ニュースレター

2012年07月10日

 

JFS次の10年へ向けて

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JFS ニュースレター No.118 (2012年6月号)

今年、2012年の8月末に、JFSは10周年を迎えます。

2002年8月、日本の持続可能な社会への動きを英語で世界に発信するために、私たちNGOジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)は産声を上げました。

私自身が同時通訳者として国際会議などで仕事をしてきた経験から、「日本人は海外から情報を採り入れることにはとても熱心だけれど、日本にもたくさんある良い取り組みはほとんど世界に伝わっていない」ことに気がつき、英語という言葉が障壁なのだとしたら、それを乗り越えるお手伝いを私たちがしよう――そのような思いで仲間とともに立ち上げたのです。

JFSを立ち上げた時の私たちのキャッチコピーは、「がんばっている日本を、世界はまだ知らない」。日本には優れた環境技術もたくさんありますし、政府や自治体、企業や市民社会などで、いろいろと素晴らしい取り組みを行っているのですが、言葉の壁があるために、世界はそれを全然知らない、それは双方にとってもったいないことだ、という思いです。
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そのような先進的な取り組みや技術などを日本から世界に発信すれば、先進国にも途上国にも刺激となって、それぞれの活動を促進することができるのではないか。同時に、そのような発信に対して、世界から「それはすごいね」「自分たちもその技術を使いたい」などの声が日本に戻ってくることで、日本のそれぞれの組織や地域で孤立無援でがんばっている人たちに、「組織内ではまだ理解されていないけど、世界はわかってくれているんだ」と、さらに取り組みを進める励みにしてもらえるのではないか。そう思ったのです。

10年の活動を通じて、毎月30本ずつ発信している記事は約3,500本に、登録者に送付した毎月のニュースレターは117号を数えるほどの情報を日本から世界に発信してきました。ニュースレターの読者は、188カ国に8,000人弱。各国のオピニオンリーダーをはじめ、各国政府・自治体、企業、教育機関、メディア、NGO、一般市民など、あらゆるセクターに読者がいます。

世界各地から届く、「以前は日本の情報はほとんどなくて、日本が何を考え、何をしているか、まったくわからなかった。JFSが英語で情報を届けてくれるようになってから初めて、日本の先進的な動きや取り組みを知りました」「自分たちの国の持続可能な社会づくりに役に立ちます」という声に励まされながら、JFSの活動を支えてくれている700人を超えるボランティアさん、そして法人会員・個人サポーターでのみなさん、事務局スタッフとともに、10年間活動を続けてきました。

最近では国際会議など海外に行くと、会場で「JFSのことを知っている」「ニュースレターを読んでいる」「日本の情報はそこから取っている」と言ってくれる人に必ずお会いするほどです。日本国内での認知度よりも世界での認知度のほうが高いと言えるでしょう。海外からの日本の環境や持続可能性の動向の取材や、特に東日本大震災後は震災や原発事故、エネルギー問題に関する取材なども増えています。

本来は政府レベルで海外広報や海外からの取材対応をするきちんとした組織があるはずなのでしょうけれど、日本の場合は、あまり機能していないらしく、JFSが持続可能性の分野でのワンストップショップ的な位置づけにもなっているようです。しかし、日本では寄付の文化もまだ根付いておらず、税制その他の仕組みも十分ではないため、NGOが財政的に持続可能に運営することがなかなか難しいのが現状です。JFSもスタッフ2名という小さな組織で何とか活動をしているという状況であるため、海外からのリクエストに対応しきれないことも多く、申し訳なく思っています。

どの国でも同じですが、日本には持続可能な未来へ向けてのポジティブな取り組みもあれば、持続可能性を損なうネガティブな動きもあります。その中でJFSでは、日本からの情報で世界が元気になったり刺激を受けたりして、先へ進んでほしいと思い、基本的にポジティブな情報を発信しつづけています。

発信している内容というより、毎日1本ずつポジティブな情報が日本から発信されていることにも価値があるのだ、ということに、活動を始めて数年たって、世界からのフィードバックから気づきました。現在、地球環境がどんどん悪化し、絶望したりあきらめたりする人も増えています。しかし、悪化の一途の状況でも、1日1本、日本から必ずポジティブな情報が届くことが「支えになっている」「励みになっている」という声が届くのです。その時から私は、JFSは世界の「希望の泉」になりたいと思うようになりました。ポジティブな情報を発信し続け、世界中のがんばっている人たちに励みにしてもらいたい、こんこんと湧き出る希望の泉であり続けたいと思っています。

そういった基本的な活動の理念・目的は変わりませんが、環境問題や持続可能性、そして情報をめぐる状況は、日本でも世界でも、この10年間に大きく変わってきました。JFSでは今、「この10年の活動を踏まえ、次の10年の方向ややるべきことを考える」作業を進めています。いくつか考えている方向性を紹介しますので、「こういう情報があると自分たちの活動の役に立つ」「こういう取り組みをすれば、世界の持続可能性のために役立つのではないか」等、ぜひ、みなさんからのインプットをいただければうれしいです。


(1)JFSから、AFS、そしてWFSへ

現在JFSは、日本の情報発信のプラットホームとして活動していますが、次のステージとして、AFS(アジア・フォー・サステナビリティ)として、JFSの培ってきた世界への発信チャンネルや運営方法をアジアの人々に使ってもらい、アジア発の環境情報をどんどん世界に出していこうと考えています。現在、その第一歩として、中国の情報発信をしている組織とコラボレーションを進めているところです。
アジア・フォー・サステナビリティ

そしてゆくゆくは、WFS(ワールド・フォー・サステナビリティ)として、世界中の国・地域がそれぞれに持っている、お互いに役に立つポジティブな情報を共有し、学び合い、未来を共に創っていく活動にステージアップしていけたら、というのが長期的な方向性の1つです。


(2)「内向くな、日本!」

前述したように、日本から世界の情報発信があまりにも少ないと思い、せめて環境分野で少しでも情報発信をしていこうと、JFSを立ち上げました。しかし、この10年間、日本全体の情報発信力という点では、ほとんど改善が見られていないように思います。

そこで、次の10年の1つの活動として、JFSで情報発信をするだけではなくて、JFSがこれまで培ってきたノウハウやチャンネルなどを共有することで、もっといろいろな主体が日本から世界に発信する、もしくは世界と共に未来を創っていくような活動をしていけるように、サポートしていかなくてはいけないと思っています。

私の個人的な印象かもしれませんが、この10年間、逆に日本はどんどん内向きになっているという気がしています。政府や企業、家庭の居間で議論されることはほとんどが国内のことでしょう。海外に出て行く留学生も減り、マスコミの情報を見ても、ほとんど国内ニュースばかりという状況のように思えます。それもあって、国際的な日本の位置づけはどんどん低下し、日本がもっと貢献できるはずなのにできていない、世界にとってはあまり必要ではない存在になりつつあるのではないか、という問題意識を感じ始めています。このあたりを何らか変えていける活動ができないか、と考えています。


(3)基本活動の目的や方法の進化

10年前にJFSを立ち上げたときに、英語で情報発信をしている団体は少なく、JFSの存在は希少であるという価値を持っていたと思います。しかし今日では英語のウェブサイトや、さまざまな日本語以外での情報発信を行う団体は増えています。また、JFSはウェブサイトとメールマガジンというツールで主に情報発信をしてきましたが、フェイスブック等のソーシャル・メディアの力を十分に活用できていません。

このような状況の変化に対して、必ずしも私たちJFSがやらなくてもよい活動がそのまま続いているところもあるかもしれません。日本からの情報発信を通じて、世界と日本を持続可能な方向に近づけていきたいという大きなビジョンに向けて、現在の状況で、JFSならではの、私たちがやるべき仕事は何なのだろうか? ということを考えています。今、話し合っている問いには次のようなものがあります。

  • 日本と世界の持続可能性を高め、加速するためには、誰に、どんな情報を、どの媒体・形式で届けるのがもっとも効果的か?
  • 持続可能性に近づくために、メディアとしてのJFSに、どのような価値が求められているか? その価値実現に必要なことは何か? あるいはJFSの強みや資産から、どんな付加価値が可能か?
  • 情報のコミュニケーションに特化するか? あるいは、想いや共感を交えたコミュニティづくり、利害関係者間の関係づくり・場づくりのコミュニケーションに活動を広げていくか?
  • コミュニケーションが持続可能な社会実現に寄与するまでの「変化の理論」をどのように描くか?

ぜひ、世界各地で活動されているみなさんが、どのようにお考えかを教えて下さい。


(4)JFSの持続可能性に向けて

前述したように、日本ではNGOを財務的に健全に運営することがなかなか難しい状況で、JFSだけでなく多くのNGOが資金不足・人材不足のなかで何とかがんばっている状況です。JFSも専従職員は2人という小さな所帯ですが、よく10年間活動が続けられたと思うほど、台所事情は綱渡り状態です。

特に海外への情報発信活動がメインであるため、「受益者が国外にいる」「情報発信は効果が見えにくい」等の理由で、国内の財団などの助成が得にくく、政府も一切補助をしてくれません。年会費10万円の法人会員からの会費に支えられているのですが、特にリーマンショックの後、サポートできなくなったと退会されるところも多く、厳しい状況です。もしJFSが財政的にも持続可能に活動を続けていくためのヒントや参考情報などがありましたら、あわせて教えていただけたらありがたいです。

この10年間、「世界と日本を何ミリ持続可能な方向にプッシュできただろう?」と思いつつ、次の10年に向けてさらに効果的な活動が展開できるよう、しっかり考えたいと思っています。インプットをお待ちしています。よろしくお願いいたします。

あなたがJFSに力を貸せる5つの方法


(枝廣淳子)

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