ニュースレター

2014年11月10日

 

日本全国で「稼動原発ゼロ1年」達成――「自然エネルギー革命」を次のステージへと加速する起点の日に

Keywords:  ニュースレター  原子力 

 

JFS ニュースレター No.146 (2014年10月号)

写真:7.29脱原発国会大包囲
イメージ画像: Photo by midorisyu Some Rights Reserved.

2011年3月11日に発生した巨大地震は大きな被害をもたらすと同時に、地震・津波により、東京電力福島第一原子力発電所で大きな原発事故が起こってしまいました。この原発事故を契機に、日本国内でも原子力発電のあり方が見直され、2013年9月15日から1年以上、原発稼働率0%の状態が続いています。

国内の電力需要と原発稼働率の状況 http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id032736.html

今月号のJFSニュースレターでは、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの快諾を得て、2014年9月10日に発行されたブリーフィングペーパー『日本全国で「稼動原発ゼロ1年」達成』から、福島第一原発事故前後における発電電力量の構成や二酸化炭素排出量等の推移、自然エネルギーの増加についてお伝えします。

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2014年9月15日、日本全国の原発が稼働を停止して1年を迎える。東京電力福島第一原発事故という未曾有の惨事の直後ですら、「原発ゼロ」は非現実的とされていた。しかし、それからわずか3年半が経過したいま、日本は「原発ゼロ」で電力ピークの夏を乗り切り、「原発ゼロ」1年を迎える。再稼働が申請されている13原発20基の原発の再稼働は遅れる一方、市民や企業は、地域コミュニティーを巻き込みながら、自主的に省エネルギーとエネルギー効率化を進めるとともに、自然エネルギーの導入を牽引している。原発なしに1年を乗り切れることが明らかになった今、原発を現役の電源として考え続けることのほうが非現実的になりつつある。省エネと、安全で持続可能な自然エネルギーの活用を確かなものとするために、「原発ゼロ」1年を、「自然エネルギー革命」をさらに進める起点の日とすべきだ。

原発ゼロ1年の日本が現実に

2011年3月に東京電力福島第一原発で起きた壊滅的な3基の炉心溶融と、現在もなお深刻化する状況によって原発の危険性に対する認識が高まり、日本の原発は次々に稼働を停止した。原子炉を所有する電力会社は、再稼働に躍起になっているが、かつて全国の電力の30%を供給した54基の原子炉のうち福島第一原発の6基は廃炉が決まり、残り48基のうち46基(96%)は過去2年以上、まったく使用されていない。そして2014年9月15日、日本は原発からの電力に1キロワットも頼らず、大規模な停電もなく、「日本全国で稼働原発ゼロ」1年を達成する。

原発で発電していた電力、省エネと天然ガスで代替

原発が賄っていた分の電気は、省エネなどによる需要削減と、おもに天然ガスによる火力発電によって埋め合わされている。

省エネのチカラ 1.7兆円、原発13基分

経済産業省によれば、2010年度から2013年度に、火力発電は1900億kwh(134%)増加した。一方、同時期に省エネなどにより減少した発電量は789億kwhだった。仮にこの全量を化石燃料で代替した場合を考えれば、1.7兆円の節約効果と言える。この間GDP(国内総生産)は約10%減少したが、それでも2012年は1960年以降最高を記録し、2013年も同年以降、6番目の規模となっている。なお、減少した789億kwh(一般家庭2200万世帯分)は、原発13基分の年間発電量に相当する。

化石燃料購入費、増加分の65%は円安・単価上昇が原因

2010年度と2013年度を比較すると、10電力会社の火力発電による化石燃料購入費は、2010年度の約3.2兆円から、2013年度には約7.2兆円に増加し、約4兆円が国富流失したとされている。この間、10電力会社の火力発電による実際の化石燃料の使用量は1.4倍であったが、化石燃料の購入金額は2.3倍になった。環境エネルギー政策研究所は、仮に化石燃料の購入単価が一定だった場合、2013年度の化石燃料の購入費は4.6兆円(すなわち原発停止に伴う燃料費の増加は1.4兆円)にとどまったと推定し、4兆円の化石燃料購入総額増の65%(2.6兆円)は、円安や原油価格上昇による購入単価の上昇によるものであると指摘している。

発電方法ごとの燃料に関する比較 ――自然エネルギーが「国富流出」を防ぐ

表1は、自然エネルギー、原子力、化石燃料を用いた発電方法について、燃料に関する比較を示すものである。ウランや化石燃料といった輸入燃料の使用は、毎年何兆円も外国への支払いを続けることを意味する。政府は、「国富流出」を懸念するのであれば、原発や化石燃料を頼りにするのではなく、省エネとエネルギー効率化、そして自然エネルギー利用がさらに拡大するよう、一刻も早く野心的な目標を定め、政策を整えることがもっとも論理的である。

二酸化炭素の排出量の推移に、原発停止前から目立った変化なし

全般的に見て、福島原発事故後の日本の二酸化炭素排出量は驚くほど変化が緩やかである。日本の原発保有量は世界第3位だが、事故後わずかの期間にすべての原子炉が稼働停止したにもかかわらず、二酸化炭素排出量の増加は予想よりもはるかに少なかった。エネルギー部門の二酸化炭素排出量は、原発事故以前・以後でさほど変わらず、2009年から2010年の年間排出量は約7%増加したのに対し、2010年から2012年の年間排出量の増加は8%未満である。つまり、原発事故後の二酸化炭素排出量は急激な増加とはほど遠く、2008年の金融危機からの景気回復による影響を一部受けつつ、それまで問題となっていた排出増の傾向が続いていると言える。

増加する自然エネルギー ――2013年度のみで原発3基分の発電

自然エネルギーの固定価格買取制度が2012年7月に導入されて以降、制度の対象となる自然エネルギー、特に太陽光による発電は全国各地で急速に進んでいる。2013年度には、年間181億kwh(一般家庭500万世帯分)がこれらの自然エネルギーによって実際に発電された。これは原発3基分の年間発電量に相当する。2012年7月から2014年5月までの累積発電量は287億kwhにのぼる。

2年足らずで、53万カ所の「ミニ太陽光発電所」が誕生

2012年7月の固定価格買取制度の開始から、2014年5月までの2年足らず(23カ月)の間に、全国で68万件(1043万kw)の自然エネルギーによる新しい「発電所」が資源エネルギー庁によって認定を受け、誕生した。その大半を占めるのは、住宅の屋根などに取り付けられる10kw未満の太陽光発電で、合計53万件に達する。1件の申請が1カ所と考えれば、全国で毎月2万3000世帯が新たに「ミニ太陽光発電所」になり、電気を使うだけの暮らしから、電気を創り出す生活へとシフトしている計算だ。53万カ所の「ミニ太陽光発電所」が23カ月で作り出した電気は85億kwhで、原発1.4基分の年間発電量に相当する。

歴史的な原発ゼロ一年、「自然エネルギー革命」を次のステージへとさらに加速する日に

東京電力福島第一原発事故前、日本の発電量の30%を占める原発を、短期間にゼロにすることが可能だと公言していた人は、ほとんどいなかった。しかし、2011年3月に起きた東日本大震災と福島原発事故を大きな契機に、そして2012年7月に始まった自然エネルギーの固定価格買取制度の後押しを受けて、日本の電力を取り巻く状況は大きな変化を遂げている。2014年9月15日、日本は約半世紀ぶりに、原発から供給される電気がゼロ1年を迎える。これほど急激で、大規模な原発ゼロの達成は、世界でも例がない。しかも、当初懸念されていた電力不足による停電は起きていない。

原発事故から半年後の2011年9月、グリーンピースは『自然エネルギー革命シナリオ――2012年、すべての原発停止で日本がよみがえる』を発表した。そのなかで示した、「2012年にすべての原発が停止しても必要な電気がまかなえる」は現実となり、太陽光発電の予測導入量も、ほぼ現状と合致している。同シナリオでは、2020年に自然エネルギーで電力の43%を賄うことを描いている。

原発の再稼働見込みを何度も延期する電力会社を尻目に、市民、地域コミュニティー、企業は自主的に省エネとエネルギー効率化を進め、自然エネルギーの導入拡大を牽引してきた。政府は、原発に依存してきた過去に戻るのではなく、省エネと安全で持続可能な自然エネルギーによる未来へと進むべきだ。福島原発事故の収束と被害者への十分な補償、原発立地周辺の住民の安全確保、省エネ・エネルギー効率化と自然エネルギーのさらなる導入、そして温室効果ガス削減への野心的な目標設定と、政府には再稼働よりもやるべきことがたくさんある。日本の「自然エネルギー革命」はすでに始まっている。歴史的な原発ゼロ1年を、「自然エネルギー革命」を次のステージへとさらに加速する起点の日とすべきだ。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン ブリーフィングペーパー(2014年9月)
日本全国で「稼動原発ゼロ1年」達成 ――「自然エネルギー革命」を次のステージへと加速する起点の日に より

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