ニュースレター

2010年10月19日

 

ドキュメントサービスを通して社会システムの変革に貢献する ~ 富士ゼロックス株式会社

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.94 (2010年6月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第92回
http://www.fujixerox.co.jp/


富士ゼロックスは、1962年、「より良いコミュニケーションの促進を通じて、世界の人々の相互理解を増進する」という、米国ゼロックス社の創業者であるジョー・ウイルソン氏の理念を継承し、富士フイルム(現富士フイルムホールディングス)と、英国ランク・ゼロックス(現ゼロックスリミテッド)との合弁会社として誕生しました。以来、複写機やレーザープリンターの製造販売から、文書管理のシステムソリューションの提供などを通して、顧客のコミュニケーションの向上に寄与してきました。

社会の持続可能な発展に、事業やさまざまな活動を通じて貢献する富士ゼロックスは、「CSRは経営そのものである」という考え方を徹底しています。2009年度からは、今までにもまして経営戦略の中にCSR視点を盛り込むために社内のCSR会議のあり方を再構築し、サステナビリティへ向けたさまざまな活動を加速させています。

富士ゼロックスの取り組みは、「サステナビリティレポート」を通して、ステークホルダーにわかりやすく伝えられ、理解と共感を得て、事業運営のさらなる推進力になるという好循環を生みだしています。今回は、CSR部企画グループ長の野村浩一さんに、富士ゼロックスのサステナビリティへの主な取り組み、その思いや展望を伺いました。
http://www.fujixerox.co.jp/company/public/sr2009/


オープンマインドなサステナビリティレポート

今日、日本企業各社は、CSRレポートや環境報告書の製作に熱心に取り組んでいます。そうした中、富士ゼロックスの「サステナビリティレポート2009」が、東洋経済新報社による「第13回環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞」において、サステナビリティ報告書賞「最優秀賞」を受賞しました。

課題に対する数値目標を設定した意欲的な姿勢や、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)がしっかりうかがえる報告書であること。また、海外も含むグループ全体の取り組みが詳細に示されている点が高く評価されての受賞です。

レポートの制作責任者の野村さんは、海外の企業の報告書を研究する中で、ステークホルダーとのコミュニケーションの大切さを実感。ステークホルダーの知りたい要求を抽出し、富士ゼロックスの思いや狙いを、ポイントを絞って伝えることを心掛けたと言います。

中でも、ステークホルダーごとに開示項目を決めて4ページにまとめた「CSR推進状況一覧」は、CSR戦略立案のために関連会社60社に毎年実施している約300項目にも及ぶCSRアンケートをベースに作成されており、最も注力した部分だといいます。
http://www.fujixerox.co.jp/company/public/sr2009/
indecator.html

「実績と目標をオープンにしています。たとえば、『役員および管理職に占める女性の割合』や社会貢献の各項目に現状目標値はありません。何を目標とすべきか、まだ議論の途中だからです。このようにPCDAサイクルが完成していない項目についてもあえて公開しています」(野村さん)

ほかにも、海外拠点の活動をわかりやすく紹介したり、元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏(国際協力機構(JICA)の理事長)と同社トップとの対談など、日本だけでなく、グローバルで読み応えのあるレポートを意識して制作されています。

こうしたオープンで言行一致の姿勢は社内外で支持され、「CSRは経営そのものである」という経営姿勢の実証となるサステナビリティレポートは、顧客との信頼関係を築くコミュニケーションツールとして現場で活かされています。


サステナビリティを支える確かな技術力

富士ゼロックスの強み、それは11年連続で「省エネ大賞(主催:経済産業省)」を受賞していることに象徴される技術力です。富士ゼロックスでは、現在市場で稼働しているコピー機すべてに省エネ機能を搭載することを、1997年の環境技術戦略で決定し、「早く、美しく、便利に、安く」などのビジネス面の機能性アップと、「省エネ、省資源、省スペース」などの環境性能のアップの両立にチャレンジしてきました。当時の技術者達は、二律背反するこの方針に対して、果敢に挑戦し続けました。そしてこの挑戦が、次から次へと新しい技術を生み出すことにつながっています。

2010年5月、技術力の研究・開発の新しい拠点「富士ゼロックスR&Dスクエア」が、横浜のみなとみらい21地区に完成しました。分散していた研究開発部門が都市に集約されることで、顧客との対話の機会や大学など研究機関との交流が増え、他部門との連携も強化されています。

今後、これまで複合機やプリンターなどの利用のなかった新興国での需要の増大が予測されます。そうなれば、エネルギーや資源の利用が、必然的に増えることになります。「もちろん、根本的に必要なのは社会システムの変革です。その中でも技術ができることもかなりあると思っています。そして、そこに貢献するのが、技術立国と言われる日本の役割ではないでしょうか。技術だけに頼るのはいけませんが、技術革新は、まだまだ多くの可能性を秘めていると思います」(野村さん)

一方、国内では、複写機やプリンターなど機械の省エネ性能を競うステージから、オフィスの出力環境全体を考えたマネージメント、つまり機器の最適配置やプリント業務全体の管理方法の提案への期待が高まっているといい、そうしたニーズに応えるビジネスモデルの研究にも取り組んでいます。


生物多様性保全への取り組み

2010年10月に愛知県で、「生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)」が開催されるにあたり、国内では生物多様性への関心が高まっています。富士ゼロックスでも、生物多様性保全の取り組みを「環境中期計画」の中に組み入れ、本格的な活動をスタートさせました。

本業での取り組みとしては、用紙の調達については、製紙会社と協力し、調達基準を策定し、FSC認証紙を増やす取り組みを行っています。また、大規模事業所の土地利用については、おもな国内の工場4カ所で、重大な問題がないかのチェックを終了し、これらを継続管理するための仕組みづくりに取り組んでいます。また、10月以降に、海外の4拠点において影響調査を行うことになっています。

社会貢献活動としては、「生物多様性に関する1社1テーマ運動」を展開しています。これまでも各地の関連各社ごとで環境保護活動が行われていましたが、これからは生物多様性保全に貢献することを軸として、各社がテーマと指標を定めて活動する方向にシフトするよう推進をしています。これらの活動は地域住民やNGOと連携をとりながら、「いきもの調査」の実施など、さまざまな取り組みが展開中です。

「本業と社会貢献を両輪として、こうした取り組みを推進していきたいと考えています。生物多様性の保全や回復には、気が遠くなるような時間がかかります。この問題に関心がある社員を一人でも多く作り、今も破壊が進む現状に一石を投ずることを第一に考え、取り組んでいきます」(野村さん)


温室効果ガス削減に向けた社会システムの変革に挑戦

富士ゼロックスは、2009年2月、2020年度に向けた温室効果ガス削減目標を策定しました。国内外で全ライフサイクルにおける温室効果ガス削減に取り組み、2005年の年間CO2排出量170万トンを、120万トンに低減することを決めました。

同時に、商品に起因するCO2の削減にとどまらず、通勤や移動を伴わない、新しい働き方の提案からも削減は可能であると考え、2020年度までに、新しい「働き方」を通して社会システムの変革に貢献し、顧客先をはじめ世の中のCO2排出量を年間700万トン削減することに貢献することを決定しました。

「会社にいなければ仕事ができないということは、今後なくなるでしょう。自宅でも旅先でも仕事ができる。そのために必要なのは情報です。私たちは、離れていても今よりもっとスムーズに自然にコミュニケーションできる、そういう情報共有環境の提供を通じて、働く人の効率をあげ、かつ環境負荷の削減にも貢献していきたいと考えています。そして、これらの活動を通じて、新しいワークスタイルの創造に寄与していきます」(野村さん)

経済がグローバル化する中、ますます重要になってくるのは、『コミュニケーション、つまりお互いに理解しあうこと』だと野村さんは言います。富士ゼロックスは、情報のやりとりが紙から電子化へと時代の潮流が変わっても、培ってきたドキュメントに関する技術力を持って、より良いコミュニケーションの促進と、世界の人々の相互理解に貢献し続けるでしょう。

(スタッフライター 青豆礼子)

JFS記事:生まれ変わる複写機-天然資源の枯渇に挑む-富士ゼロックス株式会社
http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027314.html
富士ゼロックス、7年連続で省エネ大賞を受賞
http://www.japanfs.org/ja/pages/024138.html

English  

 


 

このページの先頭へ