ニュースレター

2008年04月01日

 

持続可能性な社会の実現に向かう手段としてのCSR - 株式会社クレアン

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JFS ニュースレター No.67 (2008年3月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第70回
http://cre-en.jp/

今日、世界というフィールドで縦横無尽に活動する企業の中には、一国のGDPを上回る売上がある場合もあり、企業が国家を凌ぐ影響力を持つ存在となっていることは明らかです。それに伴い、CSR(企業の社会的責任)が問われるようになってきました。それに応えるひとつのツールがCSRレポートであり、今回紹介するクレアンは、そうした企業の報告書制作を通して企業のCSR活動をサポートしています。

日本におけるCSRの広がりについて見ると、1990年代後半から始まった「環境マネジメント規格ISO14001」の発行を受け、多くの企業が環境経営を加速させました。それと同時期に、欧米諸国のSRI(社会的責任投資)調査機関から情報公開を求められるようになり、環境とSRIへの取り組みの中で、企業担当者の関心がCSRに向かうようになりました。

それに拍車をかけたのが、2000年以降頻発した企業の不祥事で、産業界ばかりでなく一般社会においても企業の責任を求める声が高まり、2003年は「日本におけるCSR元年」と言われたほどです。

そうしたことを背景に、企業はこぞってCSRレポートを発行するようになりました。「ただ実際には、CSRで何をしたらいいのかがわからないまま、ただ流れにまかせて取り組み始めた企業が大半だったと思います。企業の不祥事が明るみになる中で、当時はCSR=コンプライアンスという認識が主流でした」と、クレアンCSRコンサルティング部レポーティング・コンサルティング課課長の安藤正行さんは当時を振り返ります。

コンプライアンスから本業へ、CSRの転換期

そうした流れの中で、企業は「行動規範」を盛んにつくるようになりました。しかし、現状の問題点を指摘し、「守りなさい」という押し付けだけのコンプライアンスCSRでは、企業の活性化が図れないという現実に突き当たります。そうした中、本気でCSRを考えるようになった一部の企業の中から、本業においてCSRに取り組もうとする動きが生まれてきました。

クレアンは、「CSRとは、サステナビリティという目的を達成するための手段」と明示しています。企業が目指すサステナビリティとは、自社だけの持続可能性ではなく、地球環境や社会が持続可能であるという前提がなければ成立しないということに気づくところから始まります。その視点に立って、はじめて本業でCSRに取り組むために、すべきことが何か、が明確になると言います。

「企業には、将来のビジョンと方向性を持ち、かつそこに向けて現実的な一歩を踏み出せる施策までをパッケージとした提案でなければ聞いていただけません。なぜなら、企業にとってCSRの中身を公表することは、『いつまでに何をどうする』という宣言であり、相当の覚悟が必要だからです」(安藤さん)

エネルギー関連事業など、サステナビリティに直結するような分野の場合は、本業でどうCSRを果たすかは比較的明確にしやすいでしょう。しかし、社会との関係性において自社の事業をサステナビリティと結びつけ難い企業もあります。

「本業でCSRを行おうとしたとき、着手点を見いだせない企業も多くあります。CSRレポートを作成する私たちは、その過程で企業の方々と一緒になって、どれだけディスカッションできるか、に重点をおいて制作に当たっています。単なるレポートならば、その年の事業概要と各種データなどの原稿をいただけば作れてしまうもの。私たちがかかわることの意味は、企業の方々とそこで真剣にディスカッションし、地に足をつけ、先を見通した『サステナビリティを実現するためのCSRの達成目標』をつくることにあると考えています」(安藤さん)

「有言実行」--クレアンの取り組み

日本では、クレアンのようなCSRレポート制作を業務とする企業は少なくありません。そうした中で、クレアンが順調に業績を伸ばしている理由は、表面的な報告書ではなく、コンサルティングとレポーティングの両者を一緒に提供できるところにあります。

「サステナビリティに向けた、企業のCSR推進をお手伝いしているのが私たちです。企業に実行を求める以上、私たちも一企業として、クライアントをはじめとしたすべてのステークホルダーに対して、サステナビリティレポートでもある当社ホームページを中心にCSR活動報告をしています」(安藤さん)

クレアンは、事業活動を通じて2020年にサステナブルな社会を実現する、という「2020年ビジョン」を策定しました。その際、社員が各自課題に取り組みレポートにまとめ、かつクライアントのニーズを引き出す際に用いる、さまざまなコミュニケーションの手法を取り入れながら社内ワークショップを行っています。「私たちは輝く笑顔があふれる地球の未来を創造します」という企業理念も、そうした取り組みの中で創り出されたものだと言います。

また、「CSR推進会議」を社内で組織し、2カ月に一度のペースで議論を重ねながら中小企業のCSRの進め方のモデル構築にも取り組んでいます。約40人の社員のほぼ全員が7つの分科会(本業におけるCSR、リスクマネジメント・コンプライアンス、品質、人材開発、ワークスタイル、環境、企業市民)に分かれて参加しています。

「4月には、クライアントさん、CSR有識者の方をお招きして、第2回ステークホルダーダイアローグを開催する予定です。そこでいただいた当社に対してのポジティブ、ネガティブ、両方の意見をホームページにて公開していきます。企業に提案していることは自分たちもやる。有言実行、それが当社の姿勢です」。(安藤さん)

思いを行動へ。その「当たり前」がCSRを推進させる鍵

7月のG8洞爺湖サミットに向けて、5月に神戸で開催されるG8環境大臣会合の関連事業として開催される「子ども環境サミット in KOBE」をきっかけとして、会場にほど近い六甲アイランドをエコ・アイランドにするムーブメントをつくろうとしているクレアン。「サステナブルな都市づくり関連ビジネス」をビジョンに掲げる同社にとって、地域と一体となった取り組みが実現することは、事業目標の実現とモデル構築につながると期待されます。

さらにクレアンでは、脱炭素社会への転換が明確な目標となる枠組みを想定し、事業戦略を練る企業への材料提供という目的で、昨年夏「次期気候変動枠組みシナリオ」を専門家と共に完成させました。これによって、クレアンと関連会社のCSR経営研究所は、経営層と社内要所への啓発、枠組みに対応するための構築支援、事業戦略策定支援を行うとしています。

「ただ、日本の企業の場合、基本的に、国による規制ができ、他社との足並みが揃ってから初めて動くというスタンスなんですね。このシナリオは、危機感を持って未来を見据えている人にとっては、ほぼそうなるだろうと予測されるものです。そのとき、すでにルールの決められた不利な状態で取り組むより、今、先手を打って出る方が戦略的に正しいと思うのですが...」と、安藤さん。

日本企業においては、「本業でのCSR」についての議論が熟していない点や、なかなか先陣を切ろうとしない横並び意識もまだまだ色濃いようですが、そうした企業を動かしていくのが、クレアンの役割でもあります。

「自社のCSRを考えるに当たっては、社内で部門横断的なワークショップを行う企業もあります。大企業の場合、配属された部署が違えば、同期といっても何年、何十年と会わない場合もあります。CSRのワークショップで再会し、1つの目的に向かって、部署も仕事も違う人たちとCSRを推進していく核になって動きながら、自分たちの会社のことを考え行動する。そこに各自の主体性が生まれ、ひいては企業そのもののイノベーションとなって、目的の実現を推し進める原動力となります」(安藤さん)

何のためにCSRに取り組むのかを社長は繰り返し言い続ける、社員は現場で行動に結びつける、CSR担当者は司令塔そしてサポート役として活動を支える。社内の風通しの良しあしなど、企業の社風に関係なく、世の中に対して自分の会社の悪影響があるのであればなくし、いい影響を与えていけるよう、みんなで共有・協力していく。そうしたみんなの思いこそが、一時のブームに終わらない、本質的なCSR活動の展開へとつながっていくと、安藤さんは言います。

「これから先の10年、20年を見据えたとき、急速に経済拡大しているアジアでのCSR活動の趨勢が、世界のサステナビリティの行く末を決定的にするでしょう。その中で日本は、国も企業もイニシアティブをとる必要性に迫られます。経済的な発展を経験し、発展によって得たもの、失ったものを知る日本は、アジアの国々に同じ過ちをさせてはなりません。まさにバックキャスティング。将来を見据えて、国も企業も、今できることを今やるかやらないか、そこに世界の未来はかかっています」。(安藤さん)


(スタッフライター 青豆礼子)

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