ニュースレター

2007年01月01日

 

レジ袋をめぐる動き

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JFS ニュースレター No.52 (2006年12月号)

日本では、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、お店へ買い物に行くと、だいたいレジ袋をくれます。家まで買い物を運んだあとは、ゴミ袋などとして再利用されることもありますが、そのまま捨てられてしまうレジ袋もたくさんあります。レジ袋の原料は石油です。資源やごみの問題意識から、日本では近年レジ袋をめぐるいろいろな動きが出てきています。

そもそも、日本ではどのくらいのレジ袋を使っているのでしょうか? 年間約25万トンと言われています。レジ袋は、大・中・小で7-9gの範囲にあり、平均8g程度で換算すると、日本全国で約313億枚、国民1人あたりでは年間260枚使っていることになります。つまり、1週間で5枚ほど使っている計算です。

国も小売りも市民団体も「レジ袋を減らそう」と考えています。レジ袋を大きく削減するためには有料化が最も効果的であるという声が大きくなってきましたが、2007年の容器包装リサイクル法の改定でも、レジ袋の無料配布禁止は見送りになるなど、法律としてレジ袋の使用を抑制するしくみは、いまの日本にはありません。

しかし、自治体では、ごみの削減をめざすとともに、買い物という毎日の行動に関わるレジ袋を通じて市民の意識啓発をはかろうと、レジ袋削減に取り組むところが増えてきました。その先陣を切っているのが、東京都杉並区です。

杉並区では、2000年4月の地方分権一括法の施行によって、自治体が法定外目的税を導入できるようになったことから、新しい財源の必要性に、環境負荷削減の誘導策を重ねて「レジ袋税」の導入を考えています。導入を検討する報告書では、レジ袋1枚につき5円程度、小売り事業者等から徴収し、施行期間は5年間で、税収はごみ減量やリサイクルに使う、となっています。

同区では、レジ袋税導入の理由を「買い物袋の持参などの環境負荷の少ないライフスタイルへの変革が期待できる」「 ごみとして排出されている年間1,500-1,700トンのレジ袋を減らし、ごみ減量と処理経費の削減をはかる」「石油資源の消費抑制」などとしています。

杉並区のレジ袋が一躍クローズアップされたことで、それまでも各地で少しずつ取り組んでいた自分の買い物袋を持参しようという「マイバッグ運動」に弾みがつき、全国各地でレジ袋削減の取り組みが始まりました。

名古屋市では「脱レジ袋宣言」を出し、レジ袋削減運動を展開しています。

ほかにも豊田市や狭山市をはじめとする自治体では、毎月「マイバッグDAY」「ノーレジ袋デー」などを定めて呼びかけを強化し、多くのレジ袋の削減につながっている例もあります。

ユニークな取り組みとしては、高知県の森づくりとレジ袋削減をリンクさせた活動があります。レジ袋を断わるごとにスタンプを押し、たまったスタンプカードを店舗に置いた募金箱に任意に入れてもらいます。これを各社がお金に換算して社団法人「高知県森と緑の会」が運営する緑の募金に寄付する、というしくみです。

また、自治体の動きが全国規模に広がっているものもあります。2000年に東京都の呼びかけで14都府県の共同キャンペーンとして開始された「環境にやさしい買い物キャンペーン」は、2003年からは、内閣府が全国的な統一キャンペーンとして都道府県のとりまとめをするようになり、現在では47都道府県全てが参加しています。3R(リデュース・リユース・リサイクル)月間の10月に、内閣府、経済産業省、環境省、3R活動推進フォーラムと全国の都道府県が共同で「買い物」における3R行動の実践を呼びかけるものです。

このキャンペーンは、環境問題に密接に関係している日常の買い物に焦点を当て、「マイバッグを持参する」「過剰包装を避ける」「詰め替え商品を選ぶ」などの行動を促進することでごみの減量化につなげるものです。また、流通業者・小売事業者からも、環境に配慮した商品の販売、簡易包装による販売、マイバッグ持参などの呼びかけが行われています。

企業側ではどうでしょうか? まず、レジ袋を製造しているメーカーでは、肉厚を薄くして少しでも資源消費量の少ないレジ袋を製造したり、生分解性レジ袋を開発・製造したりといった努力をしています。

レジ袋をお客様に配っている小売業界で、レジ袋有料化に早くから取り組んだのが生協です。たとえば、コープこうべでは、1995年からはレジ袋が必要な場合は、代金箱に自主的に5円支払ってレジ袋を購入するしくみにしました。無料レンタル袋の貸し出しも行い、レジ袋を持ってきていない人にも配慮しています。現在のコープ組合員のマイバック持参率は70%強とのことです。

生協以外の多くのスーパーは二の足を踏んでいますが、なかにはオーケーストアのように、レジ袋を有料(6円)としているところもあります。自分で何らかの袋を持参しているお客さんが多く、ダンボールは無料で使えるので、自動車や自転車で来る客がそれに入れて持って帰っています(段ボールの処理費用も削減しています)。

日本チェーンストア協会でも、毎月5日を『ノー・レジ袋の日』として、レジ袋の使用削減への協力をアピールしています。
http://www.japanfs.org/db/141-j

また、主要コンビニエンスストア12社は2006年から2010年までレジ袋の削減を段階的に進める5ヶ年計画を策定しています。2010年までにレジ袋使用を35%削減(2000年度比)する計画です。
http://www.japanfs.org/db/1463-j

最後に、地域の取り組みをいくつか紹介しましょう。名古屋市には、名古屋市内共通還元制度「エコクーぴょん」があります。参加店でレジ袋や紙袋を断るなど環境にやさしい行動をすると、市内共通のシールがもらえ、シールを20ポイント分集めると、50円分のお買い物券として参加店で使えます。「レジ袋を断れば、環境にもやさしくちょっとおトクに買い物ができる」がポイントです。

実験的な試みですが、鳥取には、二酸化炭素の排出量を減らす試みに対して、商店街やコンビニなどで使える地域通貨を発行する「炭素銀行」があります。鳥取環境大学に事務局を置く取り組みで、大学の各研究室が催すエコ活動(環境家計簿をつける、市街地清掃をするなど)に参加すると、「地球大好きマイレージ」がもらえ、炭素銀行でチューズ紙幣と交換できるほか、提携するお店でレジ袋を断るとチューズがもらえます。鳥取市内のローソン5店舗と提携が決まっており、今後提携先を広げるとのことです。

レジ袋は毎日使う身近なものであるため、日本では、消費者の意識や行動を環境にやさしいライフスタイルに変えていくためのひとつの「とっかかり」としても注目され、さまざまな取り組みが広がり、活発な議論が行われています。

世界には、日本と同じようにレジ袋のゴミに悩んだり、取り組みをしている国や地域もあります。一方、レジ袋そのものがない国(すべての人が買い物カゴで買い物をする)や法律でレジ袋を禁止している国や自治体もあると聞いたことがあります。

あなたのお国や地元では、レジ袋は使われていますか? レジ袋が問題になっていますか? 法律や有料化などの抑制策はありますか? 減らすための取り組みがあるとしたらどのようなものでしょう? ぜひ世界各地の現状と知恵を教えて下さい。いただいた情報をとりまとめて、また皆さんにお伝えしたいと思っています。


(枝廣淳子、岡田量裕、星野敬子)

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