ニュースレター

2014年04月04日

 

誰もが暮らしたいまち「環境未来都市」構想

Keywords:  ニュースレター  政策・制度 

 

JFS ニュースレター No.139 (2014年3月号)

Future City Logo

世界の各地で、新しい都市づくり・まちづくりが進められていますが、日本でも政府が「環境未来都市構想」を展開中です。今回は、この環境未来都市構想について知っていただきたく、内閣府の担当者からの情報をお届けします。

---------------------------------------

2011年に開始した環境未来都市構想が、今年で3年めの事業年度を迎えました。本構想は内閣府が主導で進めているもので、現在11都市が環境未来都市としての認定を受けています。今回は改めて環境未来都市の考え方と、その進捗についてご報告いたします。

1.「環境未来都市」構想の背景と位置づけ

世界の都市人口は急速に増加をみせ、現在世界人口の半数を占めていますが、国連によると、その割合は2050年には約7割、約64億人に達すると予測されています。こうした都市化の傾向は、アジアやアフリカといった開発途上地域で顕著に見られ、急激な都市化に伴い、様々な環境問題や都市問題を生じさせています。21世紀は都市の時代といわれますが、都市環境に対する負荷を増加させずに、いかに生活の豊かさを実現するかという問題は、都市を基軸とした人類共通の課題です。

他方、課題先進国といわれる日本では、少子化とともに、急速に高齢化が進み、2050年には、65歳以上の高齢者が4割に達すると見込まれ、社会の活力の維持や高齢者が健康で安心して充実した生活を送ることのできる都市・地域づくりが喫緊の課題となっています。高齢化の問題は、アジア諸国を始め他の多くの国々が近未来に直面すると予測され、日本における取組みは、人類共通の課題解決に示唆を与えるものといえます。

このように、都市をエンジンとして、環境、高齢化対応、経済・社会の活性化という人類共通の普遍的課題について、問題認識の共有、課題設定の普遍化、解決の枠組みを考えることは、極めて重要です。

こうした中、「環境未来都市」構想は、2010年6月に閣議決定された新成長戦略の21の国家プロジェクトの1つとして位置づけられ、又、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」においても、「国家戦略特区の実現」の中で「従来の特区制度やこれと相互に連携している環境未来都市などの施策については、今後とも着実に進めていく」と位置づけられました。本構想は、環境・超高齢化対応等に向けた人間中心の新たな価値を創造する都市を実現することを目指しており、まさに人類共通の課題に挑戦し世界に先駆けて解決モデルを提示するものといえます。

なお、内閣府では低炭素都市の実現等を目的とする「環境モデル都市」にも取り組んでいますが、2013年3月に図1のように整理した上で今後、(1)環境モデル都市を「環境未来都市」構想に統合する、(2)環境未来都市は環境モデル都市の中から厳選する、こととしました。

図1 「環境未来都市」構想の全体像
図1 「環境未来都市」構想の全体像
(図をクリックすると拡大表示します)

2.環境未来都市について

(1) 基本コンセプト

「環境未来都市」構想の基本コンセプトは、「環境・超高齢化対応等に向けた、人間中心の新たな価値を創造する都市」を実現することです。すなわち、我が国及び世界が直面する地球温暖化、資源・エネルギー制約、超高齢化対応等の諸課題を、持続可能な社会経済システムを構築しつつ、また社会的連帯感の回復を図りながら解決し、新たな価値を創造し続ける「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力があるまち」を実現し、人々の生活の質を高めることです。

持続可能な経済社会を実現するためには、環境、社会、経済という3つの側面が不可欠です。本構想における「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」は、3つの側面が一定以上の水準で満足されていることを前提として、よりイノベイティブにこれら3つの側面から価値が創造される都市と定義されます。

図2 3つの価値
図2 3つの価値
(図をクリックすると拡大表示します)

(2) 環境未来都市に選定された都市・地域

個別の環境未来都市は、上記の基本コンセプトの実現に資するよう環境価値、社会価値、経済的価値という3つの価値のトータルの創造量の最大化を目指して戦略的な将来ビジョンを策定します。将来ビジョンの策定は、目指すべき将来の姿からのバックキャスティングの発想とともに、実現可能性を高めるべく、現状からのフォアキャスティングの発想も取り入れて描くことが必要です。また、それぞれの都市特有の自然的社会的条件等を踏まえて、多様性や独自性を最大限発揮できるよう策定することが重要です。

各都市においては、将来ビジョンの実現に向け、環境及び超高齢化対応に関する分野の取組みを必須とし、これに加えて、都市の独自性や比較優位をさらに高めることが出来る分野における取組みを、国内外の都市との強力な連携の下で推進します。取組みの実施にあたっては、国内外の他の都市の成功事例を吸収するなど、世界の英知を結集しつつ、それぞれの分野の取組みを効果的に統合して、単なる実証実験にとどまらない、継続的に価値を創出する社会経済システムイノベーションを実現します。成功事例を継続的に創出することにより、補助金に依存した体質から脱却し、自律的発展の仕組みを実現することにより、国内外に適用可能なモデルを確立します。

図3 環境未来都市に選定された都市・地域図3 環境未来都市に選定された都市・地域
(図をクリックすると拡大表示します)

(3) 推進方策

構想を成功に導くには、着実なプロジェクトマネジメントの実施、パワフルでスピード感のある執行体制の構築、強力な都市間連携の下での推進が重要です。

本構想におけるプロジェクトマネジメントは、(1)構想全体(効果的な推進の視点)、(2)各都市(取組み全体の経営の視点)、(3)各取組み(進捗管理の視点)の3つのレベルで必要になります。各レベルにおいてPDCAサイクルを回し、着実にプロジェクトマネジメントを行うことにより、成功の可能性を高めることが出来ます。

成功事例の創出や国内外への普及展開には、パワフルでスピード感のある執行体制が不可欠です。国レベルでは、各都市に対して、助言を行うとともに、推進組織を設置し、資金提供、規制・制度改革の調整等を行います。各都市レベルでは、産民学・自治体によるコンソーシアムを組織します。

都市間連携を強化することにより、成功事例の高度化と普及展開の迅速化が期待されます。国では、国内外への成功事例の収集・整理・分析を行い、その情報を整理・発信するとともに、知の交流のための国際フォーラム等の場の整理を行うなど、国際的な知のプラットフォームを構築します。各都市では、上記のプラットフォームも活用しながら国内外の他の都市との成功事例の相互交流、市民レベルを含めた継続的な連携・協力関係の深化を図ります。

図4 推進体制
図4 推進体制
(図をクリックすると拡大表示します)

3.環境モデル都市について

「環境未来都市」構想に統合された環境モデル都市は、今後我が国が目指すべき低炭素社会の姿を具体的にわかりやすく示すことを目的にしています。低炭素社会の実現に向け高い目標を掲げて先駆的な取組みにチャレンジする都市として、2008年度に13都市を選定しました。

各都市は目標達成のための具体的な行動計画「アクションプラン」を策定し、環境モデル都市ワーキンググループの助言等を受けながら取組みを推進しています。選定されたモデル都市は分野横断的かつ主体間の垣根を越えた取組み(統合アプローチ)や、低炭素社会における都市の活力の創出を目指して、市民・民間団体等を連携し、全国の自治体のモデルとなる取組みを日々展開しています。

東日本大震災を契機にエネルギー問題がクローズアップされる中、環境モデル都市が進める低炭素都市づくりの取組みを全国に一層普及させることが求められていることから、2012年度に7都市、本年度(2013年)3都市が新たに環境モデル都市として選定されました。今後も環境モデル都市を中心として、低炭素社会の実現に向けた取組みの一層の広がりが期待されます。

図5 環境モデル都市に選定された都市図5 環境モデル都市に選定された都市
(図をクリックすると拡大表示します)

4.「環境未来都市」構想の今後の展開について

現在、自治体間で切磋琢磨し、取組みの裾野拡大を図ることを目的として、環境未来都市や環境モデル都市を中心に『「環境未来都市」構想推進協議会』を設け、議論を行っています。

そのような中、2014年3月7日、北海道ニセコ町、奈良県生駒市、熊本県小国町が新たにモデル都市に選定される等、対象都市も拡大しています。

今後、「環境未来都市」構想は、21世紀の人類共通の課題である環境や超高齢化対応などに関して、技術・社会経済システム・サービス・ビジネスモデル・まちづくりにおいて、世界に類のない成功事例を創出するとともに、それを国内外に普及展開することで、需要拡大、雇用創出等を実現し、究極的には、我が国全体の持続可能な経済社会の実現を目指していきます。今後の展開にもぜひご期待下さい。

<JFS関連記事>
公共交通で暮らせるコンパクトな街に(富山市)
創造的な未来へ向かう東松島

(枝廣淳子)

English  

 


 

このページの先頭へ