ニュースレター

2010年11月16日

 

地域の電力を地域でまかなうために ~ 小水力発電の新たな可能性

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JFS ニュースレター No.95 (2010年7月号)

JFS/Small Hydropower Brings Possibility of Locally Generated Electricity for Local Consumption
Copyright 全国小水力利用推進協議会


2008年現在、日本国内の水力発電所、火力発電所、原子力発電所を合計すると4,861発電所となり、合計で最大出力27,751万kWの電力を供給しています。
http://www.stat.go.jp/data/nihon/10.htm

現在の日本は、水力発電、火力発電、原子力発電の原料である石油や天然ガス、石炭、ウランなど、一次エネルギーの96%を海外から輸入しており、原子力を除くエネルギー自給率はわずか4%しかありません。

このようなエネルギー依存度を低減し、二酸化炭素排出量の削減にもつながるエネルギー資源である風力や太陽光、水力、地熱などの自然エネルギーへのシフトが推進されています。

なかでも水力発電は100年以上の開発の歴史を持ち、純国産のエネルギーとして近代化や経済発展に重要な役割を果たしてきました。しかし、国内にある経済性に優れた水力発電の候補地はすでに開発しつくされています。また、大規模開発は自然環境破壊や歴史文化の消滅につながるとの意識が高まっている現在、大規模な水力開発は困難になってきています。

他方、ダムなどの大規模開発を伴わず、古くから地域内の水資源を利用して電力をまかなってきた小水力発電が、再生可能エネルギーとして見直されています。古くて新しいエネルギー、小水力発電の動向と可能性についてご紹介しましょう。


小水力発電とは

水力発電は、水の流れる落差(高さ)と水量を利用して水車(タービン)を回し、電気を起こすしくみです。世界的には10,000kW以下を小水力と呼び、日本でも、電力業界やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のガイドブック等では、10,000kW以下を小水力と分類してきました。

経済産業省による中小水力発電開発費補助事業の対象事業では、出力30,000kW以下の水力発電を中小水力発電と定義しています。日本の新エネルギー法やRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)では、1,000kw以下を小水力発電としています。

小水力発電とは、河川の水をダムで堰き止めて貯水・調整するのではなく、一般河川、農業用水、砂防ダム、上水道などに流れる水のエネルギーをそのまま利用するものを指します。IEA(国際エネルギー機関)の水力実施協定には、小水力の定義は特になく、ダムなどの大規模開発などを伴わない環境に配慮したものを小水力として扱っています。

小水力発電は他の自然エネルギーに比べて、昼夜、年間を通じて安定した運転が可能、設備利用率が高い(太陽光発電の5~8倍)、出力変動が少ない、経済性が高い、包蔵量が多いといった利点がある反面、落差と流量があるところに設置地点が限られる、豊水期と渇水期の水量変化により発電量が変動する、水利権等の水の使用をめぐる利害関係がある、法的手続きの煩雑さなどの課題があります。


小水力発電の可能性

日本では政府によって、1910年から1986年まで、5次にわたり全国の河川を対象に水力発電に適した場所の全国的な調査(包蔵水力調査)が実施され、開発可能な有望地点の把握とダム開発が進められてきました。包蔵水力とは、発電水力調査により明らかとなった日本の水資源のうち、技術的・経済的に利用可能な水力エネルギー量のことをいい、「既開発(これまでに開発された水力エネルギー)」「工事中」「未開発(今後の開発が有望な水力エネルギー)」の3つに区分されています。

資源エネルギー庁による第5次包蔵水力調査によると、包蔵水力の総量は、出力で約3275万kW、年間可能発電電力量は約1342億kWhです。1,000kW未満の小水力をみると、包蔵水力全体では、853地点、45万kWの賦存量で、そのうち、未開発のものは371地点で出力24万kWあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/hydraulic/data/stock/top5.html

一方、環境省が2009年度に実施した「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」では、理論的に推計できるエネルギー資源量のうち、種々の制約要因(土地用途、利用技術など)を考慮しないものを「賦存量」と定義し、国土地理院による水路線形データ、国や各都道府県の集水路流量データ等を用いて、中小水力発電の賦存量を推計しています。それによると全国で、1,000kW未満の小水力の賦存量は、22,474地点、629万kWとなり、第5次包蔵水力調査とは大きく異なる結果となっています。
http://www.env.go.jp/earth/report/h22-02/gaiyo.pdf
http://www.env.go.jp/earth/report/h22-02/05-chpt5.pdf

全国小水力利用推進協議会事務局長の中島大(なかじま まさる)氏は、上記推計値から、経済性を考慮した約500万kW程度が小水力発電の賦存量であろうと想定し、「日本の年間消費電力量の3%をまかなえる量だ」と言います。
http://j-water.jp/conference/


小水力発電の課題

石油依存度の軽減とエネルギー自給率の向上、地球温暖化防止への貢献など、今後の小水力発電の積極的な開発が望まれていますが、解決すべき課題も少なくありません。

中島氏は、「水利権や煩雑すぎる法的手続きなどの課題もあるが、最大の課題は、『地域の電力を地域でまかなうために、どのように主体を形成していくのか』ということだ」と指摘します。かつては地域で維持・管理をしていた小水力発電所を、もう一度地域の人の手に取り戻すためには、地方自治体、土地改良区、NPO、企業、個人など、電力会社ではない人たちが事業主体となっていくしくみをモデル化することが必要だというのです。

2005年10月、山梨県都留市の市役所敷地内に1台の小水力発電所が誕生しました。ここではかつて小さな発電所が稼働し、地域に電力を供給していました。時代の要請で廃止された小水力発電所が、ふたたび新しい使命を帯びて動き出したひとつの事例です。

JFS/Small Hydropower Brings Possibility of Locally Generated Electricity for Local Consumption
元気くん1号
Copyright 全国小水力利用推進協議会


この復活した家中川(かちゅうがわ)小水力市民発電所は、費用の一部を都留市が市民からの出資を募集して建設されたもので、1,700万円のミニ公募債に約4倍の応募がありました。通称「元気くん1号」と呼ばれ、最大出力20kW、常時8.9kWで発電し、その電力は市役所庁舎に送られて活用されています。都留市では、小水力発電をまちづくりの一環と位置づけ、今後も市民とともに省エネルギーや地球温暖化防止に取り組んでいく予定です。

このように小水力発電を普及させようという動きが、日本の各地で始まろうとしています。自然エネルギーを活用したエネルギーの地産地消が、市民の参画によって推進される動きに今後も注目していきたいと思います。

(スタッフライター 八木和美)

JFS記事:富山県、農業用水路を活用した県営の小水力発電所建設へ
http://www.japanfs.org/ja/pages/024806.html

コミュニティ・ファンドを活用した環境保全活動を促進
http://www.japanfs.org/ja/pages/024761.html

76の市町村 自然エネルギーで民生用電力需要をまかなう
http://www.japanfs.org/ja/pages/024621.html

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