ニュースレター

2018年06月15日

 

首都圏の消費者と地域の生産者を結ぶ風力発電 生活クラブの取り組み

Keywords:  ニュースレター  再生可能エネルギー  市民社会・地域  政策・制度 

 

JFS ニュースレター No.189 (2018年5月号)

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イメージ画像:Photo by ぽん太.

全国32の生活協同組合の連合会である生活クラブ(正式名称:生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)は、生活に必要な食料を自分たち自身で購入することを基本として、日本各地の信頼関係で結ばれた生産者と連携した共同購入を50年以上行ってきました。安心・安全な商品を購入する取り組みは、今では、暮らしやすい地域社会づくりや、エネルギー問題などさまざまな社会課題に対応する事業へと広がっています。

JFSニュースレターNo.179(2017年7月号)
組合員の意志で社会課題を主題とする事業に取り組む生協、生活クラブ
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035881.html

「食」と並んで電気やエネルギーは、私たちの生活に欠かすことができません。しかし、エネルギーを自分たちの生活圏で自給することには残念ながら限界があります。そこで、生活クラブはこれまで50年以上にわたって積み重ねてきた「生産」と「消費」の繋がりをエネルギーにおいても実践し、「エネルギーの地域間連携」をつくることを目的とした取り組みを進めています。

生活クラブでは、「電力を国や電力会社に任せるのではなく、自分たちで供給・販売しよう」と株式会社生活クラブエナジーを、各地の生活クラブの出資により2014年に設立しました。全国46カ所の自然エネルギー発電所より電力を調達して、全国の約1万世帯と事業所に、自然エネルギー中心の電気を販売しています。

今月号のニュースレターでは、この生活クラブのエネルギー分野の取り組みの起点となったともいわれている、秋田県にかほ市に建設された「生活クラブ風車 夢風(ゆめかぜ)」の取り組みについて、「都市」と「地域」、そして「生産」と「消費」とのつながりを中心にご紹介します。

2012年3月、生活クラブの首都圏にある4つの生協(生活クラブ東京、生活クラブ神奈川、生活クラブ千葉、生活クラブ埼玉)の共同事業として、秋田県にかほ市に「生活クラブ風車 夢風」が建設されました。一般社団法人グリーンファンド秋田を事業主体とし、生活クラブ首都圏4生協が出資及び融資をして参画・運営しています。

出力1,990kwの大型風車で、年間490万kw時を発電し、株式会社生活クラブエナジーに全量を売電しています。

他の風力事業とはちょっと違う!?

生活クラブとしてもはじめてのエネルギー分野の取り組みであったことから、にかほ市とどのような関係性を築いていくかについて、組合員のなかで幾度となく話し合い・提案が行われました。そして、組合員の中から「地方で作られた電気が送電線を伝って首都圏で使われるという見えない関係性ではなく、風車や自然エネルギーがその地域にあることによって地元にもプラスの効用を生むような活発な関係が望ましいのでは」といった意見が出てきたことをきっかけに、秋田県にかほ市の地域の方たちと首都圏在住の組合員の交流活動が始まりました。

風車稼働1周年を祝うイベントの際には、地元住民と首都圏の組合員を招いてバーベキューをして祝杯をあげました。定期的に組合員を対象にしたツアーを開催して、風車見学はもちろんのこと、にかほ市周辺の豊かな自然のなかをトレッキングしたり、そば打ち体験などのプランを立てて、にかほ市と協力して実施しています。また、最近では生活クラブとにかほ市の取り組みを知った首都圏の大学生も見学に訪れるようになり、交流の幅も広がってきています。

その交流活動の効果もあり、住民の間では、生活クラブの風車は、どんな人が電気を買っているのかがわかる「顔が見える風車」になっているとのこと。にかほ市は日本海に面しており、風況のよい好立地であるため、市内には風車が数十基あります。しかし、生活クラブ風車・夢風は地元の人たちから「生活クラブの風車を見ると組合員の顔を思い出す」「生活クラブの風車が回っていないと心配になる」と言われるなど、にかほ市で最も有名で愛される風車となっています。今後は防災協定など交流や連携をさらに深めていくべく、さまざまな試みが検討されています。

風車を身近に感じているのは、大人だけではありません。にかほ市では小学校の授業で、生活クラブ風車・夢風がエネルギー学習の教材として扱われており、実際に風車が回っているところを見たり、風車の中に入ることができたりなど、環境・エネルギーを学ぶ場所ともなっています。

また、この風車の名前の「夢風」は、にかほ市の小学生を中心に愛称を募集して決定されたものです。秋田県にかほ市の小学生、保護者、クラス、グループ(サークル)に愛称を募ったところ、270件もの応募がありました。にかほ市教育委員会で絞った10案の中から、総勢約1,800名の組合員の投票で「生活クラブ風車 夢風」に決まりました。

風車の愛称も、地域の住民と首都圏の組合員のそれぞれの思いのこもったものであるからこそ、風車に対する愛着も深いのではないでしょうか。

夢風ブランドの共同企画・開発

生活クラブとにかほ市とのつながりは、ますます大きくなっています。生活クラブでは、にかほ市で作っている加工用トマトや大豆などの農産物を、生活クラブの消費材の原料として仕入れています。また、風車で発電された電力の売電益の一部は、にかほ市の農産品加工に充てています。さらに、2015年からはブランド開発も共同で行なっています。

首都圏の4つの生活クラブがにかほ市の地元加工業や酒造などと協力し、「夢風ブランド品」として地元の特産品を使った商品の共同開発を行っています。2016年度は、生活クラブ神奈川の「純米大吟醸・夢風」、生活クラブ東京の「タラーメン醤油味」、生活クラブ千葉の「鱈しょっつる」、生活クラブ埼玉の「べっぴんさんいちじく」を夢風ブランド品として共同開発して、組合員向けに販売しました。

ブランドの共同開発には、首都圏在住の組合員、特に主婦が多く参加しており、互いに首都圏とにかほ市を行き来して何度も試行錯誤を重ね、半年近くかけて商品を開発しているとのこと。地元の企業側は、普段直接聞くことのできない首都圏の消費者の声を聞くことができるとともに、新たなビジネスへとつなげることのできる大きな機会となっています。

再生可能エネルギーをめぐる日本の状況は、2011年の原発事故や2012年のFIT(固定価格買取制度)の導入、そして、2016年の電力小売り自由化により、大きく変化しています。FITの導入により、再生可能エネルギーに取り組む地域が増えました。電力小売り自由化により、私たちは再生可能エネルギーにこだわった新電力会社から電気を購入することが可能となりました。「どこでどのように作られた電力を買うのか」を意識して行動することが可能になったのです。

生活クラブとにかほ市の取り組みの特徴は、エネルギーと食料という私たちの生活を支える大きな2つの領域で、都市に暮らす人々と地域とを結び付けている点です。現在は、消費者にとっては、手元にある食材や電気がどこから来たのかが見えず、生産者にとっては、自分たちが作ったものがどのような人のもとに届いているのかが見えない社会です。こうしたつながりを相互に知ることができる生活クラブとにかほ市のような取り組みは、今後、より求められるのではないのでしょうか。

スタッフライター 久米由佳

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