ニュースレター

2008年04月01日

 

北海道の豊かな環境を未来の子どもたちに引き継ぐために - 北海道

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.67 (2008年3月号)
シリーズ:地方自治体の取り組み 第18回
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/

今年7月に、北海道洞爺湖で主要国首脳会議(G8サミット)が開催されます。今回の重要なテーマとして気候変動問題が上げられていますが、そのサミットが開催される北海道が、このほどJFSの新しい法人会員として加わってくださいました。サミットを控え、環境技術の情報発信や環境宣言も準備している北海道。その地がどんなところか、環境に関する取り組みも含めて、ご紹介しましょう。

洞爺湖がある北海道は、日本列島の中でも最北端に位置する、四方を太平洋、日本海、オホーツク海に囲まれた島です。洞爺湖、阿寒湖などの美しい天然湖沼があるほか、大雪山、日高山系に代表される雄大な山岳、ラムサール条約にも登録している釧路やサロベツなどの広大な湿原、積丹半島などの海蝕崖など、さまざまな変化に富んだ自然景観で形成されています。知床半島は、2005年に国内で3カ所目の世界自然遺産に登録されました。

また、北海道は日本の他の地域とは異なる北方系の豊かな生物相が形成されており、大型哺乳類のヒグマやエゾシカをはじめ、国内では北海道だけで見られるタンチョウやシマフクロウなどの希少な鳥類が生息するなど、多様な自然に恵まれています。この豊かな自然を守り、将来へ引き継いでいかなければなりません。そのために、北海道では何が行われているのでしょうか。

北の未来を拓くビジョンと戦略

北海道では、これまでの総合計画を見直し、2007年12月に「新・北海道総合計画-北の未来を拓くビジョンと戦略-」(通称:ほっかいどう未来創造プラン)を策定しました。この計画は、今後おおむね10年間の道政の基本的な方向を総合的に示すもので、道民と道が共に考え、共に行動するための指針となるものです。

また、京都議定書の発効など近年の社会情勢変化などを踏まえ、2008年3月には「北海道環境基本計画」も策定しました。この基本計画では「循環と共生を基調とする環境負荷の少ない持続可能な北海道」という将来像(長期目標)を掲げるとともに、「地域から取り組む地球環境の保全」、「北海道らしい循環型社会の形成」、「自然との共生を基本とした環境の保全と創造」、「安全・安心な地域環境の確保」の4つの分野別施策と、各分野に共通する「環境に配慮した地域づくり」などの施策を展開することとしています。

さらに、特に重点的に取り組む事項として、バイオエタノールなど輸送用エコ燃料の普及拡大などの「北海道の特性を生かした地球温暖化対策の推進」や、バイオマスの利活用などの「地域資源を活用した循環型社会の形成」のほか、「北海道らしい自然共生社会の実現」、「流域全体を捉えた健全な水循環の確保」を掲げて取り組みを進めることとしています。

地球温暖化対策では、2000年に策定した「北海道地球温暖化防止計画」において、2010年度における温室効果ガスの差引排出量(森林の吸収量を差し引いた排出量)を、基準年である1990年度に比べて9.2%削減するなど、高い目標を掲げています。ただ、残念ながら、2005年に道が実施した温室効果ガス排出量調査では、2003年度の排出量は増加傾向にあり、基準年度である1990年度に比べ総排出量は14.2%増、森林の吸収量を差し引いた差引排出量で2.9%の増加となっています。

バイオマスの利活用の取り組み

このような温室効果ガスの排出量増加の傾向に歯止めをかけるため、有効な対策として北海道が積極的に取り組んでいるものに、バイオマスの利活用があります。http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/jss/recycle_2/biomass/biomass_top.htm

北海道は日本国内でも他県に比べて農林水産業が盛んです。中でも生産額の約45%が畜産で、生乳生産量は全国の約40%を占めており、道内には家畜ふん尿や有機性汚泥などのバイオマス資源が多種多量に存在しています。道では、この資源を有効活用するために2007年に「北海道バイオマスネットワーク会議」を設立し、先進事例や試験研究の情報収集を行ったり、目的・種類などに応じて事業化も視野に入れた実用化検討会を設置するなど、それぞれの地域特性を生かした取り組みの検討を進めてきました。

バイオエタノールを始めとするバイオ燃料の導入は、地球温暖化防止や循環型社会の形成に寄与するとともに、新たな環境ビジネスの創出や地域経済の活性化など、幅広い効果が期待されています。

しかし、その普及拡大には、低コストの製造技術を確立するとともに、生産から流通に至る種々の段階における公的支援措置の導入が不可欠です。このため道では、2004年から国・市町村・企業・研究機関などが連携して、十勝地域などで先行的に行われてきた家畜排泄物や間伐材を利用した取り組みを支援するとともに、国に対し、原料の安定供給やバイオエタノールを加えた混合ガソリンの減免措置導入などについて要望してきました。

こうした中、2007年には、清水町と苫小牧市におけるバイオエタノール製造プラント建設に向けた取り組みもスタートしています。また、道立試験場が大学や民間企業と共同して行う新たなバイオエタノール製造技術に関する研究開発が開始されるなど、北海道におけるバイオ燃料の製造・供給拠点の形成に向けた取り組みは着実に推進されています。

「北海道の環境宣言」と、これから

7月に洞爺湖サミットを迎えるにあたり、道では「北海道洞爺湖サミット・環境リンケージプログラム」を独自に作成し、「環境サミットの気運醸成」「環境技術の情報発信」「北海道の環境のアピール」を3本柱に、今、道内の環境関連施策の加速・充実を目指した取り組みを推進しているところです。

道では、このサミットを契機として"北海道としての環境宣言"の発信を予定しています。この環境宣言は、恵まれた北海道の自然環境を守り、次世代に引き継いでいくため、環境保全の大切さや、将来のあるべき環境の姿を明らかにするとともに、北海道の自然環境のすばらしさを国内外に向けてアピールするものです。今後、この宣言をもとに、道民や事業者の環境意識の向上と環境に配慮した行動の促進を図ることとしています。

また、サミットに向けた取り組みとして、2月から「北海道洞爺湖サミット・おもてなしクリーンアップ運動」を行っているほか、6月には「環境総合展2008」も開催し、国内外に広く北海道の環境や、環境に関する地元企業や市民団体の先進的な取り組みを紹介する予定です。

かつて、北海道では石炭が多く産出され、多くの労働者や開拓者が移り住んでいました。でも、今では炭鉱は閉鎖され、人口にも偏りが見られ、過疎が心配される村も多く見られます。しかし一方で、北海道には他府県にはない豊かな生態系を含む自然や、自然とのかかわりの中で育まれてきたアイヌ民族の豊かな知恵が多く残されています。

今、ヒグマやエゾシカなどの野生生物との共生についても、これまでの農業に対する被害としてだけ考えるのではなく、北海道の魅力ある天然資源のひとつとしてとらえるなど、積極的な有効利用の模索が始まりつつあります。サミットを契機とした北海道の新たな取り組みを、これからも大いに期待したいと思います。

(スタッフライター 三枝信子)

English  

 


 

このページの先頭へ