ニュースレター

2008年05月01日

 

省エネ製品で国内外のCO2排出削減に取り組む - ダイキン工業株式会社

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JFS ニュースレター No.68 (2008年4月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第71回
http://www.daikin.co.jp/

日本の技術力で海外の暮らしをエコ

欧州の暖房システムが今、大きく変わろうとしています。石油や天然ガスを直接燃やす従来の「燃焼式」に代わり、外気中の熱をくみあげ室内に移動する「ヒートポンプ技術」を用いた暖房機が急速に普及しているのです。ヒートポンプ技術を用いれば、わずかな電力で多くの熱を利用することができるため、例えば天然ガスと比べるとCO2排出を約半分と大幅に削減でき、地球温暖化防止に大きく貢献できるシステムとして注目を集めています。

このヒートポンプ式の暖房システムの普及を進めているのが、大阪に本社を構える空調機器とフッ素化学メーカーのダイキン工業を中心としたダイキングループです。空調機器とその冷媒であるフルオロカーボンガスの両方を生産する世界唯一のメーカーとして、最先端の省エネ技術を搭載した商品を開発・販売することで、国内外でのCO2排出削減に意欲的に取り組んでいます。

日本では、ヒートポンプ自体は目新しい仕組みではなく、冷暖房用のエアコンや冷蔵庫など、家庭用にも業務用にも、すでに広く用いられています。地球温暖化対策が急がれる中で、この技術が改めて注目を集めているのは、ここ数年の技術革新で、エネルギー効率が格段に高まってきたためです。

その背景には、1999年の「省エネ法改正」で導入された「トップランナー制度」があります。これは、現在販売されている機器のうち、省エネ性能が最も優れているものを指定し、その効率またはそれ以上のレベルをトップランナー基準として定め、機器ごとに定められた目標年度以降、製造事業者および輸入事業者に対して基準を遵守することを義務づける制度です。エアコンにもトップランナー基準が適用されたため、新技術の開発・導入が加速し、改正以前と比べると、わずか10年でエネルギー利用効率が2倍に向上しています。

日本で培ったこの高い技術力を欧州市場向けのラインナップにも生かそうと、ベルギーのダイキンヨーロッパ社では2006年、ヒートポンプ式住宅用温水暖房機「アルテルマ」を開発しました。氷点下の厳しい寒さのなかでも暖房や給湯ができ、北欧などの寒冷地でも安心して利用できる仕様になっています。「例えば冬の長い北欧では、冬から春まで暖房をつけっ放しにするそうです。その分、製品のエネルギー効率の差がCO2排出に大きな影響を与えます」と、CSR・地球環境センターの中川智子氏はアピールします。

欧州では従来「燃焼式」が多く、ヒートポンプ式には馴染みのない人がほとんどですが、エネルギー効率の高さなど、燃焼式と比べた省エネ効果をシミュレーションするなどして普及に努め、2007年の出荷は1万台を超え、多くの家庭で省エネ型の暖房システムが広まっています。

ユーザーと一体となった植林活動

省エネ製品で環境負荷を下げようというこうした取り組みは、2006年に策定したグループ全体の環境行動計画の一環でもあります。2006年から2010年までの5年間を見据えた「環境行動計画2010」では、地球温暖化防止対策に重点を置き、省エネ製品の開発・販売のほか、生産時の環境負荷削減や出荷・販売後のアフターフォローまでをも視野に入れています。

日本のルームエアコンの場合、外気温に応じた温度設定をこまめに調整するなど、製品の省エネ性能を最大限に発揮するには、ユーザーの使い方にも工夫が求められることが一般的です。そこでダイキン工業では、ユーザーの理解を促すため、省エネ運転が植林に結びつくというユニークな森林再生プロジェクトを開始しました。

昨年11月に日本で発売された家庭用ルームエアコンには、社内のアイデアコンテストで出た「エコポイント」システムが導入されています。一般的な「エコポイント」システムとは、省エネ製品の購入や公共交通機関の利用など環境に配慮した行動をすると「ポイント」が加算され、ポイント数により商品購入などに使えるシステムです。これを応用した同社のプロジェクトに参加すると、ユーザーが省エネ運転を行うごとにポイントがたまり、ポイントがたまるとリモコン画面の中で木が育っていきます。

さらにそのポイントが、インドネシア・ジャワ島北部でのグヌングデ・パングランゴ国立公園での地域住民主体による森林再生・保全活動に実際に結びつくという、ユーザー参加型の地球環境保全プロジェクトです。エアコン使用時のCO2排出を減らすと同時に、豊かな森林生態系を保全・再生し、地球温暖化対策にも貢献しようというねらいで、発売から1-2年で実際の植林が始められる見通しだといいます。
http://www.daikinaircon.com/eco/eco02.html

高い技術力による冷媒処理をめざす

空調機器メーカーとしてのダイキングループに特徴的な地球温暖化対策は、フルオロカーボン(フロン)ガス類の対策に力を入れている点です。エアコンなどの空調機器の冷媒に用いられていることもあり、グループ全体から排出される温室効果ガスの中で、フロンが8割以上(CO2換算)を占めます。そこで、機械部門では、空調機器などに充填する冷媒の漏れを極力なくすよう努め、フッ素化学製品を生産している化学部門では、生産工程から回収し適正に破壊処理するための設備の整備を整えています。その甲斐あって、昨年度のグループ全体の温室効果ガス排出量は281万トン(CO2換算)と、2001年度比で70%削減しています。

フロンが問題になるのは生産時だけではありません。温暖化係数の高いフロンは、適切な処理をされずに大気中に放出されると、膨大な温室効果があるため、廃棄時には非常に慎重な対応が求められます。現在、国内で廃棄される住宅用エアコンについては、2001年に施行された「家電リサイクル法」に基づき、冷媒の回収と素材・部材などの再資源化がメーカーの責任のもとに実施されています。しかし業務用エアコンに関しては、「フロン回収・破壊法」で規制はされているものの経済的な理由などで、すべての物件で適正な回収破壊が徹底されているとはいえず、日本全体としては業務用エアコンの回収率は必ずしも高くない状況です。

こうした中で、ダイキングループは、再資源化・廃棄処理とともに冷媒の回収破壊を行える処理業者と提携し、業務用エアコンの冷媒を確実に回収破壊できる仕組みの構築に取り組んでいます。このシステムは、2004年度に大阪・中京・新潟地区で、2005年度からは九州・関東・中国地区でも稼動しています。

さらに海外では、たとえ回収しても、適切な破壊処理を行える施設がないことがネックになっています。廃棄物を国境を越えて日本で処理するというわけにはいきません。たとえば中国では省をまたいで廃棄物を移動することも禁止されているため、適切な処理をするには各地に破壊施設をつくらなければなりません。この問題をどうするかが、回収・破壊処理におけるもっとも大きな課題だといいます。

中川氏は、「一企業で取り組めることかわかりませんが、空調機器と冷媒を両方生産している当社だからこそ、グローバルでナンバー1をめざす気概で何らかの取り組みを始めたい」と、今後の可能性を探っているところです。


(スタッフライター 小島和子)

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