ニュースレター

2011年07月12日

 

日本初!「総理・有識者オープン懇談会」

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世界でも先進的! ネット中継・双方向で首相と自然エネルギーについて議論

JFS ニュースレター No.106 (2011年6月号)
JFS/An Interactive Webcast with Japan's Prime Minister on Renewable Energy Policy: A First for Japan
Copyright e's Inc.


6月12日、日曜日の午後、総理官邸にて、自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」が開催されました。

これは、菅直人内閣総理大臣への自然エネルギーの普及を要望する声に応えるかたちで開催が決まったもので、元サッカー日本代表監督の岡田武史氏、ミュージシャンの坂本龍一氏、ソフトバンク社長の孫正義氏、ap bank代表理事の小林武史氏、そしてJFS代表の枝廣の5人が参加。政府側からは菅総理のほか福山哲郎官房副長官、田坂広志官房参与が出席しました。

予定の1時間半を大きく上回り、2時間にわたって、菅総理に率直な提言を行ったり、「これからどのように自然エネルギーを普及させていけばよいか」について意見交換をしました。

この懇談会の大きな特徴は、すべて「オープン」だったことです。インターネットを通じて動画で中継され、ツイッターでコメントや質問を受けつけることにより、関心あるすべての国民とメディアがリアルタイムで参加できるという、画期的な試みでした。これまでの日本にはなかった、国民や政府、メディアの「新たな対話の形」の試みであり、「真の民主主義への取り組み」ともいえるでしょう。

冒頭、菅総理がこのように挨拶されました。「我が国はエネルギー基本計画を3年おきに決めています。原発事故が起こる前は、2030年までに原子力は53%、自然エネは20%にする計画になっていましたが、今回の事故を受けて、私はエネルギー基本計画を白紙から見直す、と申し上げました。『2030年までに再生可能エネルギーの割合を20%に』だった計画を『2020年代のできるだけ早い時期に20%達成』とすることを先のG8サミットで発表しました。これは、総理という立場でやらなくてはいけないと思っているのと同時に、この課題には関心があるので、生きている限り、しっかり取り組んでいきたいと思っています」。

その後、5人の参加者から5分ずつ、主に自然エネルギーの普及についての提言や意見表明がありました。それを受けての菅総理のコメントから一部を紹介しましょう。

「長年政治家を経験した立場でのこれまでのことや今後の話を申し上げます。(日本でも風力発電の推進計画などはありましたが)、行政には一つの方向があったのです。『原子力は進める、それを進める上で邪魔になるものはできるだけ外していく』。それは30年前からずっと実感していました。「全量買取制度」などはずっと言ってきましたが、現時点でもできていない。できない理由や理屈を山のように持ってきて、やらない。これをどうやって突破するか。総理大臣だからやれ、というのはその通りですが、分厚い構造があるのです。しかし、それを変えることができるというのは、まさに今です。今、変えることができなかったら今後10年また動かないでしょう。国会でも3月11日に(再生可能エネルギー推進法の)法案を出しました。経産大臣など関係の担当者になんとか早く、と言っていますがなかなか動かない」。

「自然エネは大きい会社がどん、と100万KWを3つ作るとかではなく、5KW、大きくても1000KWのものをいろいろなところに作っていくものです。まさに国民参加型エネルギーです。この国民参加型エネルギーを国民に開放しましょう。投票権と同じように、エネルギーに参加する権利を与えましょう。一般の人が売り先まで考えることは無理ですから、配電するメーカーが一定の価格で買い上げて配電するのは当然のことです」。

「もうひとつ、「省エネ」という言葉がやや消極的に聞こえます。今の行政の発想は、「供給」が前提になっています。そうではなく、供給量自体を減らす、減らしても大丈夫な技術や社会を作ること。(行政や業界がよく言う)「安定供給」は、「今供給を減らしたら危なくなりますよ」という現状維持の言葉だと思います。それを変えていくには--みなさんへのお願いですが--、みんなが「投票するのと同じように、自分たちにも電力を作らせろ、売らせろ」と求める輪が広がっていけば、政治が多少変化しても逆戻りはしないのではないかと思っています」。

枝廣が「多くの国民が自然エネルギーを進めてほしいと思っており、国のリーダーも進めたいと思っている。けど動かない。どのような形で私たちの思いや声を"見える化"すれば、政治家や官僚に届くのでしょうか?」尋ねると、菅総理は「知っている人から言われると一番、動きます。知らなかったら、知り合いになる。地方議員、国会議員でもよいので、米国のロビー活動のように。官僚の動き方も、国民世論で大きく変わってきます」。

また、枝廣が「自然エネルギーの素晴らしいところは、環境省、経産省はもちろん、あらゆる省庁の総合力で実現する点だと思います。脱化石燃料を進めているデンマークでは、首相を委員長とする委員会をつくって全省庁で取り組んでいるそうです。それぞれの省庁の得意なところを持ち寄って進めてほしい」と述べたところ、「原子力で進めてきたシステムを逆に参考にできます。原子力を進めるために、科学技術庁という役所まで作り、原子力研究所などいろいろ作りました。それに匹敵するような規模で"自然エネルギー推進省庁"のようなものを作って進めていけば、10年どころかもっと早い時期に目標を達成できると思います。省庁横断的に進める仕組みについては急いで検討します」と力強い言葉が返ってきました。

JFS/An Interactive Webcast with Japan's Prime Minister on Renewable Energy Policy: A First for Japan
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当日、リアルタイムで動画中継を見ていた人は7万人に達しており、ツイッターを通して、数多くのコメントや質問が届き、紹介された質問に対しても、総理は丁寧に答えました。電力事業のあり方についての質問には、「電力改革についての話をはじめるチャンスです。議論の場の枠組みは一日も早く進めていくので、国民も大いに議論し、制度改革に繋がればと思います」。「退陣しても政策を引き継ぐことはできるか」に対しては、「各党に熱心な方々がいます。熱心でない方との力関係については、これも国民の投票によって変わってきます。私は政策は引き継げると思っています。あとは国民の皆さんの一票で引き継ぐようにしてもらいたい」。

そして、「今回のような意見交換の場を政府主催でやっていったらよいと思うがどうでしょうか?」という質問には、「やりましょう!」と答え、拍手が上がりました。

最後の総理のあいさつは、「今日はいろいろお話を聞けて、楽しかった。『この地球は未来の子どもたちからの借り物』という岡田さんが引用された言葉。地球という創造主が奇跡的に作ってくれた環境の中で、今、私たちは生きている。それを、CO2や原子力などを含め、自分たちで自分たちが住めない世界になってしまったら創造主に申し訳ない。科学技術は好きで可能性を感じていますが、一方で科学技術は人間が本当にコントロールできるのかと言う問題意識を持ってきました。政治が、国民が、コントロールしなければならない。単に面白いから、だけで技術を発展させてコントロール不能なものを生み出してしまった象徴が原爆・水爆です。今、我々が議論しているテーマは根源的で、一方で、考えれば楽しいものではないかと思いました。これからもテーマは変わるかもしれませんが、ネット中継で見ている皆さんもいろいろな形でご参加いただければと思います」。

※この懇談会のようすは、現在も政府のインターネットテレビを通じて見ること ができます。 
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4972.html

当日から3日間に映像をみた人の数は約12万人に達しています。また、今回のオープン懇談会をベースに、ツイッターやフェイスブック、ブログなどでも熱心な議論が展開されています。

「政治家ってこんなに謙虚だったっけ? 自然エネルギーを語る菅さんは少年のように目がきらきらしていた。応援したい」というように、政治家の生の人間としての面に触れて政治家や政治に対するイメージが変わったという意見も多くありました。また、今回のすべて動画中継+ツイッターというオープンなやり方への称賛も数多く寄せられています。

・日本の民主主義が大きく変わる胎動を感じた。・面白かった!官民一緒に考えて動かす日本の一歩。 素晴らしい仕組み。このような声を政治に反映していく...直接民主主義実現 への糸口になると思います。・国民が見える形で、総理が出てきて討論するのはいいことだ。他のテーマでも どんどんやって欲しい。・各分野の第一線の有識者とこの国の政治家が、ここまでざっくばらんに人間味 にあふれた対話をし、それが国民に向けてここまでオープンに公開されたとい うこと、今までの政治討論と全然違いました。新しい時代の到来を感じて、す ごくすごく嬉しかったです。これからも続けて下さい!・これを見ている限り、政治は変われるんじゃないかな。マスコミを通して政治 をみているかぎり希望がない。・このネット会議はずっと続けていただきたい。ここには希望がある。

官邸側も今回の成功をベースに、さらに国民とのオープンな対話の場を作っていきたいとのこと。また、私自身をはじめ今回の参加者側も、国のリーダーなどとの円卓会議を通して、「国民の国民による国民のためにエネルギー政策」を進めていきたいと、次のステップを相談しているところです。

日本初、そして世界でも例の少ない、国家指導者と国民とのソーシャルメディアを駆使した今回の試みが、自然エネルギー政策はもちろん、日本の民主主義を一歩進めていくことを願っています。


※自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」 
http://www.es-inc.jp/lib/archives/110616_111707.html 
http://www.es-inc.jp/lib/archives/110619_082849.html


(枝廣淳子)


このページは Artists Project Earth の助成を受けています。
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