ニュースレター

2007年06月01日

 

JFS指標プロジェクト(4) サブ指標について

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JFS ニュースレター No.57 (2007年5月号)

はじめに

前回のニュースレターでは、20の指標カテゴリーのつながりについて、その検討プロセスを紹介しました。今回は、第2期プロジェクトの主な成果の1つであるサブ指標の選定について紹介します。

ヘッドライン指標の特徴と課題

第1期では、日本の持続可能性を可視化するための指標として、20のヘッドライン指標を各指標カテゴリーから1つずつ設定しました。各カテゴリーの代表性、象徴性を考慮して選定しています。指標の数を20にしたのは、各国の持続可能性指標を参考にした結果で、特に「5指標×4軸(環境、経済、社会、個人)=20指標」という数のわかりやすさも考慮し、あくまでも1つのモデルとして設定しています。20のヘッドライン指標で日本の持続可能性を測定するという点が、JFS指標の1つの特徴であると考えています。

●持続可能な日本を測定する指標
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011055.html

一方でこのモデルでは、各指標カテゴリーにおける持続可能性を1つの指標で測定しているため、不足している点が大きく2つあります。

第一に、1つの指標だけでは持続可能性を十分に網羅できないことがあります。例えば、社会の指標カテゴリーの1つである「安全」のヘッドライン指標は、「一般刑法犯発生率(人口10万人あたり)」であり、犯罪に対する安全を測る指標ですが、地震や水害などの自然災害、交通事故に対する安全を測定することはできません。ヘッドライン指標だけでは、持続可能性を構成している主要な要素のうち、一部しか網羅できていないのです。

●持続可能な日本を測定する指標 - 社会(Society)
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011062.html

第二に、ヘッドライン指標1つだけでは、その指標を入れ替えた場合、各指標カテゴリーの測定結果の変動が大きいことです。例えば、「ジェンダー・マイノリティ」という指標カテゴリーのヘッドライン指標は、「国会の議席数に占める女性の割合」ですが、同様に広範な女性の社会参加の度合いを測定する指標として「女性の大学進学率」や「民間企業における女性の管理職の割合」などいくつかの指標も考えられ、もしヘッドライン指標を入れ替えた場合、測定結果が大きく変わる可能性があります。

サブ指標の位置づけ

これらの問題点から、第2期では各指標カテゴリーに、既に設定している1つのヘッドライン指標に加えて、複数のサブ指標を設定することとしました。

サブ指標の位置づけは、ヘッドライン指標との関係性から、以下の3つに整理しました。

(1) ヘッドライン指標では不十分な指標カテゴリーの領域を補完している。
(2) ヘッドライン指標をさらに詳しく説明している。
(3) 結果指標とプロセス指標の両方をカバーするようにする。

(1)は、既述した1つ目の問題点である指標カテゴリーの網羅性を確保するために設定するものです。(2)は、その次の2つ目の問題点に対して、入れ替えによる変動を小さくするためです。(3)は、ある状況・結果に至るまでのプロセスを測る指標(プロセス指標)も、その状況・結果を表す指標(結果指標)と同様に重要であるとの考え方から、ヘッドライン指標では、ほとんど結果指標を選定しましたが、サブ指標にはプロセス指標も追加することにしました。

例えば、「現在の生活に満足している人の割合」を結果指標とした場合、その結果に至るプロセスの1つとして「持ち家を持つこと」があり、そのため「持ち家比率」はプロセス指標となると考えました。

サブ指標の選定

サブ指標の選定基準は、基本的にヘッドライン指標と同様にし、特に連関性やほかの指標カテゴリーとのつながりを意識して選定することにしました。サブ指標の選定のために、まずJFS指標チームのメンバー内でワークショップを行い、どのような指標を追加すべきかを議論しました。その後、これまでに収集した基礎統計データ集を基本とし、その他適宜新しい指標の探索を行い、最終的に各指標カテゴリーで3-5つのサブ指標を選定しました。ここでは、その一部を紹介します。

「生物多様性」〔ヘッドライン:絶滅の危機に瀕しているワシタカ類〕
・絶滅のおそれのある野生動物種数
・ラムサール湿地の登録数
・自然植生の割合
・自然再生型公共事業の予算
・ツキノワグマ捕獲数

「地球温暖化・気候変動」〔ヘッドライン:1人当たり温室効果ガス排出量〕・日本全体の温室効果ガス排出量
・自動車の保有台数
・家庭の需要電力量(従量電灯A・B)
・自然災害による死者・行方不明者数
・年平均気温の平年からの偏差

「食糧」〔ヘッドライン:食料自給率(カロリーベース)〕
・食料自給率(生産額ベース)
・穀類輸入量
・食品ロス率
・農業就業人口
・全国販売農家の1戸当たり農業所得

「国際協力」〔ヘッドライン:国民総所得(GNI)における援助額の割合〕
・国際協力NGO数
・ODA総額に対する技術協力の割合
・環境ODAの割合
・フェアトレード商品の売上高(コーヒー、紅茶)
・難民認定数

「安全」〔ヘッドライン:一般刑法犯発生率(人口10万人あたり)〕
・青少年犯罪数(少年刑法犯検挙人員)
・治安に関する意識:ここ10年間で日本の治安が「悪くなった」と思う人の割合・交通事故による死者数
・「防災上課題のある市街地」の割合

「学力・教育」〔ヘッドライン:OECDによる学習到達度(PISA)〕
・家計支出に占める教育関係費の割合
・いじめの発生件数
・大学・大学院卒業者の割合
・オルタナティブスクールの数

最後に

今回選定したサブ指標は、今後実際にその数値を評価し、第1期に測定した日本の持続可能性の結果に組み込む必要があります。第3期には、ヘッドライン指標の入れ替え(または追加)、目標値の見直しを含め、日本の持続可能性を再度試算する予定です。サブ指標もその試算結果の中に含めたいと考えています。

第3期ではこのほかに、日本以外のいくつかの国との持続可能性に関する国際比較の実施や、そのための指標の開発を行う予定です。また、国レベルだけでなく、地方自治体レベルもしくは企業レベルで、それぞれのニーズに合った持続可能性指標の開発と提案を行いたいと考えています。

JFS指標プロジェクトでは、今後も持続可能な日本を実現するために、そのビジョン・指標の調査研究、情報発信を続けています。今後ともご支援よろしくお願いします。

参考URL:JFSヘッドライン指標
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011056.html(環境)
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011049.html (経済)
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011062.html (社会)
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011068.html (個人)

(JFS指標チーム 第2期リーダー 山野下仁文)

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