ニュースレター

2013年09月17日

 

環境に配慮した食の取り組み ~東京ガス株式会社

Keywords:  ニュースレター  企業(非製造業)  食糧 

 

JFS ニュースレター No.132 (2013年8月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第104回
http://www.tokyo-gas.co.jp/


私たちの生活に欠かすことのできない「食」。東京ガスは、ガス事業者として環境負荷の少ないエネルギーを供給するとともに、身近なテーマである食を通して「生きる力」を育むことで、持続可能な社会の発展を目指しています。

「食」は、さまざまなことに気づかせてくれる学びの場です。食材を選ぶときには、育った環境や安全のことを考え、料理を作るときには、おいしい火加減や省エネを学び、音や香りの変化で火の入り方を知る。そして、五感で味わう楽しさは貴重な体験となり、片づけでは、台所が海につながっていることに気づく。自然との共生、そして豊かな感性。「生きる力」は、食を通して育まれていくのです。


課題と国の取り組み

現在、「食」と「エネルギー・環境」の分野では、様々な問題が起きています。

「食」の分野では、長寿を支えてきた伝統的な日本型食生活が乱れ、脂質の摂りすぎによる肥満や生活習慣病が問題になっています。生活リズムの夜型化にともない、朝食を食べない人も増えてきました。独りで食べる「孤食」に加え、家族と一緒に食事はしても別々なものを食べる「個食」の問題も指摘されています。

「エネルギー・環境」については、文明の恩恵を受けて私たちの生活は快適で便利になりましたが、その一方で地球温暖化や化石燃料の使いすぎによるエネルギー資源の不足、大気や水質の汚染も問題になっています。

こういった状況を受け、国も、「食」と「エネルギー・環境」問題に取り組んでいます。「食」に関しては、2005年7月には食育基本法が施行されました。5年ごとに「食育推進基本計画」が作成され、食育への関心度や朝食の欠食率など具体的な目標値を設定し、取り組みを進めています。

「エネルギー・環境」に関しては、温室効果ガス排出量の削減プロジェクトとして、2012年までに1990年比6%削減という、京都議定書で定められた目標を実現するための「チームマイナス6%」、2009年の国連気候変動サミットにおいて表明した、2020年までに1990年比で25%削減という目標を実現するために2010年から始まった「チャレンジ25キャンペーン」など、環境省が中心になって、二酸化炭素排出量を削減する国民運動が展開されています。


東京ガスの取り組み

東京ガスでは、よりクリーンで効率のよいエネルギーとして、天然ガスを原料とする都市ガスを供給しています。天然ガスは他の化石燃料と比較して、地球温暖化の原因物質であるCO2や酸性雨の原因物質であるNOx・SOxの排出量が低いことが特長です。CO2の排出量は、石炭を10とすると石油が8、天然ガスは6です。NOxについては、石炭10、石油7、天然ガス4、SOxにいたっては、石炭10、石油7に対して、天然ガス0となっています。

都市ガスは、輸送時のエネルギーロスがほとんどないので、エネルギーをほぼ100%家庭に届けることができます。お湯を沸かす場合、ガスコンロでの排熱ロスを考えても56%のエネルギーが熱に変わります。一方で火力発電を例に電気を使用した場合は、輸送時のエネルギーロスが大きいため、IHクッキングヒーターでの排熱ロスが少ないにもかかわらず、熱に変わるエネルギーは29%にすぎません。

こうして環境に配慮したエネルギーを供給することに加え、私たち一人ひとりが環境に配慮した行動を積み重ね、地球の環境を守ることを後押しする活動として、食育に取り組んでいます。

東京ガスが料理教室をはじめて開催したのは、なんと100年前、1913年のことでした。調理用燃料が薪からガスに替わる際、ガス調理機器の使い方を案内することを目的にスタートしたこの教室では、時代が移り、暮らしが変化する中でも、日々の食事や調理技術の提案を通して、食生活に役立つ情報を発信し続けています。

「食」の問題にしても「エネルギー・環境」の問題にしても、理解を深めて問題解決に導いていくためには、身近なテーマを入り口にし、体験を通して学習することが大切です。「食」と「エネルギー・環境」が結びつく場である台所、そこで行われる調理を身近なテーマとして、100年前から行っている料理教室の経験を生かした活動を展開しています。

2005年の食育基本法の施行に先駆け、1992年に子ども料理教室「キッズ イン ザキッチン」を開始しました。自分で調理をして食べることが、健やかな食生活を支える基本だと考えたためです。炎を使って料理する「炎の調理」が生み出すおいしさを伝えることで、食への関心を高め、食の問題解決につなげます。また、おいしい料理を作るためには、五感を使うことが大切です。料理は、調理技術を身につける場であると同時に、五感を育てる場でもあるのです。

1995年には「エコ・クッキング」の取り組みを始めました。身近な食を通して環境について楽しく考えることをコンセプトとしています。食材の選択から後片付けまで、エネルギーを切り口に食を考えることで、環境に配慮した生活について気づきを得るきっかけとするものです。

食材を選択し、調理をして、食べて、片づける、という一連の食の体験を通して、環境への配慮が伴った食の自立と、料理のおいしさが分かる五感を育成することで、豊かで地球にやさしい食生活を実現する。その過程で一人ひとりの「生きる力」が育まれ、社会を変える力を生みだし、持続可能な社会の発展につながる。それが東京ガスの目指す姿です。


エコ・クッキング

「エコ・クッキング」について、もう少し詳しくご紹介します。「エコ・クッキング」は、食材の選択、調理、食べる、片付け、という4つのステップから成り立っています。

最初のステップは、食材の選択です。環境の点からは、旬の食材や地元でとれた食材を選ぶなど、店頭に並ぶ前の栽培・運搬時におけるエネルギー消費量のことも考えることが大切です。また、新鮮でおいしい食材を選ぶためには、色やツヤ、香り、手触りなど、五感を働かせることが必要になります。

次のステップは調理です。調理のポイントは、余熱を上手に利用してエネルギーを削減することです。ひとつの鍋やフライパンを使いまわすことで、そのたびの予熱を省くことができ、また洗い物が減るので水の節約にもつながります。一度に2品以上の調理をする同時調理を心掛けることも、エネルギーの削減につながります。

調理中には、香りがしてきた、グツグツ煮立つ音がしてきた、色が変わってきた、柔らかくなってきた、味がしみてきたなど、嗅覚、聴覚、視覚、触覚、味覚をフルに使ってでき上がりのタイミングを見極めます。タイマー機能なども活用しますが、最後は五感がポイントになります。

次は、いよいよ食事のステップです。ここでのポイントは、残さずに食べることです。食べられる量を盛り付け、食べ残さないことが基本ですが、おいしくなければ食も進みません。調理の段階でおいしく作ることも大切ですし、五感を使って味だけでなく、見た目、音、におい、食感でおいしさを感じ、言葉で表現すると、より一層おいしく感じられます。ここでも、五感の働きが重要です。

最後のステップの片づけでは、汚れた食器は重ねない、米のとぎ汁やゆで汁を利用する、洗い桶を上手に使うなど、水を節約し、水を汚さない洗い方がポイントになります。また、焼却するためのエネルギーを削減するために乾いた状態でゴミを捨てるなど、省エネになるゴミの捨て方を実践することで、環境への負荷を減らすことができます。

東京ガスでは「エコ・クッキング」の取り組みとして、料理教室での定例講座の開催、小中学校での出張授業の実施、指導者養成講座の開催に加え、ウェブサイトへのレシピ掲載も行っています。
http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku/ecocooking/recipe/index.html

JFSでは新しいコンテンツとして「エコ・クッキング」のレシピを英語にして、月に一度のペースで世界に発信していく予定です。皆さんも、日本の食を知っていただくとともに、是非「エコ・クッキング」に挑戦してください!


(スタッフライター 田辺伸広)

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