ニュースレター

2007年10月01日

 

ごみの減量から始める地球温暖化対策 - 宮城県仙台市

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JFS ニュースレター No.61 (2007年9月号)
シリーズ:地方自治体の取り組み 第17回

地球温暖化防止のために私たちにできること

日本の夏の最高気温が74年ぶりに更新され、私たちは地球温暖化の影響を感じずにはいられなくなっています。地球温暖化は止めたいけれど、あまりにも問題が大きすぎて、一体どうしたらいいのか、と途方にくれている人もいるかもしれません。しかし、地球温暖化対策は、私たち一人ひとりが毎日の暮らしを見直すことから始まるのです。

誰もができる最も身近な取り組みの一つは、ごみの減量です。私たちの社会は、大量生産・大量消費・大量廃棄を行うことで、多くの資源やエネルギーを無駄使いし、温室効果ガスを増加させています。このような無駄使いを減らすためには、一人ひとりがごみを出さない工夫をすることが必要です。

たとえば、日本では、年間約305億枚のレジ袋が使用され、そのほとんどが家庭ごみとして捨てられています。レジ袋1枚分の資源採取から最終処分までに、原油換算で13.8ミリリットルのエネルギーが使用されていると考えると、305億枚のレジ袋には、約42万キロリットルの原油が使用されていることになります。ところが、一人ひとりが買い物にマイバッグを持参してレジ袋を断れば、この分のエネルギーは無駄に消費されずに済むのです。

「仙台市におけるレジ袋の削減に向けた取り組みに関する協定」

このレジ袋削減の効果に期待を寄せているのが、人口100万人を有する東北地方最大の都市、宮城県仙台市です。2007年4月に施行された改正容器包装リサイクル法においても、レジ袋などの容器包装廃棄物を多く用いる小売事業者(スーパーなど)に排出抑制の促進が義務づけられましたが、仙台市は、2007年5月14日、市内に店舗を置く事業者および市民団体と、「仙台市におけるレジ袋の削減に向けた取り組みに関する協定」を締結しました。この協定は、容器包装廃棄物であるレジ袋の排出抑制を促進させるため、レジ袋の有償提供および消費者へのマイバッグ持参の呼びかけを行う事業者の取り組みを、市民団体および仙台市が支援するというものです。

この協定を締結した事業者(店舗)は、ジャスコ仙台幸町店、みやぎ生協幸町店、フレッシュフードモリヤ幸町店、ヨークベニマル大和町店の4事業者(4店舗)です。2007年6月1日より、これらの店舗では、レジ袋は1枚5円で有償提供され、マイバッグを持参した人には、スタンプによる割引サービスが提供されています。

8月9日に仙台市が発表した、実施後1ヶ月間のレジ袋辞退率の実績を見ると、ジャスコ仙台幸町店で78%、みやぎ生協幸町店で84%、フレッシュフードモリヤ幸町店で76%、ヨークベニマル大和町店で75%でした。有料化前の5月の実績を各店舗に問い合わせたところ、ジャスコ仙台幸町店で17%、みやぎ生協幸町店で43%、フレッシュフードモリヤ幸町店で8%(マイバッグ持参率)、ヨークベニマル大和町店で16%ということでしたので、効果は目に見えて現れています。
簡単そうに見えるレジ袋の有料化ですが、実はなかなか難しい問題を抱えています。単独の店舗でレジ袋を有料化すると、無料配布の店舗に顧客が流出する恐れがあるため、容器包装リサイクル法の改正にあたっては、レジ袋の有料化を法律で義務づけることが検討されました。しかし、憲法が保障する「営業の自由」に抵触するとして、法制化は見送られ、事業者の自主的取り組みに委ねられることになりました。ただし、業界団体で全国一律にレジ袋の価格を決めると、今度は独占禁止法に違反する可能性があります。

今回の取り組みが実現したのは、昨年11月に、仙台市の市民・事業者・行政が自由な立場で意見交換や情報交換を行う「レジ袋削減に関する懇談会」が設立されたことが大きな要因です。この懇談会は、レジ袋有料化の検討会ではなく、あくまでもレジ袋の排出抑制を協議する場として、今回の協定を締結した段階では、9つの市民団体と5つの事業者、3つの業界団体と仙台市および宮城県が加わり、活発な議論が交わされました。

そして、この懇談会に参加した4つの事業者が、レジ袋削減のための有効な手段としてレジ袋の有償提供に取り組むことを、それぞれの意思で表明したのです。なお、大手スーパーの西友は、この懇談会に参加しながらも、レジ袋の有償提供ではなく、レジ袋の辞退者に2円引きのサービスを提供することによって、レジ袋の削減を進めています。

100万人のごみ減量大作戦

仙台市がレジ袋削減を積極的に支援するのには、理由があります。仙台市は、1999年3月、資源循環型社会の構築に向けて、一般廃棄物処理基本計画の全面的な改定を行い、この計画を「100万人のごみ減量大作戦」と名づけました。これは、市民1人当たりが1日に出すごみの量を、1998年度の1,277gから2010年度には1,107gまで減らし、リサイクル率を1998年度の16.9%から2010年度には30%以上に向上させるという具体的な数値目標を定めたものです。
100万人のごみ減量大作戦(仙台市一般廃棄物処理基本計画)

目標を達成するためには、市民一人ひとりが、ごみとなるものを減らす(リデュース)、くり返し使う(リユース)、資源として再利用する(リサイクル)の3Rを実践することが欠かせません。これを市民に普及させるため、仙台市は、2001年度から"ワケルくん"というキャンペーン・キャラクターを起用しています。前髪を七・三に分け、「キチンと分けてますか?」と呼びかけるワケルくんは、思わぬ人気を呼び、市民がリサイクルに関心を持つきっかけとなりました。
ワケルくんの部屋 いままでの軌跡
http://www.gomi100.com/wakeru/archives01.php

ワケルくんの効果もあり、仙台市の2006年度の市民1人1日当たりのごみの排出量は、1998年度の1,277gよりも150g減少した1,127g、リサイクル率は1998年度の16.9%よりも10.1ポイント増加した27.0%となりました。しかし、仙台市が処理する一般廃棄物のうち、事業系一般廃棄物を除いた生活ごみの排出量を前年度と比較すると、ほぼ横ばいの状態が続いており、仙台市では、生活ごみの発生抑制に特に力を入れて取り組んでいます。レジ袋1枚の重さを9.9gと考えると、市民一人ひとりが毎日の買い物でレジ袋を断ることで、仙台市の生活ごみの排出量は減少に転じる可能性が大きいのです。

プロスポーツにおけるごみ減量の取り組み

仙台市でレジ袋の有料化が実施されたのは、ごみ減量に向けた市民活動が盛んであることも一因といえます。仙台市には、サッカーのベガルタ仙台、野球の東北楽天ゴールデンイーグルス、バスケットボールの仙台89ERSという3つのプロスポーツチームの本拠地が置かれていますが、これらのチームに対し、ごみ減量を始めとした環境問題の普及啓発活動を提案しているのが、財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)です。
財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)
http://www.melon.or.jp/melon/index.htm

スポーツイベントは、私たちに勇気や感動を与えてくれる素晴らしい機会であると同時に、ごみが大量に排出される、現代の大量消費・大量廃棄型社会の縮図でもあります。そこでMELONでは、試合を見に来た観客にごみ減量・リサイクルの重要性を認識してもらおうと、スタジアムにエコステーションを設置して、ごみの分別を指導したり、マイカップでの観戦を呼びかけるなど、各チームの環境活動をサポートしています。長崎大学環境科学部の中村修・助教授の研究室がJリーグの30チームを対象に実施した環境対策に関する初めての調査では、ベガルタ仙台が"Jリーグでスタジアムのごみ対策に最も熱心なチーム"として、評価されました。
エコシティ仙台プロデュースプロジェクト
http://www.melon.or.jp/melon/contents/Section/eco-city/frame.htm

ごみの減量は、一人ひとりが日常生活で意識することが大切です。将来を担う子どもたちに、ごみの分別や減量を当然のことと思ってもらうためにも、私たち大人が模範となり、マイバッグでの買い物やマイカップでのスポーツ観戦を実践する必要があります。

改めて、自分のライフスタイル見直し、ごみを出さない工夫をしてみませんか。きっと、もう一工夫、二工夫できるはずです。そしてまわりにも呼びかけていきませんか。ほんの小さなことかもしれませんが、一人ひとりのこうした工夫の積み重ねが、地球温暖化防止につながっていくのです。


(スタッフライター 角田一恵)

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