ニュースレター

2006年12月01日

 

日本の生ゴミリサイクル

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JFS ニュースレター No.51 (2006年11月号)

毎日の食事は日々の活力の基であり、一緒に食卓を囲む家族や仲間のコミュニケーションの場でもあり、私たちにとって、とても大切なものです。しかし、おいしい食事の裏で、必ず発生しているのが、生ゴミです。今回は、日本での生ゴミのリサイクルの現状をご紹介します。

ゴミ処理の仕組みと生ゴミの現状

生ゴミの発生元は、食品が生産者から消費者に届けられる段階によって3つに分けられます。加工食品などを作る食品会社などの製造段階、売れ残りなどの生ゴミのでるスーパーなどの流通段階、レストランや一般家庭の消費段階です。

日本でのゴミは大きく分けて2つに区分されています。排出者が処分の責任を負う「産業廃棄物」と、市町村が処分の責任を負う「一般廃棄物」です。「産業廃棄物」は、排出した企業が自ら、あるいは専門の業者などに委託して処分し、「一般廃棄物」は市町村が処分します。

食品の製造段階で排出される動植物残渣(ぬか、おから、その他の製造くず、原料かす)などは「産業廃棄物」となり、流通段階や消費段階ででる売れ残り、食品廃棄、食べ残しなどは「一般廃棄物」として処理されます。

日本では、1996年に発生した年間約1940万トンの生ゴミのうち、リサイクルされていたのは168万トン、約9%で、家庭から出る生ゴミにかぎっては5万トン、たったの0.3%しかリサイクルされていませんでした。大部分の生ゴミは焼却埋立処分されており、最終処分場の不足などの問題の一因となっていました。そこで日本では、生ゴミを減らしてリサイクルをうながすため、2001年、食品リサイクル法という法律が作られました。

この法律では、食品の製造、流通、消費などの各段階において、消費者、事業者、国・地方公共団体など食品廃棄物に関わるすべての人に、食品廃棄物 の「発生の抑制」「再生利用」「減量」に努めるよう求めています。また、すべての食品関連事業者に、2006年度までにリサイクルの実施率を20% に向上させることを義務付けています。

その結果、2002年には10%未満だった生ゴミ全体のリサイクル率は、2005年には20%まで向上しました。食品リサイクル法の規制対象となっている食品関連事業者のリサイクル率は、2004年には50%を超えています。その一方で、家庭からでる生ゴミの再利用が進んでいません。再利用のためには分別収集が不可欠ですが、家庭から出る生ゴミの処分をおこなう自治体のうち、生ゴミを分別収集している市町村はとても少ないのが現状です。

生ゴミはどのようにリサイクルすることができるのでしょうか? 食品リサイクル法では、その方法として「堆肥など肥料化」「家畜への飼料化」「バイオディーゼル燃料、印刷インクなど、油脂及び油脂製品化」「メタン化」の4つを挙げています。

現在、生ゴミのリサイクルは、「肥料化」がほとんどです。「飼料化」は、食品関連業者から出された大豆かすやパン、米飯類などの生ゴミを飼料会社などに供給し、家畜の餌として活用するなど、一部の業界では昔から取り組まれてきました。

生ゴミをバイオディーゼル燃料やメタンガスなどのエネルギーの原燃料として利用する取り組みも、全体としてはまだまだ比率は低いのですが、各地で始まっています。では、いくつかの取り組みを具体的に紹介しましょう。

綾町の生ゴミリサイクル -堆肥化-

宮崎県の綾町では、家庭に配られる「ゴミ」収集分別表には、「燃えるゴミ」とは別に「生ゴミ」という項目があります。各家庭から集められた生ゴミは、堆肥となって、「綾の堆肥」として安く町の農家に売られます。その堆肥を使って作られた野菜などは、1988年に町が作った「ほんものセンター」で地元の消費者に販売され、栄養素の地域内循環がおこなわれています。

綾町では、住民の協力を得て生ゴミを分別収集することで、地域の小さな循環を生み出し、コミュニティーの活性化をもたらしているのです。

バイオマスエネルギー

地球温暖化防止京都会議(COP3)の開催地である京都市では、家庭や食堂などの事業所から出る廃食用植物油を回収し、メチルエステル(バイオデイーゼル燃料)として再生、市のごみ収集車や市バスの燃料として利用する「バイオディーゼル燃料化事業」を展開しています。

1997年よりスタートした家庭の廃食用油の回収は、徐々に回収拠点を拡大し、市内956拠点(2006年4月現在)において年間約13万リットルを回収し、レストラン、食堂などから回収した廃食用油約150万リットルを合わせて、バイオディーゼル燃料の原料として再生しています。

京都市では、広くバイオディーゼル燃料を普及させるためには、燃料の品質規格を設定することが重要であると考え、バイオディーゼル燃料の先進地域であるEUの規格を参考に、独自の暫定規格(京都スタンダード)を策定しました。

そして、その暫定規格を満足する品質の燃料を安定供給するため、2004年から日量5,000リットルの廃食用油燃料化プラントを稼動させています。この燃料化プラントは自治体で最大規模です。京都市の暫定規格の策定は、国の定める品質規格がなかったため、国に先駆けて行われました。現在、このような流れを受けて、国でも2006年度中の規格策定を目標に、準備が進められています。

また、同市では、バイオマス利用の新たな試みをスタートさせました。生ゴミからメタンを主成分とするバイオガスを生成し、それを水素に変換し、燃料電池で発電を行う「バイオガス化技術実証事業」です。分別された事業系の生ゴミではなく、異物の混入が多い家庭から出る生ゴミを利用するという点と、バイオディーゼル燃料化事業で発生する廃グリセリンを再利用する(一般的に、バイオディーゼル燃料化事業により発生する廃グリセリンは、廃棄物として処理されます)という点で、日本初の試みです。

現在、燃料電池で使用する水素の多くは、石油や天然ガスなど化石燃料を原料としていますが、京都市の試みでは生ゴミを原料としています。生ゴミなどのバイオマスの利用は、資源枯渇の問題やCO2排出による温暖化加速などの心配もありません。京都市の取り組みは、生ゴミの利活用推進だけでなく、自動車排ガスのクリーン化、CO2排出量削減でもあり、すばらしい先駆けとしての取り組み事例といえるでしょう。

バイオマス・ニッポン

現在、日本政府は、生ゴミを含めた生物由来資源であるバイオマスを活用した社会「バイオマス・ニッポン」を実現するためのプロジェクトを進めています。2030年頃には、バイオマスを最大限活用する社会を作ろうと、パンフレットやHPを使っての情報提供や、バイオマス関連の研究や事業への補助金などを通じて、バイオマスの利活用をバックアップしています。

生ゴミは捨ててしまえばゴミ問題となりますが、活用すれば資源ともなります。綾町のように昔からの知恵や地域のつながりを生かし、また京都市のように最新の技術を駆使して、生ゴミを資源として活用する取り組みが、どんどん広がっていってほしいものです。

その一方で、日本の食糧自給率はカロリーベースで40%です。多くの食料を海外から輸入して、大量の食べ残しを生ゴミにしています。生ゴミを資源としてリサイクルするのも大切ですが、同時に生ゴミの量を減らすことにも力を入れなくてはなりません。


(スタッフライター 米田由利子)

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