ニュースレター

2018年02月15日

 

「製品ではなくサービスを売る」~ 日本海ガスのレンタルサービス事業の環境効果を測る

Keywords:  ニュースレター  3R・廃棄物  企業活動 

 

JFS ニュースレター No.185 (2018年1月号)

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イメージ画像:Photo by fdecomite Some Rights Reserved.

日本海ガスのPaaS型ガスファンヒーター・レンタル・サービス

JFSニュースレター2017年7月号では、サーキュラー・エコノミーで「PaaS」(Product as a Service)と呼ばれる、「製品ではなくサービスを売る」を実践する日本海ガス株式会社を紹介しました。

「製品ではなくサービスを売る」~ 日本海ガスの15年にわたる取り組みと実績
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035859.html

富山県富山市に本社を置く同社は、主力のガス事業(製造、供給、販売)のほか、ガス機器の販売などのさまざまな事業を展開しており、ガス機器販売の一環として、ガスファンヒーターも販売しています。

同社では、ガスファンヒーターを販売するだけではありません。「お客様がほしいのは、ガスファンヒーターではない。冬の間の暖かさだ」と、ガスファンヒーターを貸し出すことで、「冬の間の暖かさ」だけを販売する、新しいサービス事業も行っています。このように、「製品ではなく、その製品が提供するサービスを販売する」やり方は、サーキュラー・エコノミーで「PaaS」(Product as aService)と呼ばれます。

このPaaS型ガスファンヒーターのレンタルサービス事業は、2001年9月、同社新田八朗社長が導入しました。17年継続してきた結果、貸し出しをしたガスファンヒーターの総数は延べ21,622台に達しています。

2001年には272台だった年間貸し出し数は、2017年には8倍を超える2,331台へと、右肩上がりに大きく伸びています。収納場所がいらないことや初期投資がほぼ不要なことに加え、配達回収・清掃・保管サービスの手間がないなどから、リピート率も高く、利用者の多くは、単身赴任者、転勤族、官舎・集合住宅入居者、高齢者などです。

レンタル制度によって、きちんと専門家が手入れをすることで、ガスファンヒーターの長寿命化がはかられ、ファンヒーターの製造に必要な資源やエネルギーを減らせていると考えられます。

「ガスファンヒーターの長寿命化によって、直感的に環境に良いと思われるガスファンヒーターのレンタルサービスは、実際はどの程度環境に良いのか?」――日本海ガスでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)の専門家と組んで、その効果を推計するプロジェクトを行いました、今号では、この「ガスファンヒーターのレンタルサービスのLCAプロジェクト」について、お伝えしましょう。

LCAで環境効果を測る

まず、LCAについて説明しましょう。LCAとは、ライフサイクルアセスメントの略で、製品やサービス等のライフサイクルを通じて発生する環境負荷(例えばCO2、金属消費、水消費等)を定量的に評価する手法です。人間にライフステージがあるように、製品やサービスにもゆりかごから墓場までのライフステージがあります。具体的には、原料の調達から始まり、製造、輸送、使用、廃棄というサイクルです。製品やサービスによって、どの段階で環境影響が大きいかが異なる為、LCAでは段階別に評価が行われます。

LCAの第1号は、1963年にHarold Smithが世界エネルギー会議にて発表した、化学製品の生産に必要な累積エネルギー量の推計であると言われています。その後、1969年に、コカ・コーラ社が米国のミッドウエスト研究所に委託して飲料容器を対象とした研究を実施し、現在のLCA手法の基礎が築かれました。

日本では、大手製造業から活用が始まり、現在ではほぼ全ての産業で活用されています。最近ではポイントを絞り、消費者によりわかりやすく伝えるために、ある製品やサービスが、そのライフサイクルのすべてを合わせて二酸化炭素をどの程度排出したかを表すカーボンフットプリントや、水の使用・消費量を表すウォーターフットプリントがCSR報告書や統合報告書に活用されています。

LCAは何に役立つのでしょうか? まず、LCAによって、ある製品なりサービスのもたらす環境影響の大きさを把握することができます。例えば、1kgの豚肉を作るのには、重量の6,000倍ともなる6,000リットルも水が消費されます。

このように、環境影響を把握することで、事業に関連するリスクを戦略的に管理することもできるようになります。例えば、高い水ストレス状態にある地域で生産している製品のLCAを行った結果、思いの外大量に水を使うことがわかった場合、これまで気づかなかった事業上のリスクを認識し、対策を考えるなどリスク管理を行うことができるようになります。

また、原材料や製造プロセスを変えた場合の環境影響を比べることもできるため、製品やプロセス、組織のレベルでの環境効率向上や最適化につなげることもできます。例えば、車の場合、強度が同じでもより軽い素材を使うことで、どのくらい燃費が上がり、結果としてどのくらいのCO2排出などの環境負荷が小さくなるかがわかり、原材料や製造プロセスの回線につなげることができます。

最後に、環境影響の大きさを数値化できるため、コミュニケーションにも役に立ちます。行政や投資家、市場、消費者等への環境コミュニケーションに活用することで、環境配慮製品であることを宣言したり、ブランドイメージを向上させたりすることを通じて、ESG投資にもつながると考えられます。一例は、LCA手法を用いて製品の全ライフサイクルステージにわたる環境情報を定量的に開示する日本生まれの環境ラベル「エコリーフ」です。

〈参考〉エコリーフ環境ラベル
http://www.ecoleaf-jemai.jp/

今回の日本海ガスのガスファンヒーターのレンタルサービスLCA評価では、家族構成(単身世帯・単身赴任世帯・夫婦世帯・家族世帯)や住居(戸建・集合住宅)、ガスファンヒーターを使用する日にち(平日・休日)による違いなどを加味して、消費者が「レンタルサービスを活用した場合」と、「ファンヒーターを購入して使った場合」の2通りのシナリオを作りました。2つのシナリオで、環境影響がどの程度異なるのかをLCAを用いて計算し、その効果を推計しました。

LCAの算定では、何をどれくらい使用・消費したかという基礎データを収集し、それに対応する環境負荷係数を掛け合わせることで、環境負荷の総量を算定していきます。


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図1:環境負荷の推計イメージ

今回の評価では環境負荷は温室効果ガスだけでなく、金属消費などを含む79項目を対象としました。

そして、79項目の環境負荷を計算したのち、それぞれの環境負荷を「環境への被害額」に換算し、統合しました。被害額に換算することで、異なる種類の環境負荷を統合でき、金額で示せるようになります。

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図2:各環境負荷の統合化
出典:日本版被害算定型影響評価手法 ウェブサイトより

 なお、基礎データは実績値及び既存統計値、環境負荷係数はIDEAデータベース及びLIMEを用いて計算しました。

何がわかったか

LCAの計算により、日本海ガスにおける17年間分のPaaSサービスは、「購入シナリオに比べて、約200万円の環境影響を回避するという便益を生み出した」と推計されました。

最も効果の大きかった項目は資源消費(61万円)です。次いで、地球温暖化(42万円)、廃棄物(35万円)であり、都市域大気汚染や生態毒性(大気・水圏)の項目でも高い便益が推計されました。PaaS型レンタルサービスは、特に資源消費や温暖化という側面で、環境効果をもたらしていることがわかったのです。


図3:統合化結果の内訳

家族構成による差を見てみると、単身赴任の場合は、それ以外の世帯に比べて、1世帯あたりの環境被害抑制額は約3倍であることがわかりました。日本海ガスのレンタルサービスユーザーの内訳は、単身赴任世帯は5,300世帯、それ以外の世帯は1万6000世帯でした。単身赴任世帯は、現在は多くないものの、削減効果が高いことから、単身赴任世帯に積極的にアプローチすることで、さらに大きな環境負荷の削減が可能となります。

温暖化の観点ではどうでしょうか? 同社のガスファンヒーターのレンタルサービス事業は、17年間で 合計411,352kgのCO2削減をもたらしたことがわかります。1世帯当たりでは、390kg-CO2(単身赴任世帯)から130kg-CO2(それ以外世帯)の削減となります。


図4:二酸化炭素削減量(kg-CO2)

これまでの削減量を、杉の木に換算すると、44,889本(1本あたり年間平均9kgのCO2を吸収)に相当します(林野庁「身近な二酸化炭素排出量と森林(スギ人工林)の二酸化炭素吸収量」より)。PaaSサービスを提供することは、これだけの植林と同等の効果を有しているとも言えそうです。

金属については、17年間の活動で合計42,402mgの金属を削減したと推計されます。金属消費は、採掘による地形の変化や生態系の劣化、採掘時の廃棄物による河川や土壌の汚染等の環境問題に加えて、劣悪な環境での労働や児童労働・強制労働が報告されるなどの社会問題や、金属精錬工場による近隣住民への健康問題にもつながっていると言われています。金属輸入国である日本は、これらの問題からも、金属使用量の積極的な抑制が望まれています。このような背景からも、金属使用量の抑制につながるレンタルサービスは有意義であると考えられます。

最後に

今回、LCAの枠組みを活用して、日本海ガスにおける17年間のPaaSサービスの環境効果を推計しました。結果として、PaaSサービス利用シナリオの方が、購入シナリオよりも環境負荷が小さいことが示されました。また、PaaSサービスは、温暖化だけでなく、これまであまり重視されてこなかった金属消費という側面にも効果的であることがわかりました。

日本海ガスでは、「今後、今回のLCA評価の結果をもとに、レンタルサービス事業をさらに改善していきます」と述べています。また、今回の結果をCSR報告書等に掲載して、SDGsの取り組みの1つとして位置づけ、ESG投資やブランド価値向上などにつなげることも期待されています。

環境の取り組みの重要ポイントを把握したり、効果を数値化したりすることでさらなる改善やコミュニケーションにもつなげることができるLCAの活用が、さらに広がることを願っています。

スタッフライター 小野雄也、枝廣淳子

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