生物多様性・食糧・水

2015年03月22日

 

水を「使う」ということ -環境省、ウォーターフットプリント算出事例集を公表

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写真:盛岡手づくり村の染め物体験
イメージ画像: Photo by Akihito Fujii All Rights Reserved.

普段、私たちが自分自身の目で見ることのできる「水」は様々な水の動きの中の一部でしかありません。「見えない水を見る」ための指標が、ウォーターフットプリントです。ウォーターフットプリントを効果的に活用するための事例集が、環境省から公表されました。

現在すでに 70 億人を超えた世界人口は、 2050 年には 90 億人を突破すると予想されています。人口増加にともなって増大する農業生産のために必要な灌漑用水や、都市に集中する人々の生活用水、そして新興諸国の工業用水を満たせるのかが国際的な問題となっています。

水利用の問題は、たとえ身近なところで起きていなくても、決して他人事ではありません。2011 年に発生したタイにおける大洪水の事例では、本来ローカルである水災害が、サプライチェーン等を通じて世界的に影響を及ぼしました。

ウォーターフットプリントについては、世界の水問題や水資源の保全に向けた普及啓発のため、企業のサプライチェーンの改善のため等に活用が注目されています。ウォーターフットプリントとは、原材料の栽培・生産、製造・加工、輸送・流通、消費、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で、直接的・間接的に消費・汚染された水の量を定量的に算定する手法です。

日本では、ウォーターフットプリントの算定事例が少なく、参照できる事例が限られていましたが、2013年1月に「ウォーターフットプリント算出に関する研究会」が、環境省によって立ち上げられました。

研究会は2014年8月8日、「ウォーターフットプリント算出事例集」を公表しました。これは企業協力のもと、国内外の算出手法を整理・確認するとともに、具体的な製品のウォーターフットプリントの算出・分析を行うことで取りまとめたものです。

事例集では、例えば衣類製品(ジャケット)を取り上げ、具体的なウォーターフットプリントの算定内容や結果を記載しています。原料製造から廃棄処理までのライフサイクルフローを整理することによって、各段階における水消費量を求めることができます。他にも、事務服、冷蔵庫、シャンプー、調理済み食品等、多種多様な事例が取りあげられています。

2014年7月1日には、健全な水循環を維持し、または回復させることを目的として、水循環基本法が施行されました。水利用について、定量的に分かりやすい形で算出することができるウォーターフットプリントが広く利用され、健全な水循環につながることを期待します。

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