多様な災害と向き合ってきた国は、そう多くはありません。

災害を経験した被災地は、初期の緊急対応、そして復旧・復興のプロセスにおける現場の経験を持っています。それらを将来の災害に教訓として活かし、備えることが防災であり、減災です。この緊急対応→復旧・復興→防災→減災というサイクルを何度も繰り返すことが、災害に対する強さ(レジリエンス)を高めることにつながります。

世界の人たちは、日本は災害大国だと知っています。そして、その度にレジリエンスを高めてきた防災大国だと考えています。だからこそ、日本の教訓から学び、自国の防災対策に役立てたいと期待しています。ただ、これまで日本の防災関係者はあまり海外の事例に目を向けてきませんでした。

その風向きが少し変わろうとしています。東日本大震災で支援を受けた国々に対して、きちんと復興の現状を報告し、防災・減災への教訓を伝えようとする、恩返しの動きがひとつ。そしてもうひとつは、第3回国連防災世界会議が開催されることをきっかけとした動きです。

「HFA」に市民の声を!

日本の防災では、「自助」「共助」「公助」の3つの力が大切だとされています。「公助」は制度やインフラなど、主に行政が担う分野です。自分や家族の身を守る「自助」、地域やボランティアで助けあう「共助」は、市民が主役の分野です。

国連防災世界会議は、国連に加盟する国=行政が集まって「公助」について話し合う会議でもあります。ただ、それに加え、「自助」「共助」の当事者である市民が参加しなければ、実りのある会議にはなりません。

10年前、阪神・淡路大震災の被災地である兵庫県神戸市で、第2回国連防災世界会議が開催されました。市民にも開かれた会議にしようと、本体会議と平行して一般参加者向けのサイドイベント(パブリック・フォーラム)が企画されましたが、セミナーやシンポジウムのほとんどが国際機関や行政・自治体、研究者が主催したもの。日本では、「ボランティア元年」と呼ばれた災害から10周年だったにも関わらず、積極的な市民参加は見られませんでした。

写真:On the ROAD TO SENDAICopyright 2015防災世界会議日本CSOネットワーク All Rights Reserved.

結果、この時に策定された世界で唯一の国際的な防災指針「HFA」では、市民の声が十分に反映されていないこと、政策と現場の溝が埋まらないことが問題視されてきました。この反省から、JCC2015が生まれました。国際協力NGOセンター、CWS Japan、せんだい・みやぎNPOセンター、ピースボート災害ボランティアセンター、ふくしま地球市民発伝所の5団体が共同事務局となり、東北被災地での活動経験を持つ日本のCSOが100団体以上参加しています。

JCC2015は、第3回国連防災世界会議のNGOメジャーグループ・オーガナイジングパートナーに選定され、各国代表が集まる政府間準備会合や、地域準備会合に出席してきました。東北被災地で活動した市民社会の教訓や被災当事者の声を、きちんと国際社会に「輸出する」役割です。

特に、地震・津波と原発事故が合わさった福島での複合災害は、世界から最も注目されているテーマです。世界一の防災技術を持った日本ですら大混乱に陥り、いまだ復旧・復興の方向性も定まっていません。この状況をきちんと情報発信できるのは、福島の住民や避難生活を続ける当事者であり、またそこに寄り添い支援を続けるCSOもその役割を担うべきだと思っています。

JCC2015は、国際的な防災・災害救援NGOのネットワークである GNDR(地球市民社会の防災ネットワーク)、アジア諸国のNGOネットワーク ADRRN(アジア防災・災害救援ネットワーク)、家庭や地域での防災に取り組む女性ネットワーク Huairou Commission(ホワイロー委員会)とも協定を交わしています。日本に海外の市民社会の学びを「輸入する」役割も担っているのです。

これらの活動を通じて、新しく採択される「HFA2」には、日本と世界の市民社会が主張してきたいくつもの要素が、盛り込まれることになりました。

写真:セカイと学ぼう。市民のための防災会議へ!
Copyright 2015防災世界会議日本CSOネットワーク All Rights Reserved.

『市民防災世界会議』と『福島 10の教訓』

3月14~17日に仙台で開催する『市民防災世界会議』は、一人でも多くの市民参加を目指してJCC2015が企画運営するもので、第3回国連防災世界会議パブリック・フォーラム(市民向けイベント)最大の市民企画です。3日間のテーマ別セッションと最終日のメインイベントに分け、4日間連続で開催します。読者のみなさんも是非ご参加ください。

また、会議に先立って3月12、13日には、フクシマの教訓と現在を知るための現地スタディーツアーと国際シンポジウムを行います。ここで発表するのは、原子力防災の教訓を市民目線でまとめたブックレット『福島 10の教訓』です。日本語、英語のほか、韓国語、中国語、フランス語の翻訳版も発刊。その後、さらに原発を持つ国の言葉に翻訳していきたいと考えています。

写真:Fukushima bookletCopyright 2015防災世界会議日本CSOネットワーク All Rights Reserved.

日本の市民社会は、大災害を契機に強くなってきた歴史があります。地域住民やボランティアによる助け合いは、防災大国日本におけるソフト面のレジリエンス・モデルです。また、防災は、日本と世界の距離がこれから縮まっていく分野です。私自身、その分野に携わる一人の市民として、ソフト面での防災の主流化に取り組みつつ、防災・減災をキーワードに世界との新しいつながりを作っていきたいと思います。

〈参考〉
市民防災世界会議
http://civilsociety.jcc2015.net/

福島から世界へ!
http://fukushimalessons.jp/index.html

ピースボート災害ボランティアセンター・理事 合田茂広
(編集:スタッフライター 田辺伸広)

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