ニュースレター

2007年05月01日

 

JFS指標プロジェクト(3) 指標とカテゴリー間のつながりについて

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JFS ニュースレター No.56 (2007年4月号)

はじめに

前回のニュースレターでは、持続可能性のビジョンの見直しについて紹介しました。今回は、第1期に選定した日本の持続可能性を測定するための20の指標について、第2期でそのカテゴリーの「つながり」を検討したプロセスを、一部紹介します。

4軸と20の指標カテゴリーの位置づけ

第1期で選定した20の指標が代表するカテゴリーは、「日本の持続可能性を構成している主要な要素」であると私たちJFS指標チームが考え、選択したものです。もちろん選んだ20の指標カテゴリー以外にも多くの持続可能性に関連する要素はありますし、それらは前回紹介したビジョンの中に描いています。

ビジョンは、一つひとつのパラグラフを抜き出してみると、一見個別に独立しているようにもとらえられますが、JFS指標のフレームである4軸(環境、経済、社会、個人)はお互いに関係し合っており、個々の指標も含めてそれらがすべて合わさって、一枚の大きな日本の「持続可能性の絵」を描き出していると考えられます。

例えば、過去には「経済発展と環境保護は両立しない」との考え方が世界の主流だったと思いますが、今では、持続可能性を実現するためには「環境」も「経済」も共に重要な要素だという考えが浸透してきています。当然「社会」「個人」も切り捨てることはできません。

20の指標カテゴリーについても同様のことが言えます。指標間で直接連関しあっているところもあれば、別の指標または20の指標カテゴリー以外の要素を経由してつながっているところもあります。

つながりを検討する目的

指標カテゴリー間のつながりを検討することによって、日本を総体的に持続可能性の方向に向かわせるために、個々の指標カテゴリーおよび要素を、どのようにどの程度変えなければいけないかが見えてきます。「環境」と「経済」だけをとっても、相互の好循環を生むために、例えば温室効果ガスを削減したり資源生産性を高めなければいけないことがわかりますし、さらにそれぞれどの程度改善しなければいけないかも分析できます。

もう一つの目的は、つながりを検討する過程で、第1期で示した4軸および20の指標以外の持続可能性を実現するための重要なキーワードを見つけることです。たとえば、防犯など地域の「安全」やボランティアなどの「市民参加」は、20の指標カテゴリーに含まれていますが、これらをより進めるためには「コミュニティ」の活性化は欠かせません。この「コミュニティ」というキーワードは、メンバー間のワークショップを実施する中で自然に出てきたものですが、指標間のつながりを検討することで、不足していた重要なキーワードを導き出すことができました。

つながりのタイプ

指標間のつながりにはいろいろなタイプがあり、分類の仕方もさまざまであると思いますが、ひとつの例として以下の4つに分けることができます(注)。

(1)平行つながり:
片方の指標が上がる(又は下がる)場合、別の指標も同様の動きをする。
(2)逆つながり:
片方の指標が上がる(又は下がる)場合、別の指標は反対の動きをする。
(3)直接的つながり:
片方の指標で測定されるシステムグループは別の指標で測定されるシステム
グループに直接影響する。
(4)間接的つながり:
片方の指標で測定されるシステムグループは別のシステムグループに影響し、 それによって別の指標によって測定されるシステムに間接的に影響する。

(1)、(2)の場合は、直接的に影響しあっている2つの指標間でのつながりです。一方で、(3)、(4)で示す「システムグループ」とは、お互いに関係しあっているいくつかの指標もしくは要素によって構成されるつながりのグループのことです。(1)、(2)でのつながりがいくつかのグループを形成し、それぞれのグループがまた直接的もしくは間接的につながって持続可能性全体の絵を描いています。

(注)参考:Townsville City Council Accelerated Sustainability Planninghttp://www.soe-townsville.org/atkisson/4_linkages.html

システムグループについて

今回は20の指標カテゴリーのつながりにフォーカスして、以下に示す8つのシステムグループ(つながりのグループ)を抽出し、私たちの選んだ20の指標カテゴリーが、どのグループに分類されるか見てみました。この結果を見るとわかるように、一つの指標カテゴリーが複数のグループに分類されます。つまり、指標カテゴリーが相互につながり、複雑に関係し合っていることがわかります。

これは、おそらく検討に参加する人が変われば、別のシステムグループが導き出される可能性もあり、私たちはまだまだトライアルの一つだと考えています。
(1)自然資源の持続性
「生物多様性・森林」「水・土・空気」「資源循環・廃棄物」「資源生産性」
(2)地球温暖化の防止
「温暖化・気候変動」「エネルギー」「資源循環・廃棄物」「モビリティ」「環境教育・システム」
(3)環境保全と農業
「生物多様性・森林」「水・土・空気」「食糧」
(4)金融の健全性
「財政」「お金の流れ」「環境教育・システム」
(5)国際理解
「国際協力」「食糧」「財政」「お金の流れ」「ジェンダー・マイノリティ」 「伝統文化・産業創出」「学力・教育」
(6)技術・知的資産
「伝統文化・産業創造」「学力・教育」「お金の流れ」「財政」
(7)Quality of Life(生活の質)
「生活満足」「心身の健康」「モビリティ」「教育」「市民活動」「生活格差」
(8)コミュニティ活性化
「安全」「市民活動」「伝統文化・産業創出」

最後に

JFS指標チームは、第2期に指標カテゴリー間のつながりを検討していく中で、実はこの検討自体が、持続可能性ビジョン・指標カテゴリーが描く持続可能な社会を実現する鍵となるものは何かをとらえるプロセスだったのではないかと考えています。第1期では一つひとつが独立して並んでいた20の指標カテゴリーでしたが、今回の検討プロセスを経て、「持続可能な社会の構図」が見えてきたように感じます。私たちの次の課題は、持続可能性のレバレッジポイント(LeveragePoint、わずかな力で全体を大きく変化させることができるポイント)は何かを探ることだと考えており、第3期に検討していきたいと思います。

その他、第3期では今回の検討結果をもとに、20のヘッドライン指標の目標値の整合性について検討する予定です。たとえば、20の指標カテゴリーの中にある「温暖化・気候変動」と「エネルギー」はつながりがあります。人間の生活や経済活動のために「エネルギー」を使用し、その結果として「温暖化・気候変動」を引き起こしていると考えられるからです。「エネルギー」のヘッドライン指標である「再生可能エネルギー・リサイクルエネルギーの割合」の目標値は10%であるのに対し、「温暖化・気候変動」のヘッドライン指標である「1人当たり温室効果ガス排出量(/年)」は2トンとしています。こうした、関連の深い指標同士の目標値が整合しているのかを見直すことで、さらに精度の高い持続可能性指標にしたいと考えています。

次号では「サブ指標」についてご報告します。


(JFS指標チーム 第2期リーダー 山野下仁文)

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