ニュースレター

2017年09月29日

 

パリ協定履行に向けエネルギー政策を議論 ~ エネルギー情勢懇談会

Keywords:  ニュースレター  エネルギー政策  再生可能エネルギー  原子力  地球温暖化  市民社会・地域 

 

JFS ニュースレター No.181 (2017年9月号)

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イメージ画像:Photo by はむぱん.

資源エネルギー庁は2017年8月9日、エネルギー基本計画について「総合エネルギー調査会基本政策分科会(以下、基本政策分科会)」を開催し、議論を開始しました。また、2050年視点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会(以下、情勢懇)」が新たに設置され、私(枝廣淳子)は委員として参加することになりました。

今月号のニュースレターでは、パリ協定の履行に向けてエネルギー政策を議論する場である情勢懇に参加するにあたっての私の視点について、会議での発言内容を基にお伝えします。

基本政策分科会/情勢懇の位置づけ

日本のエネルギー政策基本法は、エネルギー基本計画を策定し、3年ごとに検討することを定めています。その検討を行うのが、18名の委員で構成されている基本政策分科会です。現在のエネルギー基本計画は2014年の策定から3年が経過したため、議論が開始されました。

委員名簿および配布資料
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/021/
議事録および当日の動画
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/

このように基本政策分科会は、エネルギー基本計画の実現を重視し、課題を抽出しながら議論をしていく位置づけです。それに対して、もう少し遠い将来に向けての勉強と議論を始めよう、というのが、私の参加する情勢懇です。

資源エネルギー庁ウェブサイトより

我が国は、パリ協定を踏まえ「地球温暖化対策計画」において、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしています。


他方、この野心的な取組は従来の取組の延長では実現が困難であり、技術の革新や国際貢献での削減などが必要となります。このため、幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行って頂くため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置し、検討を開始します。
http://www.meti.go.jp/press/2017/08/20170801002/20170801002.html

基本政策分科会は、「3年に一度検討する」という法律に基づく正式な手続きとしての検討会であるのに対し、情勢懇は、手続きとは関係なく、大臣が私的に設置する懇談会です。パリ協定に基づき、2050年に向けての産業・技術革新、海外の情勢などを勉強する場であり、いろいろなゲストスピーカーから話を聞いて学び、議論していきます。

情勢懇設置の根底にあるのは、「現在のエネルギー政策や、従来の議論の延長上では、パリ協定はとても到達できない」という問題意識だと考えています。パリ協定に向けて、政府としての方針をしっかりと固めていくことが大きな目的の一つでしょう。

原子力政策についてもあらゆる選択肢の一つとして議論の対象となりますが、あくまでも「2050年の温室効果ガス80%削減」という極めて高い目標に向けてのエネルギー政策を、様々な観点から考えていくことになると理解しています。

海外の地政学的動向や技術革新など、さまざまな不確実な要因があることを認めながらも、時間軸が長い分、様々な可能性を考えていくことができるのではないか、日本の今後のエネルギーの大きな方向性が議論できれば、とワクワクしています。

エネルギー選択/削減目標のこれまでの流れ

このような委員会や懇談会では、事務局が議論のたたき台として、データや論点の整理をしたものを提供します。今回の情勢懇に関しても、参考資料として、「エネルギー選択の大きな流れ」がアップされています。
http://www.meti.go.jp/press/2017/08/20170801002/20170801002-2.pdf

「主な情勢変化、今後その見極めが重要」として挙げられているのが、次の8つの観点です。

  • 油価と再エネ価格の下落
  • 蓄電池開発の本格化と現実
  • 脱原発を宣言した国がある一方、多くの国が原子力を活用している状況
  • 自由化と再エネ拡大、悪化する投資環境
  • パリ協定、米国離脱もトレンド変わらず
  • 拡大する世界のエネルギー・電力需要
  • 新興企業の台頭、金融の存在感
  • 高まる地政学リスク、求められる戦略

そのうえで、「パリ協定で2050年の温室効果ガス削減について、先進国は極めて野心的な高い目標を共有」とし、米国、カナダ、ドイツ、フランスと並んで、日本についても「2050年に2013年比80%削減」という目標が掲載されています。

日本の温暖化の長期目標をめぐっては、2008年、洞爺湖サミットを前に、福田総理のもと、首相官邸に「地球温暖化問題に関する懇談会」が設置され、私も委員の一人として、議論を重ねました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/index.html

企業の競争力への悪影響などを心配して、できるだけ低めの目標を設定しようという経済界代表の委員と、「温暖化を止めるために、あるべき削減目標をめざすべき」とする私たち市民派の委員とのバトルを思い出します。

最終的には、「日本は2050年までの長期目標として、現状から60~80%の削減を目指す」とする提言がまとまりました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai05/05siryou1.pdf

その後、「2050年に80%減」という長期計画を閣議決定したのですが、正式な国の目標として国連に提出することができていません。経産省・環境省の意見の違いなど、政府内の調整ができていないためだそうです。

この点については、今回の情勢懇での大きな論点の1つになることと思います。経産省と環境省のそれぞれの考え方や、その土台としているデータや見通しについて、よく教えてもらい、広く伝え、考えていきたいと思っています。

第1回「エネルギー情勢懇談会」

情勢懇の第1回が、2017年8月30日に開催されました。

当日の資料
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/001/
動画
https://www.youtube.com/watch?v=ikI84joAE5E
https://www.youtube.com/watch?v=PD2MiLkd1EI

私が発言した内容をお伝えします。提出した資料にそってコメントしましたので、そちらも併せてご覧ください。http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/001/pdf/001_007.pdf


今日は自己紹介と、この会合に臨むに当たっての私なりの私見を皆さんにお伝えしたくて、資料を用意させていただいております。ごく簡単にご紹介して、あと幾つか、今ご説明を聞いてのポイントをお話ししたいと思います。

私がこの会合でお役に立てるために、3つの視点を大事に参加したいと思っています。

1つは、言うまでもなく「環境」の視点です。この会合そのものがパリ協定を受けてということなので、排出量に関しては、おそらく多くの議論が行われると思いますが、エネルギーのもたらす環境問題は排出量だけではないので、そういった観点も忘れずに参加したいと思っています。

2つ目は、今のご説明での論点整理で抜けているのではないかと思っている「地域」の視点です。

これまでの日本のエネルギー政策の延長線上で考えると、どうしても「輸入メンタリティ」になると思います。どうやってエネルギーを輸入するか、と。これまで日本のエネルギーは輸入がメインでしたので、どのように地政学的なリスクを考えるか、など、今回の事前分析も、そういった情報が多かったかと思います。

その一方で、日本の中で創出できるエネルギーが、再エネです。特に、大きな工業用・産業用はまだ難しいとしても、地域ぐるみで、もしくは個人の家庭で、エネルギー自立ということは、もう十分に可能になっております。

昨日泊まっていた岡山の友人宅はすべてオフグリッドで、ソーラーパネルと自宅の蓄電池で、まったく不自由なく生活をしています。日本でそういった家庭が、100軒ぐらいあると聞いています。

「地政学に翻弄されない地域のエネルギーづくりを、いかに技術的・制度的に手伝うか」――これはとても大事な観点だと思いますので、今の論点整理に入っていませんが、ぜひ考えていきたいと思っています。

3番目が「市民」の観点です。基本問題委員会の時には、今回もそうですが、多様性の点で言うとかなり男性に偏っておりました。女性の視点、考えも皆さんに知っていただきたいということで、女性100人ぐらいに集まってもらって自分たちのエネルギーを議論し、その報告を委員会に提出させていただきました。

同様に、年代的にも、委員会はかなり上のほうに偏っておりました。2030年、2050年のエネルギーを考えるときに、その社会で主流になる人たちの考えをどうやって反映していくか。この時にも、若者の会議を開いて、その意見を委員会にお伝えしました。

今回も、ウェブを通じてここでの議論を情報発信したいと思っていますし、できたらリアルの場、オンラインでいろんな方々の意見や論点などを議論する場を、個人的にもつくっていきたいと思っています。またご報告させてください。

最後に、エネルギーを考える視点についてです。もちろん「3E+S(EnergySecurity, Economic Efficiency, Environment, and Safety)」ということですが、これまでの議論は、「どれがその中で一番大事か」という議論だった気がします。

もちろんどれも重要ですが、短期的なコスト・経済効率と、中長期的なレジリエンスをどうやってバランスさせるか、その議論をどうするかを、私は考えていきたいと思っています。

2050年の未来を考えたときに、どうしてもそれぞれの立場で、「ありたい未来」とか「あるべき未来」の話に終始しがちです。しかしここの議論では、できるだけ「あり得る未来」という議論をできればと思っていますし、そのための、たとえばシナリオプランニングや、さまざまな環境とエネルギーのバランスを考える、システムダイナミクスに基づくシミュレーションなどの手法がすでにありますので、そういったものもできるだけ活用していければと思っています。

あと、今のご説明について何点か思っていることをお伝えしたいと思います。

先ほど、坂根さんが「2050年でも短い」というお話をされました。2030年までを考えると「エネルギーが足りないから」「コストの点で」ということで原発が推進されてきたわけですが、2050年の先も考えていくときに、たとえば十分に再エネでコスト的にもさまざまな問題も解決できて、再エネでほとんどできるようになったとしても、原子力は必要なのかどうか? 多分、そういった議論をしないといけないと思います。


ここで私の伝えたかったポイントは、以下の3つです。

  1. 長期的なエネルギー政策を考えるにあたっては、従前の「輸入メンタリティ」から脱する必要がある

  2. とくに地域の視点が大事(レジリエンスの観点からも、エネルギー自立地域をどれだけたくさん作り出せるか)

  3. 「原発は、エネルギー政策なのか、科学技術政策なのか」

これまでは、エネルギーが足りないから、コストが安いから、と原発は「エネルギー政策」として扱われてきました。しかし、過去の基本問題委員会で繰り返し感じたのは、同時に、「廃炉や原子力の科学技術を絶やさないために必要」という声も大変強い、ということでした。

もし、原発がなくてもコストに問題がない形でエネルギーが足りるようになったら(2050年を考えれば、世界的な動向からも再エネは十分にその責を果たすでしょう)、原発は不要と結論づけるのか、それとも、「それでも原子力の科学技術のために必要」なのか? もし後者なら、数十基もなくてもよいですよね?

第1回の情勢懇では、私の他にも各委員から意見表明がありましたが、議論は次回以降となります。この懇談会が本当によい議論につながり、よい結果につながるよう、力を尽くしていきたいと思います。

〈関連情報〉エダヒロの「エネルギー情勢懇談会」レポ!
https://www.es-inc.jp/energysituation/

枝廣淳子

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