ニュースレター

2009年09月22日

 

持続可能な原料調達で、世界トップ5の製紙企業グループを目指す ~ 日本製紙グループ

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JFS ニュースレター No.81 (2009年5月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第79回
http://www.nipponpapergroup.com/

日本製紙グループは、「安定して良い業績をあげる会社」、「顧客に信頼される会社」、「従業員が夢と希望を持てる会社」、「品格のある会社」という4つの企業像を、目指すべき姿として経営ビジョンに掲げる、国内そしてアジアにおける製紙業界のリーディングカンパニーです。

しかし、2007年に一部の工場において、ばい煙の排出基準超過と、データの不正な取り扱いが明らかになり、2008年には、グループ内の3社が製造・販売していた一部の再生紙製品において、古紙パルプ配合率が定められていたものと異なることが判明しました。

同グループは信頼回復を最大の経営課題とし、古紙パルプ配合率などの不当表示についての経緯と原因・再発防止策、また、ばい煙問題の再発防止策の実施状況を「サステナビリティ・レポート2008」などで報告。自社製品が環境や社会に与える影響をあらためて考えることで、社内の意識変革を目指し、環境やサステナビリティへの取り組みを加速しようとしています。

特に重視しているのは、地球温暖化防止への取り組み、持続的な原料調達、古紙利用の推進、社会との共生を目指した貢献活動といった、ステークホルダーが高い関心を示す4項目についてです。

そうした取り組みの中でも、今回は持続的な原料調達について、日本製紙グループ本社CSR本部CSR部長代理の伊藤浩己さん、日本製紙株式会社原材料本部森林資源部主席調査役の松本哲生さんにお話を伺いました。

グリーンアクションプラン2010

日本製紙グループでは、生物多様性への配慮を基本とし、長期的な視野で地球規模の環境保全に取り組み、循環型社会の形成に貢献するという理念のもと、2001年に「日本製紙グループ環境憲章」を制定しました(2007年改定)。

憲章の中では大きく6つの基本方針を定め、それを推進する環境行動計画「グリーンアクションプラン2010」を制定し取り組んでいます。製紙事業の持続可能性は、紙・パルプの主要原料である木質資源を持続的に調達できる体制・仕組みづくりが鍵であり、憲章にある「森林資源の保護育成」という方針のもと、海外植林事業「Tree Farm構想」の推進、国内外の自社林の森林認証取得、輸入広葉樹チップの「認証材+植林木」比率を100%にする、先進技術の開発による材木育成の推進、という4つのプランを打ち出しています。

2015年までに20万ヘクタールの森林を育成

1992年から、持続可能な広葉樹チップ資源造成のための海外植林事業「Tree Farm構想」をスタートさせている同グループ。この構想は、木を育てて毎年の成長量分のみを収穫・活用し、その繰り返しによって持続可能な原料調達を実現するプロジェクトです。

当初は、2008年までに10万ヘクタールの植林地を造成することが目標でしたが、2年前倒しで目標を達成。現在は、2015年までに20万ヘクタール以上の植林地造成を目指しています。

海外での植林事業で最も重要なことは、「地域社会との共存共栄」だと松本さんは言います。「単に植林すればいいのではありません。その地域の生態系、地域への社会的貢献、そして労働問題などをトータルに考えることで、事業が真に円滑に進められます」(松本さん)

チリでの植林事業では、インディオの伝統文化を尊重しながらユーカリの植林を進めています。南アフリカにおいては、農村部の経済発展が政府の重要テーマであることもあり、農村住民への雇用機会の提供はもちろん、地域社会への貢献として間伐材を薪として提供したり、貯水タンクを設置し、飲料水の供給なども行っています。

そして、関連会社3社が植林事業を展開している世界有数の森林資源国・オーストラリアでは、厳格な森林管理規制・協定に則って、自然環境や生態系の保全に配慮した事業を行っています。

森林の減少が環境に与える影響が指摘され始めて以降、タスマニアの森林資源の利用と保護について、オーストラリア連邦政府、タスマニア州政府と一部の環境NGOの間で長年にわたって活発な議論が続いています。そうした背景もあり、「生物多様性への取り組みは徹底しており、森林管理は世界広しといえども、オーストラリアほど厳格に行われている国はない」と、伊藤さんも松本さんも口を揃えます。

同グループも、2008年5月に、日本国内の製紙会社とタスマニア州政府、環境NGOとの3者会談を行うなど、タスマニアの森林問題について、相互理解を深める努力を続けています。

地域社会との共存共栄の点では、持続可能な植林事業を目指す取り組みとして、西オーストラリアのバンバリーにおける、「バンバリー トゥリーファーム プロジェクト」があります。樹木とほかの農作物や家畜を、同じ土地で同時に栽培・育成する農法「アグロフォレストリー」の導入や、西オーストラリア南西部を流れるブラックウッド川の水質調査を長年にわたって行い、地元の小・中学校に、調査活動を環境教育プログラムとして提供しています。

「林業は土地に根差すもの。国の内外を問わず、地域社会に応じた課題に取り組み、地域とともに発展していく高い意識で取り組むことが必要です」(松本さん)

持続可能な森林経営に向けて

同グループでは、森林資源の保護育成のためのプランとして、ほかにも、2008年度までに輸入広葉樹チップに占める「植林木+認証材」の比率を100%にすること、同じく2008年度中に国内外の全ての自社林において森林認証を取得することに取り組んできました。

「コピー用紙など、一般的な紙製品の主原料は広葉樹チップです。輸入広葉樹の種類別構成比の推移を見ても、自社植林木(Tree Farm材)より、サプライヤーからの購入植林木の割合が大きく、今後もそのまま推移すると予測して、輸入木材チップのトレーサビリティの充実を図っています」(伊藤さん)「サプライヤーが関連法規を遵守していることはもちろんですが、各国の法律内容を確認し、当社の定めるCSR項目をクリアしていることも確認しています」(松本さん)

天然林を原料とする海外の広葉樹サプライヤーに対し、第三者の目で客観的に評価を得る森林認証の取得を2008年度内に、という厳しい要求を出した同グループは、自らにも「2008年までに国内外全ての自社林において森林認証を取得する」という高いハードルを課しました。

国内の自社林については、日本独自の森林認証制度であるSGEC認証を2007年までに取得。海外の自社林においては、環境マネジメントの体制・仕組みを認証するシステム認証であるISO14001と、森林そのものの質・現状を評価するパフォーマンス認証であるPEFCまたはFSCの取得を推進し、公約どおり2008年度内に取得が完了しました。

地の利を生かした国内工場の取り組み

原材料全体で見ると、輸入が約7割、国内調達が約3割という状況の中、針葉樹に限っては、主に製材所などで発生する廃材を利用し、約6割を国内で調達しているといいます。中でも、北海道の旭川工場、宮城の岩沼工場で扱う木材は、ほぼ100%を国内で調達しています。

「八代工場は、紙にするのが難しい杉材の使用ではトップクラスです。九州は杉の産地。その地の利を生かし、古紙パルプと杉を主とする新聞用紙の生産を行っています」(伊藤さん)

国内の工場全体としては、バイオマスボイラーの導入に代表される燃料転換、省エネルギーの推進による化石エネルギー使用の削減に取り組み、グリーンアクションプラン2010の目標達成に向けて、CO2排出量の削減に努めています。

目標は、1990年度比で、製品あたりの化石エネルギー起源CO2排出原単位を16%、化石エネルギー原単位を20%削減すること。「木質チップからパルプをつくる際に副生される廃液(黒液)を燃料として使用し、全エネルギー使用量の3分の1をまかなっています。非化石燃料の占める割合は4割ほどになっていますが、これをいかに増やすかが課題です。試行錯誤しながら、持続可能な地球環境、企業活動のために取り組み、2015年には世界の紙パルプ企業でトップ5にランクされる、真に社会的価値のある企業グループとなることを目指しています」(伊藤さん)


(スタッフライター 青豆礼子)

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