ニュースレター

2007年03月01日

 

エコプロダクツ展の魅力

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JFS ニュースレター No.54 (2007年2月号)

皆さんの国や地方には、どんな「エコをテーマにした展示会」がありますか?

「あまりないかもしれない」「いろいろある」など、様々な声が聞こえてきそうです。例えば、電気機器企業が集まって最新エコ製品モデルを発表するといったタイプのもの。あるいは、環境専門家や研究者が最新成果を発表したり、市民やNGOが集って活動情報を共有する意見交換の場となるタイプのもの。あるいは、子どもや学生が集まって体験学習をする教育の場というタイプのものも、あるかもしれません。

JFSで度々紹介してきた「エコプロダクツ展」の場合にはどうかというと、「上記のすべてをあわせて、ぐるぐるかき回してみた」ものといえるのではないかと思います。そして、これが活気にあふれた、多くの人にインスピレーションを与える場として成長してきているといったら、驚かれるでしょうか。

過去最大の参加者数

昨年第8回を迎えたエコプロダクツ展は、2006年12月14-16日の3日間開催され、過去最高の572社・団体の出展者、総計15万2966人の来場者で大変なにぎわいを見せました。毎年変わるこの度のテーマは、『生活の粋(イキ)、技術の粋(スイ)』。「物質はシンプルに、精神生活は充実した生活スタイルを目指し、日本の持つ環境技術・サービスの粋(スイ)を凝らして社会の変化を推進していこう」という思いが込められました。

もちろん、ただ多くの企業やNGOのブースが並んでいるというだけでは工夫がありません。エコプロ展では会場に活気をみなぎらせるべく、一つ一つしかけを進めていきました。

しかけ1.メディアとのコラボレーション

参加者層の拡大は常に主催者の悩みです。今や、一つの会場に数日間商品やサービスを展示するだけでは、人々の関心を引き寄せることはできません。そこでエコプロでは、会期前から人々の関心を呼び起こしていこうと、メディアとのコラボレーションを積極的に行いました。

「心と体にやさしい生活」を提案するライフスタイル誌『リンカラン』(ソニー・マガジンズ社)との協力はその一つです。リンカランは、音楽アーティストとエコロジーを繋ぐ形でスタートした、女性向けオーガニック・ライフスタイル・マガジンで、暮らしを大切にする若い女性に人気があります。この雑誌とともに企画したのが、エコに関心の深いアーティストやタレント3名が、実際にエコプロダクツを使ってみた様子を本人のブログに執筆し、当日、展示会場で実際に使用したものを手にトーク・セッションを行うというもので、人気コンテンツとなりました。

そして、「greenz.jp」というウェブコミュニティとの協働も強力に進めました。「greenz.jp」とは、2006年に誕生した「エコで楽しい、webコミュニティメディア」で、「食」「エコツアー」「エコビレッジ」「デザイン」「モノ」などさまざまなテーマで最新の情報を紹介したり、ウェブ上でのコミュニケーションを行ったりしています。エコに関わるキーマンが多数参加しており、エコを楽しくするウェブサイトとして注目されています。エコプロ展はこのgreenz.jpと共同し、編集部をまるごとエコプロ会場に移動して、リアルタイムにエコプロ情報を発信したのでした。

このように、エコに関心の高い雑誌やウェブコミュニティと連携しながら、エコプロダクツへの関心を高め、情報発信していきました。

しかけ2.会場内外の「エコツアー」

会場では、「どこから回ったらいいかわからない」「たくさんの出展の中から自分の気になる分野だけを効率的に回りたい」といった方向けの、『エコプロ会場内ツアー』を用意しました。これは、次のようなテーマごとにエコプロ会場のおすすめブースを、それぞれの分野の達人が、丁寧に説明しながら案内するというものです。

これらのツアーは、時間が入り口の受付のところに張り出されており、誰でも参加できます。これらは会場内のツアーですが、会場を飛び出してしまったエコカーの試乗会というツアーもあります。地球温暖化が進む中で、水素で走る燃料自動車、電気自動車、ハイブリッドカーなどの開発に期待がかかりますが、購買を期待されている私たちが、実際にどんなものかと触れられる機会は、なかなかありません。そこでエコプロ展では、現在研究中のものからすでに市販されているものも含め、国内外6社の最新モデルでお台場地区を試乗できるようにしました。

そのうちの一つは、マツダ社による「RX-8ハイドロジェンRE」という燃料電池車です。走行中にボタンを押して、燃料を水素とガソリンの間でスイッチできるようになっています。そのほか、電気を燃料としたものでは、スバル社の軽自動車「R1e」や、電動アシスト自転車の「ベロタクシー」など多様なモビリティが用意されました。
http://greenz.jp/2006/12/15/313/ (実際の試乗の様子)

こうして、来場者がそれぞれの興味に沿って、第一人者の解説や最新モデルを体験できるようにしていきました。

しかけ3.子どもたちの参加呼びかけ

エコプロ展の賑わいを作り出しているもので、たくさんの子どもたちの存在は見逃せません。エコプロ展では、子どもたちこそ未来の社会をつくる主役という考えのもと、学校単位・地域単位など教育目的の団体見学には、主催者・出展者協賛による、無料送迎バスを支援するなど、参加しやすい体制を整えました。

総合学習や社会科見学授業の機会として訪れる先生・生徒を中心に、2006年度には小学校62校(6,196人)、中学校32校(4,209人)、高等学校9校(1,237人)、幼稚園や市民・公民館単位20団体(1,690人)の計約13,000人超が来場しました。学校単位の見学でも、父兄や地域住民が参加したり、市役所の広報を通じて見学者を募集し、その地域の環境NPOが引率をするなどの広がりを見せています。

エコプロ展では、出展ブース側にも、子どもたちや一般生活者にわかる視点で展示ブースを構成し、実験・説明・クイズなど趣向を凝らした受け入れ対応を依頼しました。例えば、最新の環境技術を使い、どのように環境に配慮した製品づくり、サービスを行っているのか。新製品はどんなエコライフを想定して開発していくのか。各ブースでは、これらの課題についてどう取組んでいるのか、できるだけ体験的にわかるように工夫を凝らしていきました。

子どもたちが目を輝かせながら、いろいろな質問を問いかけてくるのを目の当たりにして、出展者たちは活動を進めていく意欲を新たにしたことでしょう。

エコプロはどこへ行く

このように多くの人を巻き込みつつあるエコプロダクツ展ですが、これからどこに向かうのでしょうか。「もっとずっと多くの方が、持続可能な未来に向けて生活を変えるきっかけを得る場にしたい」と力強く語るのは、主催者である日経新聞社文化・事業局の長谷川プロデューサーです。個々の製品やサービスのエコを断片的に伝えるのではなく、日本で培ってきた技術や文化を活用して、総体としてのサステナブルな生活をどう提案するかこそが、これからのエコプロの挑戦になると長谷川さんは言います。

出展者、来場者、メディアや子どもたちなど、そこに関わる人々が、持続可能な社会に向けて大きな活力とインスピレーションを得ることができる。エコプロ展が、そのような場となり、未来を切り開いていくことを期待しています。


(スタッフライター 小林一紀)

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