ニュースレター

2009年08月25日

 

LEDプリンタで海外展開、さらなる地球環境保全に取り組む ~ 株式会社沖データ

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JFS ニュースレター No.80 (2009年4月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第78回
http://www.okidata.co.jp/

私たちの暮らしの中で、今やパソコンとともに身近な存在となったプリンタ。だれもが家庭で気軽に印刷ができるという時代になりましたが、歴史を振り返れば、節目ごとに技術革新を重ねてきた長い道のりがあります。オフィス向け、プロフェッショナル向けに、プリンタの開発、生産、販売を行っている株式会社沖データ(以下、OKIデータ)は、前身事業と合わせて、まさにこの歴史とともに歩んできた企業と言ってよいでしょう。現在は120カ国で事業を展開する、グローバル企業ですが、その技術の足跡をたどると、古く明治時代にまで遡るのです。

1881年(明治14年)、親会社の沖電気工業の前身にあたる明工舎創立直後に、通信手段の補助装置として、モールス信号を記録に残すため、紙テープの上に墨で印刷(打点)したことがスタートでした。その後印刷電信機として発達し、1932年の簡易印刷電信機の開発を経て、1953年にはタイプライタ式の本格的なプリンタを発売しました。1980年代、パソコンの出現とともに、パソコン向けのドットプリンタを開発し、アメリカ市場で爆発的な普及をとげたのです。沖電気の一部門から、プリンタ専門企業、OKIデータとして分社独立したのは1994年ですが、OKIグループ全体としては、その時点ですでにイギリスやタイにも工場を持つなど、海外シェアは広がっていました。現在は、日本、イギリス、アメリカにヘッドオフィスを構え、36カ国、64カ所に拠点を置いています。

世界初のLEDプリンタで高速、高精細性、省エネを実現

同社では、1983年に世界初のLEDプリンタを発売しました。光をつくりだす半導体であるLED(発光ダイオード)は、消費電力が少なくて済むため、地球温暖化防止に役立つとして、最近は照明器具でも注目されていますが、同社では早い時期からこの技術を取り入れていました。プリンタのヘッド部にLED技術を取り入れた「デジタルLED方式」について、経営戦略室広報部長の田中和宏さんは、「省エネになっているばかりでなく、細かい字がはっきり印字でき、カラー領域も広く、色もきれいということから、印刷やデザイン専門の方から大変評判がいいのです」と話しています。また、ヘッドそのものが小さく、プリンタ全体を小型化、かつ機構もシンプルで解体が容易になるため、リサイクル性にも優れています。

また、2006年には半導体素材を薄膜化し、異種材料間で接合する「エピフィルムボンディング」技術を実用化し、新型LEDヘッドを開発しました。同じ電流を供給した場合、新型LEDの方が光量は大きく、従来LEDに比べて2倍近い効率を得ることができるようになり、また大幅な小型化も実現したのです。世界初の技術の実用化、量産化の成功ということで、機械工業技術の発展に寄与した企業に贈られる、第5回新機械振興賞「経済産業大臣賞」を2007年に受賞しました。

CO2排出削減にフォーカスした環境目標

この4月から、OKIデータでは、経営戦略室の中に新たに地球環境部を新設しました。「環境といっても、これまでの有害化学物質管理やISO14001環境マネジメントシステムに加え、地球温暖化対策が急務とされる時代です」と話すのは、経営戦略室地球環境部長の加藤靖幸 さん。そこで今年度の環境方針として挙げているのは、1)CO2排出削減にフォーカスした環境目標、2)環境配慮型商品の創出、3)リサイクル方針、4)環境NGOとの協業という4項目です。

同社が現状把握している事業活動全体から出るCO2総排出量は、全世界で5万3000トン 。その中で工場、オフィスからの排出が3万2500トンで、製品を工場から各地へ運ぶ輸送工程で2万500トン。そこで、まずは各事業所、オフィスの消費電力、ガスなどを対象として、OKIデータグループの総CO2排出量を2012年までに2007年比で6%削減するという目標を掲げました。年々均等に削減されれば、2050年に50%の削減という洞爺湖サミットで示された目標値とも合致します。

具体的な対策として、米国拠点の倉庫の電力消費量の削減や、欧州全拠点の電力をグリーン電力に置き換えること、工場の消費電力を削減することなどを挙げています。実際イギリスでは、2005年に環境配慮型工場を建て、自然光の取り入れや外気の活用による空調の省エネで電力使用量を2008年には2004年度比で43%削減しています。今後の目標値6%の削減が達成できなかった場合には、植林によるCO2吸収や、排出量取引による相殺などの方法も考えられています。

環境配慮型商品のCO2排出に関しても、やはり2007年比で2012年までに6%の削減を目指します。高度な半導体技術、メカトロニクス技術、ソフトウェアの複合体であるプリンタですが、これまでも、使用時、待機時の省電力から消耗品素材まで、さまざまな省エネ技術が集約されてきました。前述したLED方式による省電力のほか、トナーの持つ溶解温度が高低二重構造になっている「小粒径カプセルトナー」の開発で、プリンタの高速化を実現してきた実績もあります。印刷速度と消費電力とは相関関係にあり、普通プリンタの印刷スピードを上げるためにはトナーを用紙に固着させる定着器の温度も上昇させなければならず、消費電力が増加します。しかし「小粒径カプセルトナー」によって、低温でのトナー定着を可能にし、圧倒的な低消費電力を実現したのです。

また、今後はプリンタの予備加熱をしない「クイックスタート方式」などを導入することにより、消費電力を4割下げることを目指しています。そして、2012年発売の代表的新機種のLCA評価における生涯CO2排出量を、2007年の代表機種比で6%削減することも目標にしています。

リサイクルの面では、日本全体の消耗品回収率は60%以上と高く、1997年から産業廃棄物対策をスタートした福島事業所では、事業所をあげた削減、再資源化の取り組みと、分別回収の徹底によって、2006年には再資源化率99.94%を達成しています。広く海外展開している同社では今後、法律や規則が異なる世界各地域の状況に合わせて、地域ごとのリサイクルシステムの展開が求められるでしょう。

幅広い環境貢献への取り組み

プリンタには欠かせない紙資源を大切にするためにも、同社では再生紙の開発や植林活動に力を入れています。1999年より、国際NGO・OISCAと協力して、世界17カ国で学校単位の植林活動「子供の森プロジェクト」を展開してきました。また、イギリスとタイの現地社員による植林活動は、カーボンオフセットの効果を目指しています。2008年9月にはタイ南部の沿岸地帯でマングローブを、同年10月にはタイ北部でチークを植林し、それぞれ250人以上の社員が参加しました。また、マレーシアでは、2008年11月より、新しいLEDプリンタの発売に合わせて、プリンタ1台の販売につき1本を植林する「ワンプリンタ、ワンツリー」のキャンペーンを展開し、2009年1月に、マレーシア景観専門委員会主催の植林活動に参加する形で、103本植林しました。

国内では、2008年12月に福島事業所で、CO2排出権つきユニフォームを採用したことで話題になりました。これは丸紅株式会社が手がけるプロジェクトのクリーン開発メカニズム(CDM)によって調達されるクレジットで、福島ミドリ株式会社から購入したもの。1着5キロ分のCO2排出権が組み込まれ、同事業所では、492着のユニフォームによって約2.5トンのCO2排出権を獲得しました。

このように国内外で、環境に関してあらゆる方向から取り組みを行ってきたOKIデータ。これまでも研究、開発から販売、リサイクルまでのすべての段階で徹底した環境保全活動を進めてきましたが、今年度からは地球温暖化対策を大きなターゲットとして、新しいアプローチを試みます。いち早くLEDプリンタなどの開発を行い、ワールドワイドに展開してきたOKIデータのさらなる技術革新が期待されるところです。

(スタッフライター 大野多恵子)

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