ニュースレター

2003年07月01日

 

日本の再生可能エネルギーの現状(太陽熱、太陽光、風力)

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JFS ニュースレター No.10 (2003年6月号)

先月号に書いたように、日本政府は、現在は一次エネルギー総供給量に占める割合は1%台に過ぎない「新エネルギー」を「長期的には日本のエネルギーの一翼を担うことをめざす」と位置づけ、新技術の開発や新市場の創出を通じて、経済の活性化や雇用創出にもつながると期待する、としています。

この「新エネルギー」とは、日本独自の定義で、太陽エネルギーや風力などの自然エネルギー、廃棄物発電などのリサイクル型エネルギー、燃料電池や天然ガスコージェネレーションなどの従来型エネルギーの新しい利用形態をさします。

新エネルギーは、「技術的に実用化段階に達しつつあるが、経済性の面から普及が十分でないもので、石油に代わるエネルギーの導入を図るために特に必要なもの」と政策的に定義されています。そのため、実用化段階に達した水力発電などや研究開発段階にある波力発電などは、自然エネルギーであっても新エネルギーには指定されていません。

日本政府は1994年に「新エネルギー導入大綱」を策定しました。この大綱は2001年に見直しが行われ、新エネルギーの導入促進のための具体的方策と、2010年までの導入目標値が示されています。

        新エネルギー導入目標
         2000年度 2010年度
太陽光発電 40万kW 482万kW
太陽熱利用 98万kl 439万kl
風力発電 2万kW 300万kW
バイオマス発電 8万kW 33万kW
燃料電池 2万kW 220万kW
廃棄物発電 200万kW 417万kW
クリーンエネルギー自動車 4万台 348万台
未利用エネルギー活用型熱供給 27万kl 72万kl
コージェネレーション 463万kW 1002万kW


以下は、足利工業大学の牛山泉教授がまとめられた日本の再生可能エネルギーの現状です。

日本政府は、1973年の第一次オイルショックの翌年1974年に、いわゆる"サンシャイン計画"を策定し、2000年までの長期間にわたる、クリーンなエネルギー供給のための総合的、組織的な研究開発を開始しました。

(1)太陽熱利用

当時の通産省(現在の経産省)はサンシャイン計画の初めに、太陽光を集光して蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動して発電を行う太陽熱発電を取り上げ、1981年には香川県仁尾町に、タワー集光方式と曲面集光方式の1000kWパイロットプラントを完成しました。

このプラントは、世界で初めて設計通りの定格出力を発生し、成功裡に3年間の連続運転を終了。技術的には実験は成功したのですが、結論は、太陽熱発電は日本では経済的に成立困難というものでした。

このような大がかりな発電プラントではなく、日本では、戸建て住宅の屋根に載せる簡単な太陽熱温水器が大変普及しています。明確な統計はありませんが、500万台程度は使われているといわれ、世界一普及しています。

また、ソーラーシステム(太陽熱利用の暖冷房・給湯システム)も定着しつつあり、70万台ほどが使われています。太陽熱は本来が分散型エネルギー源ですから、大規模なものよりも、このような小規模で身近な使い方に適しているといえましょう。

これらの"アクティブ"な太陽熱の利用法に対して、"パッシブ"な利用法もあります。たとえば、住宅の壁を2重壁にして、壁の間に空気を循環させられるようにし、南の面で暖められた空気を北側の部屋に吹き出して暖房するような方法なども普及しつつあります。


(2)太陽光発電

サンシャイン計画の発足当初から、高効率、低コスト化を目指して、順調に研究開発が進んだのは太陽光発電です。プロジェクト発足当時、最大出力あたり数百万円/kWもしていた太陽電池本体(モジュール)が、最近では60万円/kWを切るところまで来ており、年産1万kW程度の大量生産工場ならば50万円/kW程度まで下げられるようになっています。

コストに対して決定的な影響を与えるのは、モジュールのエネルギー変換効率(発電効率)ですが、単結晶シリコンが最も高く、研究室レベルで約21%、製品で14-16%、多結晶シリコンが研究室レベルで約16%、アモルファス(非晶質)シリコンで約11%程度が現在のレベルです。

さらに、直流を交流に交換するインバータ、電力系統と連系するための保護装置、屋根等に設置する場合の架台などの周辺機器を含めて、120万円/kW程の想定とすると、360万円を個人で負担するのは、なかなか容易ではありません。普及のためには、周辺機器の一層のコスト低減と、助成措置が必要でしょう。

これに関して、通産省(現経産省)は1994年度から設備費の1/2程度を補助する制度を導入しています。ちなみに、一般需要家のモニター数は平成6年度557件、平成7年度上期600件、下期423件で、システムの平均規模は3.5から3.9kWでした。

システムコストも低減してきました。平成6年度の600万円/3kWから平成8年度には400万円弱/3kWになり、平成12年度にはおよそ200万円/3kWに。設備費の補助金も1/3に減額されています(なお、ドイツでは太陽光発電の普及のために政府が70%の補助金を交付しています)。

1992年1月から、日本の電力会社も太陽光や風力など自然エネルギーをベースとした発電システムからの余剰電力を、一般電気料金なみの値段で購入することになりました。買い取り義務や買い取り価格の設定はないものの、これは画期的なことで、これにより普及に大きく弾みがつきました。

日本における太陽光発電の可能性について、大阪大学の浜川圭弘名誉教授によれば、日本の個人住宅2500万戸の屋根の80%に3kW、集合住宅45万棟の屋根の50%に20kWの太陽電池パネルを設置すると、年間発電量は3077億kWh。これは日本の総発電量の40%にも相当するとの推算です。

既存の建物の一部を利用するだけで、太陽光発電によって、日本の総発電量の40%程度にも相当する膨大なエネルギーが得られることがわかります。


(3)風力発電

地球温暖化が顕著になった1990年代以降、世界の風力発電設備容量は急激に増加しており、過去5年間の平均年増加率はほぼ30%となっています。

わが国でも、風力発電の導入が急速に進んでいます。これは政府の普及促進策や新エネルギー法の制定による効果が大きいのですが、開発規模は約400MW(2003年1月)で、世界の1.2%の寄与率でしかありません。

これまで、日本には台風はあるが風力利用に適した風は吹いていないといわれてきました。しかし、旧通産省のニューサンシャイン計画の一環として、NEDOでは8年間にわたって風況観測を実施し、全国風況マップを作りました。これによって、日本にも相当量の風力資源があることが明らかになったのです。

風力発電が経済性を持ち得る年間平均風速が毎秒6メートル以上の地域は、日本全土の7分の1に相当します。風車の建設を阻害するさまざまな要因を考慮して、現在実用化されている直径40メートル級の風車を適当な配列で設置すると、合計2500万kWの風力利用可能量であると推定されます。現在の年間発総電量の20%が供給できる計算です。

さらに、種々の条件を入れて電力需要の三通りのシナリオ(楽観的、中間、厳格の3種類)を作成して計算してみると、中間のシナリオでも687万kWの風車を設置し、電力需要の3.5%を風力で賄うことができると評価が出ています。

また、日本は世界有数の海岸線の長さを有する海洋国ですが、これまで、日本におけるオフショア風力発電についての可能性調査は報告されていません。最近の著者らの研究によれば、最も厳しい条件のケースでも陸上の14倍以上の風力利用の可能性があることが明らかになっています。

風力発電は、既に実用段階に達し、経済性を持ちうるものとなっています。一般的に、コストを低減させる要因としては、量産効果とスケールメリットが挙げられます。風力発電システムにおいて、1990年に入って風車の建設コストが大きく低減したのも、量産効果とスケールメリットが効果を発揮したからです。

現在のところ1000kW以上の風車の場合、スケールメリットはあるものの、量産が行われていないため、建設コストは下がりません。しかし、数年以内にオフシェア風力などでメガワット級風車の量産が行われるようになると、1000kW以上の大型風車ではスケールメリットと量産効果の相乗効果でさらにコストが低減するだろうと見込まれます。

また、風車の出力は風速の3乗に比例するので、設置場所(サイト)の風速が発電コストに大きく影響することになります。少しでも好風況のサイトを選定し、建設コストの低い風車を導入することによって、安価な発電コストが得られます。

中小水力、波力、海水温度差発電、バイオマス、地熱については、次号で取り上げます。以下に、JFSインフォメーション・センターに掲載されている関連記事の見出しを挙げておきます。

洋上風力発電の実用化へ
http://www.japanfs.org/db/3-j
港湾で風力発電を!
http://www.japanfs.org/db/281-j
東京都港湾部初の本格的風力発電1基が完成
http://www.japanfs.org/db/205-j
日本のデンマーク、風力発電のメッカ苫前
http://www.japanfs.org/db/73-j
青森県で、市民による市民のための風力発電所始動
http://www.japanfs.org/db/263-j
シャープ、モジュール変換効率世界No.1の太陽電池モジュールを発売
http://www.japanfs.org/db/295-j
三洋電機株式会社の大規模発電システム「ソーラーアーク」 
http://www.japanfs.org/db/24-j
ホンダエンジニアリング、次世代型薄膜太陽電池を開発 
http://www.japanfs.org/db/61-j
粘土瓦で太陽光発電
http://www.japanfs.org/db/107-j
NEDO、新型太陽電池の開発スケジュールとコストダウン目標
http://www.japanfs.org/db/31-j
横浜市、100基のソーラー・省エネ照明灯設置を決定
http://www.japanfs.org/db/220-j
北海道に、世界最大の太陽光発電住宅団地
http://www.japanfs.org/db/230-j

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