ニュースレター

2007年02月01日

 

女性の笑顔と幸せを作り出す - 資生堂

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.53 (2007年1月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第57回
http://www.shiseido.co.jp/

日本を代表する化粧品企業 資生堂は、1872年に調剤薬局として誕生しました。現在も販売されている超ロングセラーの化粧水「オイデルミン」を発売し、化粧品事業に進出したのは、今から110年前の1897年です。

現在、資生堂の製品は世界70カ国で販売され、また、海外に11ヶ所の生産拠点、7ヶ所の研究開発拠点を構えています。従業員数は約3,200人、国内外のグループ企業を合わせると約25,800人が働いており、2006年3月期の売上高は、グループ全体で6710億円です。

持続可能な社会を築くために、化粧品企業として何ができるのか、何をしなければならないのか -- 資生堂は、「いつも幸せな社会をめざす」という方向性を定め、資生堂らしさにこだわって、自らの果たすべき役割を考え続けています。そして、2004年にCSR部を設置し、本業を生かした取り組みのキーワードとして、「化粧」「女性」「文化資本」を選択しました。

化粧には、外観を美しく見せることだけでなく、癒し、励まし、安らぎなど、心に働きかける効果があります。そして、資生堂の従業員の7割、お客さまの9割は女性です。3つのキーワードの背景には、化粧を通じて、女性たちの笑顔と幸せを作り出せるような企業でありたい、創業以来培ってきた美意識や新しい生活価値を積極的に発信することで、美しく健やかな生活文化の創造に貢献していきたいという、資生堂の思いが込められています。そして同時に、これらに関する活動は、資生堂が広く日本の社会から期待されている分野でもあります。

今回のニュースレターでは、資生堂のさまざまな取り組みを、化粧と女性に焦点をあててご紹介します。


資生堂は、社会貢献活動の一環として、10年以上前から、あざや傷あと、白斑など顔に疾患のある方に向けて、外見上の悩みを化粧で解消する「セラピーメーキャップ活動」を続けています。セラピーメーキャップは、単に疾患をカバーするだけでなく、不安や憂鬱な気持ちを払拭して自信を取り戻すといった心のケアにも効果があることが分かっています。

セラピーメーキャップの専門家が、悩みを持つ方の相談にのったり、一人ひとりの症状にあった化粧方法を指導したりなどのサービスを無料で行うほか、使いやすい専用のファンデーション(商品名:パーフェクトカバー)も発売しています。2006年には、専用の施設を東京都内に開設し(施設名:資生堂ビューティーケアセンター/住所:東京都中央区銀座7-5-5 URLは http://www.shiseido.co.jp/sbcc/ )、悩みを持つ方々に常時アドバイスできる体制が整いました。

最近の社会貢献活動としては、賛同する従業員が継続的に給与から資金を積み立て、支援団体に寄付を行う「SHISEIDO 社会貢献くらぶ -花椿基金-」が2005年に創設されています。このくらぶの運営委員会は、自薦、他薦で選ばれた従業員によって組織されています。支援先の団体には会社からも寄付や商品の提供を行います。従業員は、ボランティアとして支援団体の活動にも参加します。また「よき企業市民」の輪を広げることを理想と考え、会員以外で趣旨に賛同する資生堂グループに関わる方々の支援希望に対しても、柔軟に対応しています。

株主優待の選択肢の1つとして、本会を通じて支援団体に寄付するコースを設けるとともに、社友(会社OB)も参加できるしくみとしています。

2005年度は、「国連女性開発基金(UNIFEM)」を通じたアフガニスタンの女性の自立への援助、「世界自然保護基金(WWF)」を通じた森林保全活動への支援、女性に対する暴力の根絶をめざす「NPO法人全国女性シェルターネット」への支援、次世代の担い手を育む女性および児童福祉の向上をめざす「資生堂社会福祉事業財団」への支援、「全国色素性乾皮症(XP)連絡会」に対し、約1116万円の支援を行いました。

支援団体の一つに、全国色素性乾皮症(XP)連絡会があります。XPとは、紫外線に当たると高い確率で癌になってしまう難病です。神経症状を併発される方も多く、歩行・呼吸障害が現れやすい病気です。治療法はまだ確立されておらず日本には数百人前後の患者がいるとされています。患者の方々は紫外線に当たらないよう日焼け止めクリームを塗り、防御服などを着用し、症状の進行を遅らせるために困難な日常生活を余儀なくされています。

資生堂では、化粧品会社であることを生かし、紫外線から肌を守るという観点から、XP患者の方々に対して、日焼け止めクリームなどの化粧品の寄付、従業員によるボランティア活動、資金的な支援などを継続して行っています。同社はこれからも資生堂ならではの社会貢献活動を通じて、社会に貢献していきたいと考えています。

また、資生堂は、化粧品を環境配慮型に変えていくための活動の一つとして、使用済みガラスびんのリサイクルに取り組んでいます。日本では、飲料用のガラスびんのリサイクルは進んでいますが、化粧品用のガラスびんのほとんどは埋め立て処分されています。化粧品会社によってガラスの組成が異なり、一定の品質でガラスびんを再生することが困難なためです。

同社は、2001年から全国約1万件のリサイクル協力店で、使用済みガラスびんの回収を始めました。回収されたガラスびんは、自社の工場で、手作業でリサイクル可能な部分のみに分別してカレットにされ、ガラスびんメーカーで加工されて、再び資生堂の化粧品の容器として再利用されます。

2006年は、121トンのガラスびんが回収されました。これは同社が使用しているガラスびんの総量の約2%に当たります。同社は、回収率の向上、リサイクルコストの削減などの課題にチャレンジしながら、化粧用ガラスびんのリサイクルが社会のしくみとして定着することを最終目標に活動を推進しています。


女性に視点を移してみましょう。日本では、女性の社会進出が進んでいるとはいえ、出産や育児をしながら仕事を続けるためには個人の負担が大きく、また、女性従業員の経営参画も低いのが現状です。資生堂は、女性たちの豊かな生き方を応援する企業として、子どもを持つ女性たちが安心して仕事を続けられるよう、さまざまな施策を実施しています。

ユニークな活動の一つは、資生堂が開発した、インターネットを活用した育児休業者支援プログラム「wiwiw(ウィウィ)」です。wiwiwは、企業が、自社の育児休業者に対して、育児に役立つ情報や復帰後の仕事に役立つ講座を提供するプログラムで、現在110の企業が導入しています。
https://www.wiwiw.com/

Wiwiwを導入した企業の育児休業者には、ビジネススキルを身につけたり、仕事と育児を両立するためのノウハウを提供するオンライン講座、企業からの情報を受け取ることができる掲示板、育児休業者同士の情報交換ができる場など、さまざまなサービスが提供され、育休中の不安解消や職場復帰への意欲向上などにつながっています。企業では、wiwiwを使って、育児休業中の従業員の管理や情報提供などをスムーズに行うことができます。資生堂では、これまでにおよそ500人の女性が、wiwiwを活用して職場復帰を果たしました。

また、2006年には、本社医務室に新たにチャイルドケアサポートセンターが開設されました。ここでは、全事業所の妊娠・育児中の従業員からの相談をメールや電話などで受けつけ、相談にのっています。

職場での支援として、資生堂は、育児時間取得を希望する美容職従業員(店頭でお客さまに商品の説明をして販売する専門知識を持った従業員)に代わって、夕刻以降に店頭に立つパート従業員の採用を昨年から始めました。彼女たちはカンガルースタッフと呼ばれ、2-3週間の専門的な研修を受けた上で職場に配置されます。

「仕事と育児の両立支援」は、店頭活動に従事しながら育児をするBC(美容職)にとっても、また、それを支える側にとっても問題となっていました。店頭活動に従事するBCの育児時間取得については、お客さまとの接点で活動する美容職社員が生き生きと働くことを阻害する要因をすべて取り除くことを目的に「育児時間代替要員体制(カンガルースタッフ制度)」を構築し、2007年度より全国に導入していく予定です。

資生堂は、「一瞬も一生も美しく」というコーポレートメッセージのもと、今後もさまざまな活動を積み重ねることによって、いきいきと輝く女性を応援していくたいと考えています。


(スタッフライター 西条江利子)

English  

 


 

このページの先頭へ