ニュースレター

2018年03月15日

 

シリーズ:日本の「いい会社」第2回
会社に関わる人々の幸せを

Keywords:  ニュースレター  お金の流れ  企業活動  幸せ 

 

JFS ニュースレター No.186 (2018年2月号)

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イメージ画像:Photo by buri.

JFSニュースレターでは、鎌倉投信株式会社取締役資産運用部長・新井和宏氏の著書『持続可能な資本主義』から、日本の「いい会社」の事例をシリーズでご紹介しています。第2回となる今回は、会社やブランドに関わるすべての人々を幸せにしたいという考え方の元、取引先や生産者、株主、顧客とユニークな関わり方をしている企業の事例をご紹介します。


一年を通じた生産で取引先の雇用も守る:ダイニチ工業株式会社

新潟県に本社を置き、家庭用石油ファンヒーター、業務用石油ストーブ、加湿器などの製造・販売で国内シェアトップを誇るダイニチ工業は、自社だけでなく、取引先についても社員の雇用を守ろうという経営を展開している「いい会社」です。

主力商品の需要が冬に集中するため、ほとんどの暖房機器メーカーは秋冬にまとめて生産します。そうなると、工場が稼動しない時期が発生し、自社ばかりでなく、製品のパーツを生産する協力工場も、一年を通じて安定的に従業員を雇用することができなくなってしまいます。

この問題に対し、ダイニチ工業は一年を通じて生産することで自社と取引先の雇用を守っています。需要のない季節には在庫を抱えることになりますが、一年を通じて安定的に生産することで、最小限の設備と人員で賄えることに加え、従業員の熟練度が増し、質の高い作業ができるようになるといいます。また、取引先でも一年を通じて仕事があるので、安定した雇用を求めて従業員が他業種に移ることを防げます。

約500人の社員に加え、協力工場も含めると約1,000人がダイニチ工業の生産に関わっており、その家族も含めると数千人規模になります。社長の吉井久夫氏は、「新潟で事業を続ける価値は、この地域で雇用を生み、そこで暮らす人々の生活を支え、守ること。新潟に多くの働く場を作り出すことが、地域への貢献となる」と語っています。

取引先の経営を支えるコンサルティング:コタ株式会社

京都府にある本社を中心に、全国に美容室向け頭髪用化粧品と医薬部外品の製造販売を展開しているコタ株式会社は、取引先に向けた独自の経営コンサルティングサービスを行っている会社です。

同社のユニークな点は、独自に開発した美容室の経営改善システム「旬報店(じゅんぽうてん)システム」を展開していること。美容院の経営者は、美容師として高い技能を持っていても、経営の知識があるとは限りません。コタの営業担当者が中心となって、取引先美容室の経営アドバイスを無料で行います。

このシステムは、取引先の美容室が年間を通じて利益を出せる経営体質に転換することを促します。取引先で働く美容師の労務環境の改善・人材育成にも取り組み、永続的に発展し続ける企業に変化してもらうことをめざすものです。

コタの営業社員は、ヘアケア製品を売るだけにとどまらず、経営コンサルティングもするため、一人前の営業マンになるには最低3年かかるといいます。コタは、取引先の成長が自社の売り上げにつながると考えているのです。

取引先の発展が自社の発展につながる。業種は違えど、ダイニチ工業とコタの発想は同じものです。

ファン株主の支援で長期目線の経営を:カゴメ株式会社

トマトジュースや野菜ジュースなどのトマト加工品や自然食材を使った商品の生産販売における国内最大手のカゴメ株式会社は、「ファン株主」と呼ぶ個人株主づくりに熱心に取り組んでいます。

2001年より「ファン株主10万人づくり」を掲げ、株主優待や工場見学会、「社長と語る会」の開催など、国内の株主となるファン獲得に取り組んだ結果、当初約6,500人だった個人株主は20万人に増えました。同社の株主総会は通常のものとは違い、株主が直接役員・社員と対話し、企業活動や商品の理解を深めてもらえるように工夫しています。

カゴメは、同業他社と比較すると1株あたり利益の割に株価が高いにも関わらず、ファン株主は株を売らないため、リーマン・ショックや東日本大震災など、日本企業全体の株価が下落しても、カゴメの株価は大きく落ち込むことはなかったといいます。

このように多くのファン株主に支えられることで、カゴメは短期的な利益の追求に追い立てられずに済んでおり、持続可能な国内農業のためにトマトジュース原材料を全量国産化する、といった社会的課題に取り組むなど、長期的視野での経営を進めることができます。トマトジュース市場で国内トップのカゴメが国内農業の継続に力を入れることで、社会への大きなインパクトを生み出すことができるのです。

作り手・売り手・顧客とのコミュニティづくり:株式会社マザーハウス

東京都台東区にあるマザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」の理念のもと、バングラデシュ産のバッグをメインに、発展途上国におけるアパレル製品及び雑貨の企画・生産・品質指導、同商品の先進国における販売を手がけています。

山口絵里子社長は、過剰な値下げ競争の結果、低賃金労働に従事させられる途上国の労働者の現状を知り、この構造を変えなくては、と同社を立ち上げました。バングラデシュの直営工場では、給与水準の高さやスキルに合ったポジションへの昇級、整備された年金・医療保険などのほか、年に一度実施されるピクニックなど、働く人々にとっての「第二の家」をめざして現地トップクラスの労働環境を整え、高品質の製品を作るための技術教育にも力を入れています。

こうした理念に共感するファンに支えられるだけでなく、同社の製品は品質が高いため、国内水準でも安くはない価格でバッグを販売し、セールも行いません。そうすることで売上が現地の生産者に正当な報酬として還元されるのです。

マザーハウスは、生産元での環境整備や教育だけでなく、「ブランドに関わるすべての人が笑顔になれるようなコミュニティづくり」をめざしています。顧客に現地の生産工場を見学してもらうツアーを開催し、これまで延べ250名の参加がありました。また、大きな貢献をした工場スタッフを日本に招待し、イベントで顧客との交流を行うなど、生産スタッフの夢を後押しするような機会も作っています。こうした取り組みによって、顧客に対してコミュニティへの帰属感・安心感を提供しているのです。

同社副社長の山崎大祐氏は「システムだけが勝手に走っているいまの資本主義を変えたい」と話しています。


今回は、従業員だけでなく取引先や株主の幸せを守り、顧客をファンにしていく取り組みをご紹介しました。次回もまた違った切り口から日本の「いい会社」を紹介していきますので、どうぞご期待ください。

〈JFS関連記事〉
シリーズ:日本の「いい会社」第1回 社員の幸せと信頼を大切に
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035982.html

(編集:スタッフライター 坂本典子)

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