ニュースレター

2003年01月01日

 

広がり深まるグリーン購入・グリーン調達の動き

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JFS ニュースレター No.4 (2002年12月号)

ここ数年、日本では、さまざまな分野でのグリーン購入・調達がめざましく広がり、深まっています。グリーン購入を進めている主なプレーヤーは3つあります。

ひとつは、自らの環境負荷低減をはかるとともに、納入業者や住民の意識啓発・取り組み促進をめざす行政(国、地方自治体)です。

もうひとつは、企業市民として循環型社会の構築に貢献することを通して、サプライヤーがもたらす潜在的環境リスクを低減し、「環境」という切り口で製造・業務プロセスを見直すことによってコスト削減にもつなげたい企業。

ISO14001認証取得事業者の数は日本が世界で第1位ですが、ISO14001に取り組む企業が、自社内の「紙、ゴミ、電気」の削減の次に、間接影響を考えに入れてグリーン購入をはじめる会社も多いようです。

そして第3のプレーヤーは「買い物は投票だ。購買活動で産業のグリーン化を進めよう」という市民団体や環境NGO、一般市民です。プレーヤーごとに取り組みを紹介しましょう。

2000年4月に、日本政府は、主に逼迫する廃棄物処分場問題への対処として、「循環型社会形成推進基本法」「廃棄物処理法」「資源有効利用促進法」「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」「建設資材リサイクル法」「食品リサイクル法」「グリーン購入法」を定めました。

日本では、1970年に、公害に関する14の法律が一挙に成立し、その後の日本の公害に対する取り組みを大きく進める原動力となりましたが、2000年の環境関連6法の成立は、循環型社会への枠組みを整え、取り組みを強力に促すものとして、重要な役割を担うものです。

年間約4億トン排出される産業廃棄物と約5千万トン出る一般廃棄物をできるだけ減らし、特に最終処分場へ送られる廃棄物量を減らすために各種リサイクル法ができたのですが、その受け皿として(リサイクル製品が市場で購入されないとリサイクルが進まないため)「グリーン購入法」が制定されました。

グリーン購入法の目的は、「環境負荷の少ない持続可能な社会を構築するために、環境負荷の低減に資する物品・役務(環境物品)を推進・普及する」ため、
(1) 国などの公共部門において、このような環境物品の調達を推進すること
(2) 情報提供を進めていくこと
です。

2001年1月には基本方針と101品目の特定調達品目およびその基準が出され、4月から全面施行となりました。国の機関では、グリーン購入法に則って調達方針の作成や調達方針に基づく物品の調達推進、調達実績の取りまとめや公表が義務づけられています。

2002年2月には、特定調達品目を50品目追加し、さらに、公共工事の品目として17品目を追加することが決定されました。
http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/index.html

グリーン購入法においては、地方自治体は「努力義務」という扱いですが、多くの地方自治体が独自にグリーン購入・調達を進めています。たとえば、

東京都 環境に配慮した物品調達ガイド2000

滋賀県 「滋賀県グリーン購入基本方針」を策定して取り組みを進めるほか、1999年に設立された「滋賀グリーン購入ネットワーク」の支援も

産業界でも、環境に配慮した部材・資材を優先して調達するというグリーン調達が、大企業を中心に広がっています。キヤノン、リコー、シャープ、松下電器などでは、グリーン調達ガイドラインを定めて全社的にグリーン調達を進めています。

たとえば、グループ全体の年間調達額2兆2000億円のうち7-8割を占める3600社を対象にグリーン調達を進める松下電器。松下グループ11社の資材部門は、従来の資材選定の3条件(QCD:品質、コスト、納期)に環境(E)を加えることに合意し、「グリーン調達基準書」を基本に、原材料、補助材料、消耗工具、市販部品、外注部品のすべてを対象に、グリーン調達を進めています。

グリーン調達の基準として、「調達先」(ISO14001などの環境マネジメントシステムの有無と質)と、「資材自体」の環境面を2本柱でチェックし、調達先を選定する企業が多いようです。

グリーン調達に取り組んでいる大手企業は、これが競争力強化につながると認識しています。温暖化の深刻化や循環型社会への移行に伴って、二酸化炭素や廃棄物の排出削減、リサイクル促進といった環境対応が企業の競争力の源泉になってきます。

その際に、環境リスクの低い資材や部材を供給でき、継続的に環境負荷とコストを低減できる環境マネジメントシステムを有する企業を取引先として絞り込むことは、その企業の競争力にとっても重要なのです。

ソニーは、グリーン調達で購入先を選別するだけではなく、部品、デバイス、原材料などを納入しているビジネスパートナーと連携し、環境配慮をより徹底させるために、グリーンパートナー基準を設けています。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/procurementinfo/green.html

また、東京ガスは、製品や部材だけではなく、工事や役務の購入ガイドラインを策定してグリーン購入を進めています。
http://www.tokyo-gas.co.jp/env/circulate/category06.html

このように、近年、大口需要家としての企業や自治体のグリーン購入が盛んになってきています。グリーン購入・調達を進める企業や行政、消費者団体などが集まり、1996年2月に結成されたのが「グリーン購入ネットワーク(GPN)」です。

設立当時、会員数は73団体(企業40、行政20、民間団体13)でしたが、2002年6月現在では、会員数は計2,668団体(内訳:企業2,038、行政362、民間団体268)と35倍以上に増えています。

GPNは、日本独自の組織で、日本のグリーン購入・調達に重要な役割を果たしています。企業・行政・消費者の緩やかなネットワークであり、以下の活動を通して、消費者・企業・行政におけるグリーン購入を促進しています。

・グリーン購入の普及啓発
・優れた取組事例の表彰・紹介
http://www.japanfs.org/db/147-j

・購入ガイドラインの策定
・環境に配慮した商品情報をまとめたデータベースづくりとデータブックの発行、・国内外における調査研究活動
・地域ネットワークの立ち上げなど

2001年6月に改訂されたGPNグリーン購入基本原則では、「必要性の考慮」を基本原則1としたところに大きな意義があります。製品やサービスを購入する前にまずその必要性を十分に考え、現在所有している製品の修理、リフォームのほか、共同利用・所有、レンタルなども考えます。

また最近では、環境に配慮されたホテル・旅館を利用する際に考慮すべきポイントをまとめた「ホテル・旅館」利用ガイドラインを制定しました。これは、ホテル・旅館業界を対象とした国内で初めての本格的な環境に関するガイドラインで、GPNとして15番目のガイドラインです。

参考まで、これまでにGPNガイドラインが制定されたのは以下の15分野です。「印刷・情報用紙」「コピー機・プリンタ・ファクシミリ」「トイレットペーパー」 「ティッシュペーパー」「パソコン」「文具・事務用品」「照明」「自動車」「冷蔵庫」「洗濯機」「オフィス家具」「エアコン」「テレビ」「制服・事務服・作業服」「オフセット印刷サービス」「ホテル・旅館」

GPNのグリーン購入基本原則や具体的な活動、ガイドラインの詳細など→
|http://www.gpn.jp/

地方自治体が住民の意識啓発のために、また、住民やNGOが「ひとりひとりの購買力は小さくても集まれば大きい」と自主的な取り組みとして、地域でのグリーンコンシューマーガイドを作成する動きも日本各地に広がっています。

グリーンコンシューマー研究会のサイトには、全国版・地域版あわせて数十のグリーンコンシューマーガイドが掲載されています。高校が作ったものもあります。http://www.green-consumer.org/

GPNが2002年2月末に「環境にやさしい商品はどこで買えるの?」という消費者の声に応える『エコどこナビ』をインターネット上にオープンしました。自分の地域を指定し、それからほしい商品をクリックすると、自分の地域でグリーン商品を扱っているお店を知ることができます。

現在、環境に熱心な自治体や大企業ではグリーン購入・調達に取り組んでいないところはないほどですが、まもなく、ある規模以上の自治体や企業にとっては「グリーン購入・調達は常識」という時代になるでしょう。

世界的に見て、日本のさまざまな環境への取り組みのひとつの特徴は「消費者主導というより、産業界主導」であるということですが、グリーン購入・調達も、消費者より企業・自治体が先行している印象があります。

一般の消費者にどのようにグリーン購入の考えや意義を広め普及していくか、グリーンコンシューマーをどのように増やしていくか。これが、自治体や企業にとっても、次なるチャレンジであるように思います。

また、グリーン購入・調達は、大口消費者である企業が行うことで、業界再編や個別企業の競争力・生き残りをも左右するほど大きな影響力を有しています。今後もいろいろな動きや展開が予想されているグリーン購入・調達、JFSのサイトで今後も最新情報を入手して下さい。

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