ニュースレター

2018年04月15日

 

首都圏の高齢化問題:見かけ以上に増える高齢者数

Keywords:  ニュースレター  定常型社会 

 

JFS ニュースレター No.187 (2018年3月号)

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イメージ画像:Photo by George Alexander Ishida Newman Some Rights Reserved.

若者が学校や仕事のために都会に出ていってしまい、高齢者だけが残された、いわゆる「過疎化」した山村は、地方における「高齢化問題」の象徴的な風景として、多くの日本人が容易に想像できるのではないでしょうか。

しかし最近になって、こうした地方の高齢化問題に加えて、都市部の高齢化問題も深刻だという声をよく聞くようになりました。都市部は若い人たちが地方から移り住む地域なのに、なぜ高齢化問題が生じるのでしょうか? 今月号のニュースレターでは、東京都や首都圏の高齢化問題についてお伝えします。

日本の高齢化

まず日本全体の高齢化について触れておきましょう。日本では現在、急速に高齢化が進行しています。図1からわかるように、日本の65歳以上の高齢者の割合は、1920年から1950年くらいまでは5%程度と、人口のわずかな割合でした。その後、高度経済成長期から高齢化が進み始め、2015年には65歳以上の高齢者の割合は25%と、いまや「4人に1人は高齢者」という状態です。今後もこの傾向は続き、推計では日本の高齢者人口は、2025年には30%、そして2055年には40%近くにまで達することが予測されます。

図1 人口の推移と将来推計

その一方で、生産年齢人口(15~64歳)は大幅に減少していきます。2055年あたりからは、生産年齢人口が全人口の50%、高齢者(65歳以上)が40%、年少人口(0~14歳)は10%くらいで推移する推測です。

「日本が100人の村だったら」式に考えると、100人のうち40人が高齢者、10人が子どもという構成になります。1920年から1945年くらいまでの間は、100人のうち5人が高齢者で、38人が子どもだったことを考えると、非常に大きな変化であることがわかります。

また、高齢化の進行の速度が、欧米諸国と比べると早いのも日本の特徴です。65歳以上の高齢化率が7%を超えてから14%に達するまでの年数を比較すると、フランスでは1864年から1979年まで115年かかっています。スウェーデンは1887年から1972年の85年、ドイツは1932年から1972年までの40年です。それに対して、日本は1970年から1994年の24年間に高齢化率が7%から14%に倍増しています(図2)。日本社会は、この急速に進む高齢化に、迅速に対応しなくてはなりません。

図2 高齢化率が7%から14%に移行するのに要した期間

首都圏の高齢化

しかも高齢化は日本全国、同じように進むわけではありません。地方には地方の、そして都市には都市の高齢化のパターンがあります。

表1は首都圏、沖縄県、および過疎化が最も進んでいると言われている秋田県の高齢化率と増加する高齢者数を示したものです(2025年と2035年は推計です)。表の下に記した秋田県と沖縄県については、秋田県は2015年の段階で最も高齢化率が高い都道府県、沖縄県は最も低い都道府県です。

表1 首都圏の高齢化率と高齢者数の推移

表1の左側に掲載した各都道府県の2015年、2025年、2035年の高齢化率の推計をみると、どの都道府県も、これから高齢化率が上昇していくことがわかります。秋田県の2035年の高齢化率の推計はなんと42.1%。地方の高齢化の深刻さがよく分かる数字です。それに対して、東京都の2035年の推計の高齢化率は29.8%、この数値は2015年の秋田県の高齢化率(33.8%)よりも低く、あまり大きな問題ではないように感じます。

それでは今度は、「率」ではなく、「人数」に注目してみましょう。表1の右側に掲載したのは、「2015年から2025年の間に増える高齢者数」と「2015年から2035年の間に増える高齢者数」です。秋田では高齢者の数は、2015年から2025年までは約1万人増えます。しかし、秋田県では総人口の減少がすすみ、総人口は2035年には、2015年の約75%まで縮小します。そのため高齢者の数は、2035年には、2015年に比べて約2万人も少なくなるのです。

それに対して、東京都は2015年から2025年の間には約30万人、2015年から2035年の間には約75万人も増加します(東京都の総人口は、2035年には2015年の約95%)。

秋田県では、2015年から2025年にかけての約6ポイントの高齢化率の増加によって、9,000人あまりしか高齢者が増加しないのに対して、東京都は同じ時期のたった2.5ポイントの増加で、約30万人も高齢者数が増加します。これは、東京都の人口が大きいため、1ポイント増えたときの増加数が大きいからです。

東京都の高齢者数の増加の激しさは、グラフにすると一層よくわかります。図3は、表1の高齢者数の増加部分をグラフにしたものです。2015年から2035年の間の増加数は、東京都が圧倒的に多いことがわかります。そして、東京23区に隣接する都道府県である神奈川県、埼玉県、千葉県の高齢者の増加数が続いて多いことがわかります。なお、神奈川県の2015年から2035年の間に増える65歳以上の高齢者数は約55万人です。

図3 高齢者の増加数

これだけ高齢者の数が増えると心配なのは、病院や高齢者向け住宅の数が足りなくなることです。東京都にはたくさんの病院があり、地方に比べれば恵まれていると思われているかもしれません。ただし、人口10万人あたりの病院病床数に関しては、病床数のトップは、高知県で人口10万人あたり2,522.4床なのに対して、東京都は948.3床、千葉県は943.3床、埼玉県は853.8床、神奈川県は810.5床と、いずれも全国で最低レベルです(厚生労働省 『平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況』より)。

東京都の場合、人口そのものは、2015年から2035年の間にそれほど減少しません。しかし、高齢者の人口が増えれば、病院に入院する人の数は増えることが予想されます。これから首都圏では病院不足がますます深刻になることが予測されるのです。

また介護の人材や、在宅看護師も不足することも容易に想像がつきます。病気や事故でリハビリが必要になった場合を思い浮かべてください。専門家にかかれば、リハビリを受けて、元の生活に戻ることができる場合も多いでしょう。でも、専門家の数が足りなければ、リハビリを受けることができず、そのまま寝たきりになってしまうかもしれません。すると、病院や在宅看護師がますます必要になってしまいます。

また、高齢者の一人暮らし世帯と、世帯主が65歳以上の世帯もこれから増加していきます。高齢者の一人暮らし世帯と世帯主が65歳以上の世帯は、2015年の約30%から2025年には約35%まで増加することが予測されています。これから高齢者数が増加することで、孤独死や老々介護といった問題も、深刻さを増していく可能性が高いのです。

もちろん、東京都も対策に乗り出しています。2015年に東京都が発表した東京都総合戦略によると、「人生の最期まで安心して暮らせる地域社会の実現に向けた取り組み」を推進するとされています。その中には、ロボット介護機器などを用いて、介護予防や介護者の負担を軽減させることや、介護の質を向上させることなどが記されています。

そして同総合戦略では、2025年度末までに、特別養護老人ホームの定員6万人分(その後、6万2千人分に改定)、介護老人保健施設の定員3万人分、認知症高齢者グループホームの定員2万人分、サービス付き高齢者向け住宅等の2万8千戸を、それぞれ整備するとされています。サービス付き高齢者向け住宅に単身で入居するのか、2人以上で入居するのかにもよりますが、合わせると約14万人分以上の高齢者向け住宅が整備される計算です(サービス付き高齢者住宅とは、安否確認サービスと生活相談サービスが義務付けられた、原則として60歳以上向けの民間事業者が運営する住宅で、基本的には、まだ介護が必要ない高齢者を対象としたものです。ただし、受けられるサービスは施設により大きく異なります)。

東京都で2025年までに増える高齢者の数は約30万人ですから、もしこの全員が高齢者向け住宅への入居を希望した場合、約14万人分では増加分に追いつきません。その後の高齢者の増加を考えればなおさらです。それでも、もしもこの計画が実現すればかなりの効果が期待できるでしょう。

高齢者人口が急増する都市部では、高齢者のための施設や、介護者の不足といった深刻な問題が今後起こることが予想されます。それにもかかわらず、都市部の高齢化の問題は、まだあまり注目されていません。また、日本社会はこれから、都市の高齢化、地方の高齢化など、性質が異なるさまざまな高齢化に対応していかなければなりません。

スタッフライター 新津尚子

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