ニュースレター

2010年05月25日

 

印刷業で培ってきた創造的な技術で持続可能な社会の実現に貢献する ~ 凸版印刷株式会社

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JFS ニュースレター No.89 (2010年1月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第87回
http://www.toppan.co.jp/


凸版印刷は、大日本印刷と共に、国内では群を抜く事業規模を誇る業界最大手です。日本の印刷業界は、常にこの2社がリードし、数社の準大手企業、中堅企業、そして全体の90%以上を占める従業員数20人未満の小規模事業所が、全体を支える構造になっています。

インターネットなどのデジタルメディアの普及により、紙の印刷物が減少傾向にある今日。印刷業界各社は、経営のサステナビリティをかけ、事業領域を拡大し、新たなビジネスモデルの確立を模索しています。

1900年に大蔵省(現:財務省)出身の技術者が中心となって設立された凸版印刷は、有価証券の印刷に始まり、チラシやパンフレットなどの商業印刷、そして出版印刷、さらにパッケージへと事業を展開し、紙の印刷からプラスチックや建装材へと事業領域を拡大してきました。

印刷事業の拡大に伴い、エレクトロニクス分野へと派生し、創立から110年となる現在は、証券・カード部門、商業印刷部門、出版印刷部門、パッケージ部門、高機能部材部門、建装材部門、半導体関連部門、ディスプレイ関連部門の、8つの部門で事業を行っています。

また、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オセアニアなどにも、調査研究、製造販売の拠点を設け、グローバルに事業を展開。各事業分野での研究開発に注力することで、部材を納品するだけでなく、サプライチェーンの川上、川下の要求を汲み取り、その声に積極的に応え、新しいものを創り出していく「需要創造型」企業として、凸版印刷ならではのソリューションを提案しています。

「事業領域は拡大しても、凸版印刷は、印刷が核であることに変わりありません」という、製造・技術・研究本部 品質・エコロジーセンター課長の木下敏郎さん。8分野にわたる事業領域の中から、環境に配慮した重点的な取り組みについて、お話を伺いました。


森の循環に貢献するカートカン

大量生産、都市型立地の産業である印刷業。生産される印刷物は、広告物や雑誌、パッケージ類など、私たちの暮らしに密着した中で利用されています。そのため、発注元のメーカーのみならず、印刷に携わる企業の環境への配慮が、人々の目に見えやすく、環境への意識が高まる中で、その取り組みが常に注目される産業ともいえます。

凸版印刷の考える「環境経営」は、企業活動が環境保全活動と環境配慮型製品の開発・生産活動を「両輪」としてなされていること、を旨としています。それを具現化した取り組みのひとつが、新世代の紙製飲料缶である「カートカン」です。

環境問題に対して先進的な取り組みを行っているヨーロッパで開発されたカートカンのシステムを、凸版印刷の液体用紙容器「EP-PAK」の技術で改良。リサイクル時に分別しにくくなる金属(アルミ)を使わず、水蒸気や酸素を通さない、世界最高水準のバリア性能を誇る凸版印刷が開発した透明蒸着フィルム「GLフィルム(透明ハイバリアフィルム)」によって、常温での保存・流通、長期保存において、より優れた内容物の保護を可能にしました。

このように独自の技術を活かすと同時に、カートカンの原材料には間伐材を含む国産材が30%以上使われており、林野庁の国産材利用普及促進のPR活動である「木づかい運動」の実践商品にもなっています。

JFS関連記事:国産材の利用を推進する「木づかい運動」スタート
http://www.japanfs.org/ja/pages/023984.html

「間伐材の問題は、間伐材に使い道がないところにあります。林野庁は、木を植え、育て、収穫するという、緑のサイクル(ループ)をまわすために、昔から間伐材を使用してきましたが、さらに森を守る観点で、用途を提案していくことが私たちの役割と考えています」(木下さん)

1996年の発売以来、年間1億本以上のカートカン飲料が販売されています。紙製飲料容器を使用する飲料メーカーや容器製造にかかわるメーカー、日本の森を守ることに賛同する団体などが参加する「森を育む紙製飲料容器普及協議会(もりかみ協議会)」が、さらなるカートカンの普及に尽力し、凸版印刷も賛同企業の一員として、カートカンを通した森林保全活動の一翼を担っています。(http://www.morikami.jp/

JFS関連記事:「森を育む紙製飲料容器普及協議会」設立
http://www.japanfs.org/ja/pages/023415.html

国産間伐材を使用した紙製飲料缶など、第3回エコプロダクツ大賞を受賞
http://www.japanfs.org/ja/pages/024376.html


次世代型太陽電池バックシートで太陽電池の普及に貢献

「印刷」というイメージからかけ離れた感のある半導体ソリューション、エレクトロニクス分野への事業拡大も進める凸版印刷ですが、中でも意外な事業が「次世代太陽電池バックシートの生産」です。

太陽電池の表面はガラスで覆われていますが、裏面は電気を取り出すための加工が必要になることや軽量化のために、プラスチック素材が使われています。この裏面のフィルムをバックシートと呼びます。太陽電池は数十年にわたり屋外にさらされるため、バックシートには耐候性に優れた素材が使われます。そのバックシートの素材として25年以上の使用実績を誇る業界標準フィルムが、米国デュポン社の「テドラー(R)」です。

凸版印刷は、2008年7月に米国デュポン社と「ポリフッ化ビニル樹脂加工」に関する技術移転契約、特許実施許諾契約、デュポン社登録商標「テドラー(R)」の商標使用ライセンス契約を結び、2009年4月には、次世代の機能性フィルムの製造拠点となる新工場「深谷工場」(埼玉県深谷市)を竣工しました。

同工場では、デュポン社より「テドラー(R)」の原料供給を受け、凸版印刷の製造技術を用い次世代型太陽電池バックシート「BS-TXシリーズ」の一貫生産体制を構築し、2009年6月よりサンプル出荷を開始しています。

凸版印刷がこうした事業に踏み出した背景には、国内外で成長著しい太陽電池市場の動向があります。日本では、政府による住宅用太陽電池装置への設置補助金などもあり、家庭における太陽電池システムの急速な普及が見込まれるなど、国内をはじめ全世界へバックシートを安定的に供給することが狙いです。

デュポン社の実績ある素晴らしい素材技術と、印刷産業として今日まで培ってきた「安定した品質の製品を大量生産する」ところに、凸版印刷の技術力を発揮。「さらに今後は、パッケージ分野で活用しているハイバリアフィルム『GLフィルム』で培ってきた、物の表面に薄膜を接着させる真空蒸着技術をも組み合わせ、太陽電池の普及を裏方で支えます」(木下さん)

この分野で国内最大級の深谷工場は、太陽電池発電量換算で年間2ギガワット以上の生産能力を誇ります。今後も生産技術の革新を進めるとともに、各種高機能フィルム部材の製造拠点として、事業を拡大する計画です。

「日本でなぜ自動車が強くなったか。それはトヨタだけが強かったのではなく、周辺産業がこぞってしのぎを削ったからです。太陽電池も同様に、国内大手向けで競い合ってこそ、世界に通用する産業として育つのだと思います。凸版印刷はその一角で自らの力を発揮していきたいと思っています。」(木下さん)

カートカン、太陽電池のバックシートなど、人々の生活に密接した製品の部材供給を行う一方、特定の工場とオフィスからのCO2排出量を印刷業界では初めて排出権購入によるオフセットをすることに取り組み、実現しました。

具体的には、東京・秋葉原にある本社地区のビル5棟からの約3,000トン、カートカンの製造拠点で凸版印刷のグループ会社である株式会社トッパンパッケージングサービス袖ヶ浦ビバレッジ工場からの約4,600トン、合計約7,600トンを、国連認証の排出権「CER」で相殺します。

各事業所の環境負荷低減を目指す「エコガード活動」、環境への取り組みを組織的に創造する「環境マネジメント活動」、循環型社会の実現に向けた製品・技術・サービスを開発、提供する「エコクリエイティブ活動」、広範な関係者との連携を図る「環境コミュニケーション活動」などを通して、凸版印刷は、グループ全体、すべての事業で持続可能な社会の実現に向けて邁進しています。

(スタッフライター 青豆礼子)

JFS関連記事:情報・文化の担い手として - 凸版印刷株式会社
http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027320.html

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