ニュースレター

2007年07月01日

 

グリーン購入法施行5年----取り組みの進展と今後の展望

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JFS ニュースレター No.58 (2007年6月号)

環境問題を解決していくためには、「国民の取り組み」や「技術開発」とともに、「社会経済システムの構築」も大事なポイントとなります。行動したくなるしくみや普及を後押しする制度を作っていかないと、人々の思いだけでは、エコ行動も技術もぐっと大きく進まないからです。

日本は、以前に比べて改善してきたとはいえ環境省の政府内での力が経産省他に比べてやはり弱いこともあり、他国に比べて、社会経済システムの構築が進んでいません。世界最高の太陽光発電の生産技術を持っていながら、設置容量ではドイツに世界1位の座を譲り渡してしまったことは、その一例です。

そんな日本にも、「これは世界のお手本になる!」というすばらしいしくみがあります。5年前に施行されたグリーン購入法が後押しするグリーン購入の取り組みです。リサイクルした再生製品や環境にやさしい製品をいくら作ったとしても、最終的な「出口」----それを購入する市場-----をつくらないと、上手に回りません。その出口をつくるために作られたのがグリーン購入法でした。

また、日本では、1996年に立ち上げられたグリーン購入ネットワーク(GPN)という産官学民からなる非営利団体が、セクター横断参加型で合意形成重視のアプローチで、グリーン購入を促進する活動を力強く展開しています。16分野ものさまざまな商品やサービスにガイドラインを制定し、1万を超える製品の環境情報をまとめたデータベースを公開し、一般消費者への啓発をはかっています。いくつかの地域ネットワークも立ち上がっており、GPNの活動のおかげで、日本ではグリーン購入が広がり、定着したといっても過言ではありません。
http://www.gpn.jp/

GPNは国際的な展開も支援しており、韓国、中国、マレーシア、インド、タイなどにもGPNの活動が広がっています。この号では、GPNのニュース第53号から、環境省総合環境政策局の鎌形浩史環境経済課長によるグリーン購入法施行から5年たっての日本の成果と今後を、以下にご紹介します。


大半の品目で調達率95%以上を達成

グリーン購入法とは、国等の公的機関が率先してグリーン購入を推進することにより、環境に配慮した物品やサービスに対する需要を生み出すとともに、市場全体において従来の商品から環境配慮型商品への転換を促していくことを目的としています。

法において取り組みが義務づけられている国等の機関(国会、裁判所、府省、独立行政法人、特殊法人)では、重点的に調達を推進する特定調達品目を設定し、それぞれについて判断の基準を設けグリーン購入を進めてきました。法が施行された2001年度には100品目の特定調達品目を設定し、以降、毎年度新たな分野・品目を加えており、2006年度には214品目まで拡大しています。

特定調達品目の判断基準に適合した物品等の調達率も着実に上昇しており、2004年度の実績ではほとんどの品目が95%以上の水準に達しています。また、環境配慮物品等への転換と同時に、調達にあたっての必要性の確認を徹底し、購入量自体を減らす努力をしてきました。

グリーン購入を推進することによって、実際にどれだけの環境負荷低減に結びついているかについては、把握が可能な品目については、国等の機関による調達量全体の資源消費削減量やCO2排出削減量を試算し、取り組みによる効果を検証しています。

たとえばコピー用紙について2000年度と2004年度を比較した場合、古紙を配合した用紙への切換えによるパルプ材の消費削減量は約35,000m3となります。これは、25,000t-CO2の二酸化炭素固定量に相当します。

また、ボールペンやシャープペンシルなど4品目の筆記具に関し、再生プラスチックの採用によるプラスチック使用削減量(2004年度)を試算すると20.3トンになり、プラスチックを焼却した場合と比較したCO2排出削減量は54.4t-CO2にのぼります。

今後、試算の対象範囲の拡大、購入量の削減による効果の集計方法などについても、検討していく考えです。

グリーン購入法では、地方自治体に関し努力義務という位置づけになっていますが、地方自治体は、国等の機関の3倍以上の規模の経済活動を行っており、市場に対して大きな影響力をもっています。このため、地方自治体がグリーン購入に積極的に取り組むことにより、それぞれの地域、さらには国内市場全体における環境配慮型商品への需要転換が進むものと思われます。

地方分権の時代において、各自治体が主体的にグリーン購入を進めていくことが基本であると考えていますが、環境省としても毎年、地方自治体におけるグリーン購入の実施状況に関する調査を実施するとともに、取り組みの強化に向けはたらきかけを行っています。

2005年度の調査結果では、「全庁で組織的にグリーン購入に取り組んでいる」自治体は33.8%で、2002年度調査の26.3%から7.5ポイント増加しています。自治体の区分ごとに見ると、都道府県・政令市が96.7%に達しているのに対し、市区では53.1%、町村は15.2%となっており、町村では担当者レベル等での取り組みにとどまっているところが多いのが現状です。

こうしたことから現在、中小規模の自治体向けのマニュアルの作成を進めており、効率的・効果的な取り組み方法を示すとともに、グリーン購入によるコスト面のメリットについても認識してもらいたいと考えています。

公的機関におけるグリーン購入の率先実行を通じた市場全体の需要転換という点では、特定調達物品の市場形成の状況に関する各種の調査結果によると、各品目においてシェアが増加していることが示されています。

たとえばコピー用紙について、判断基準を満たした商品が国内出荷量全体に占める割合を見ると、2000年度の11.6%から2004年度の33.5%へと約3倍に上昇しています。2004年度の国内出荷が、すべてバージンパルプ100%の用紙であった場合と比較すると、770,000m3のパルプ材の消費が削減されたことになります。

このほか、特定調達品目の判断基準に適合するボールペンの割合は13.0%から43.4%、照明器具(Hfインバータ方式器具)は22.4%から54.2%、低公害車(新規登録台数)は0.9%(2000年度下期)から67.6%(2004年度下期)といったように、多くの品目で大幅にシェアが拡大していることがわかります。

こうした変化は、公的機関によるグリーン購入だけでなく、事業者や一般消費者の方々による取り組み、メーカーにおける環境配慮型製品の開発に向けた努力などの結果だといえますが、コピー用紙のように国等の機関の調達量が国内出荷量全体の2割以上を占める品目などにおいては、公的機関による率先行動が市場形成に大きな影響を及ぼしているものと考えられます。

今後の施策の展開については、広範な分野・品目においてグリーン購入が推進されるよう、今後も特定調達品目の拡充を進めていきます。同時に、より環境負荷の少ない物品等の選択が行われるよう、各品目の判断基準についても、製品開発の動向などをふまえ適宜見直しを行っていく予定です。

また、グリーン購入による環境負荷低減の実効性を高めていく上では、商品やサービスに関するデータの信頼性を高めていくことが必要です。このため、物品等の環境情報の検証という点に関しても、どのような仕組みが望ましいのか様々な角度から検討を行っていく必要があると考えています。

また、国等の機関によるグリーン購入実績については、これまでも各機関から公表されていますが、書面による公表にとどまるなど、一般の目に触れやすい形での情報開示が行われていないケースもあります。

グリーン購入の取り組み内容や実績に関する情報を開示することは、消費者、供給者双方に対する啓発効果や取り組み促進効果があり、ホームページへの掲載などアクセスしやすい形での情報開示が行われるようはたらきかけていきたいと考えています。また、地方自治体においても、グリーン購入への認識向上や取り組み促進に向け、情報提供の充実に努めていただきたいと思います。


(枝廣淳子)

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