ニュースレター

2017年08月31日

 

「地場産の学校給食を」~入善町の取り組み

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JFS ニュースレター No.180 (2017年8月号)

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Copyright 2017 公益財団法人 入善町農業公社 All Rights Reserved.

「地消地産」の取り組みが各地で進んでいる分野の1つが「学校給食」です。2005年に施行された食育基本法に基づき、2006年より策定されている第3次食育推進基本計画(2016年度~2018年度)でも、学校給食における地場産物を使用する割合を現状の 26.9%から30%以上にするという目標を定め、「給食の地消地産」を推進しています。

また、2008年6月に改正された学校給食法でも、学校給食において地域の実情に応じて地場農産物の活用に努め、食文化や食に関わる産業や自然環境に対する理解を図ることが定められました。主な目的は「食育」ですが、その結果、地場農産物の活用が進めば、地域経済の循環を促すことになります。

農水省が学校給食で地場農産物を利用する上でのポイントをまとめた手引き書でさまざまな事例を見ると、地域にあった体制づくりができるかどうかが成功要因となっていることがわかります。

学校給食の「地消地産」の取り組みを調べた結果、大きく分けて3つの段階がありました。

学校給食では、生徒の人数から調理計画が立てられ、何がどのくらい必要か前もってわかります。それをできるだけ、地元の農作物で供給しよう、という取り組みが第一段階で、全国各地で行われています。何がどのくらい必要かに対応するだけでなく、「この季節なら、地元ではこの食材がこれだけ生産できる」という見通しを元に調理計画を立てるのが第二段階。さらに、調理者と生産者が年度に先立って話し合い、調理者の希望にあわせて、生産者が生産計画を立て、これまで作っていなかった農作物などの栽培も行う、という第三段階に進んでいる地域もあります。

富山県の入善町農業公社の辰尻幸彦事務局長にお聞きした入善町の取り組みを紹介しましょう。


学校給食を地場産中心へ

学校給食における地場産比率を高めようという動きが出てきたころ、入善町は県よりも高い50%を目指すことにしました。最終的には42%まで行きました。ここ2~3年、37~38%に落ちていますが、野菜だけだと48%くらいです。今年は全体で40%に復活させたいと考えています。

この町には中学校が2校、小学校が6校ありますが、そのうち5個所で学校給食の調理をしています。学校給食を食べている子どもたちの数はあわせて1,600人~1,800人です。

以前の学校給食では、野菜は業者から購入していて、地場産ではないものがたくさんありました。町にとっての基幹産業である農業を潰さないよう、「学校給食に地場産を」と、2003年から切り替えてきました。当初、食材納入業者との間に軋轢が生じましたが、町や学校関係者、農家が一体となって説明し、了承を得た経緯があります。

学校給食の地場産比率を高めるために、年度末の3月に個々の生産者に、来年度、何月に何をどれだけ出せるか聞き取りをします。その時期が来ると、もう一度足を運んで、生産状況を確認します。100キロ予定していたものが200キロになることもありますし、天候不順やその他の要因で、その逆もあります。

各学校で給食を作っていますが、生産者の聞き取りをもとに、来月の分は前の月の10日過ぎに、来月出荷できる野菜を伝えます。それを元に献立を作ってもらい、25日くらいに各学校から「何日にこの食材をこのくらい」という依頼が来るので再度生産者にお願い・確認に行きます。献立は、教育委員会を中心に、栄養士さんが毎月集まって相談されます。

業者から一括して仕入れていたときは、調理の都合で必要な量を指定すれば、過不足なく配達されていました。しかし、地場産を重視すると、そうはいかない場合もあります。教育委員会から「今週はこれだけしかないのでその範囲でやってください」と伝えると、各校で、「じゃあ、明日にします」「私の所は今日やります」といって、献立を調整してくれるのです。生産者が1日に10キロしか出せない場合は、今日はこの学校に、明日はこの学校にと日を分けて配達します。

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農作物は生産者が前日に、農業公社まで持ってくるので私たちで検査してから分配しています。悪いものがあれば交換を生産者にお願いしますし、学校から苦情があれば、私たちが飛んでいって解決します。

子どもたちのようす

学校給食に地場産のものを多く入れるようになって、子どもたちが変わってきた点がいくつもあります。残さずに、きれいに食べるようになりました。新しく来た先生が嫌いだから残すと、「先生、それは違うよ」と子どもたちが言います。

入善町では、小学校なら1年生から6年生まで1つのランチルームで一緒に給食を食べるんです。5、6年生が、1、2年生が食べられないのを見て、「それ、おれが食べたい。おまえ、好きなもの取ってけ」と交換しています。そうして、残飯ゼロです。

子どもたちに食べてみてどうか聞くと、「今日の地場産のものはおいしかった」「昨日も今日もおいしかった」と返ってきます。「まずい」という言葉は出てきません。

家庭も調理師も教育する

野菜は、業者から入れれば安いけど、新鮮さがありません。一方で、地場産は安心できる。市場で買うと、ほぼ傷ものはないけれど、地場産の野菜には、虫が付いているのが当たり前です。調理師より子どもたちが、小さい虫を見つけるんです。家に帰って、お母さん方に、「虫が付いていたけど、うまかった」と言う。

今度は、お母さん方が騒がれる。私たちのところに来られるので「あなたが小さい時に食べていた野菜はどうでした?」と聞くと「虫が付いていたのも食べていたよ」「じゃあ、なぜ子どもにそう言うの?」と、親から教育します。

子どもたちが書いた地場産の給食についての作文をお母さん方に見せると、「私たち以上に考えている」と喜ばれます。小さいときに味わった味は、大きくなっても忘れないでしょう。「おれも百姓やってみたい」という子も増えてきました。

調理師さんには、「もっときれいに洗ってください。どうしても駄目な場合は、お湯を通してください」といいます。お湯を通すと、小さい虫は全部浮いてくるので、それを除けば関係ない、野菜に穴のあるのは当然です。

「店に行って、お金さえ出せば、虫も穴もない野菜が買えるのに、なんで穴の空いたのを持ってくるの?」と調理師の皆さんはいいます。「地元の農家から安心安全な野菜を買うことが、大事だと思いませんか。子どもたちがおいしく食べられる作り方をしてください」。そのために、僕も学校に行って、包丁の研ぎ方から教えます。最初は、「500円で研いでもらえるのに」といわれますが、「その500円は誰が出すの? マネしてやってみて」と、1カ月各学校を回って教えました。

農家を支え、取り組みを広げる

町の基幹産業の農業を支えたい。入善町の農家には、たとえばタマネギ1個の値段をつけてもらいます。市況の最高ランクの値段を基準に、一番高い値段を年間通して示します。生産者が1コ100円でというなら、100円渡そうと考えています。まず生産者を大事にしなければならない。だから、生産者が希望する価格をまず設定することです。

その代わり、こちらからも「選別が悪い」「もっと大きさを揃えて」と注文をつけます。対応してくれたものには、黙って値段をつけます。品物が良かったら110円に値段を上げます。

高齢者の方にも「家庭菜園で作って、来月1回でもいいから出してよ」とお願いします。1回出せば、いい小遣い稼ぎになったと喜ばれる。「もうちょっと増やしていい?」「どんどん増やしてください」という具合です。私が各畑を回って、「こういう野菜もできないか」などの話もしています。2009年に私がこの仕事を始めて、農作物の種類の表を見ると、だんだん増えていることがわかります。

僕らは子どもたちにいいものを食べさせたくて、農家と一緒にがんばっています。今でも、20歳、30歳近くになった当時の子どもたちに会うと、「学校給食、おいしかった」と言ってくれます。

ふれあい給食

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毎年3校ずつ予算を取って、生産者が学校で子どもたちと一緒に給食を食べて話す「ふれあい給食」をやっています。子どもたちはとても喜びます。作文を見ると、たった30分の時間ですが、原稿用紙3、4枚書いてくる。よほどうれしかったんだなと思います。それを帰って、親に見せると「われわれが思わないこと、それ以上のことを子どもたちが思っている」「どんどんやってほしい」という要望が来ます。

「今日のこの食材は、この方が作られました」と紹介されて生産者はびっくりされます。でも喜んでいるんです。子どもたちは、われわれ以上に拍手したり、いい言葉をささげてくれますから、生産者も前へ進むことができるんです。

入善町の農業の今後

入善町には幸いなことに、若者がどんどん入ってきています。夫婦で一緒に農業をやっているところが多く、後継者の心配はないです。

若者がまとまったのは、1996年ごろ、無人ヘリコプターを国の補助金で3台入れたのがきっかけでした。その時、農家の息子さんたちをオペレーターにしたんです。「遊びがてら農業やらんか」と誘い、給料もちゃんと出しました。その時から、今まで「農業なんて」とそっぽ向いていた連中がひとつにまとまりました。

遊び半分で始めたのですが、遊ぶことでアイデアや、やる気が出てくる。今、農業の担い手は167名ぐらいかな。

入善町全体で農地が3,700haほどありますが、そのうちの75%は、何らかの契約で農家がやってくれています。田んぼも、年がいったから、または機械がないからできない人も出てきます。話をしに行って、継いでやってくれそうな人の中から誰がいいか聞いて「この人がいい」となれば、その場で電話して、たいていは「わかった」と返って来ます。

そんなわけで、3,700haの農地のうち、今放棄地になっているのは40アールだけです。山の手の、イノシシやサルが出るところでも、青年部や高校生、商工会の青年部などの人たちが「稲ができないなら、オオガシやエゴマ作ってみようか」と、違う作物を六次産業的にやっています。法人化も進んでいて、今126の農業法人があります。

今年から、「入善町にないものを作ってみよう」と農家の若い奥さん12~13人のグループが取り組んでいます。私も一緒に種苗店や研修に行ったりして、アドバイスしています。

ここの直売場には、県内の遠くからも買いにきます。去年1年間で売上が1億8000万円でした。地元の出品者が450名ほど、次から次へ持ってこられる。値段が安くて新鮮でしょう。午前中、山のように野菜が積まれていても、昼にはなくなって、夕方にはガランとしている。朝9時から10時半くらいまでにおおかた売れてしまいます。


入善町の取り組みでは、農業公社が調理者と生産者との間に入って調整役を果たすことにより、学校給食における地場農産物の活用がスムーズに進んでいます。「給食の地消地産」による食育の効果が、子どもたちはもちろん、親や調理師にも及んだり、「ふれあい給食」の実施が生産者の喜びにつながったりと、良い影響の輪が拡大。農業の後継者育成についても、遊び心を取り入れて若者の心をつかむなど成果を上げており、「給食の地消地産」の取り組みがどのように定着・発展していくのか、今後が楽しみです。

枝廣淳子

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