ニュースレター

2006年11月01日

 

日本の使用済み自動車リサイクルの状況

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JFS ニュースレター No.50 (2006年10月号)

はじめに

日本における2005年度末の自動車保有台数は約7,500万台(4輪車)で、1.7人に1台に当たり、世界の国々の中で十指に入ります(04年世界平均は7.5人に1台)。平均使用年数は増える傾向にあり、2005年では乗用車で10.9年、貨物車で11.7年となっています。

国内で使用済み自動車は年間500万台前後発生しています。このうち輸出などに回る100万台を除いた約400万台は、有用金属・部品を含んでおり、資源として価値が高いため、自動車販売業者等から、解体業者や破砕業者へ売買を通じて流通し、リユース・リサイクル・処理が行われてきました。

使用済み自動車は、まずは解体業者の手で、エンジン部品、ボディ部品、電装品などが有用部品として回収され、リユースされます。1台当たりの重量比で20-30%が部品としてリユースされます。部品としてリユースされないエンジン部品、触媒、非鉄金属、タイヤ等のうち、1台当たりの重量比で50-55%は原材料としてリサイクルされます。合わせて、75-80%がリユース・リサイクルされています。

カーエアコンに使われるフロン類は2002年10月からフロン類回収破壊法に基づき回収処理され、また爆発の危険のあるエアバッグについても自主的な処理システムによる取り組みが行われていました。

最後に残る重量比で20-25%の部分は、これまでは破砕され、シュレッダーダスト(ASR)として主に埋め立てられていました。しかし近年、産業廃棄物最終処分場の残余年数が減り、ASRの量を減らす必要性が高まっています。

また、最終処分費の高騰と鉄スクラップ価格の低迷によって、解体・破砕業者側の採算が悪化し、従来のリサイクルシステムが機能しなくなり、適正な処理ができなくなったり、不法投棄が増える懸念が生じてきました。

このため、より適正なリサイクルを図るため、自動車製造業者を中心とした関係者に適切な役割分担を義務付けた「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」が新たに制定され、2005年1月から施行されました。

自動車リサイクル法の概要

自動車リサイクル法は、既存の静脈インフラを最大限に活用することを前提として、「ASR、新たな環境課題であるフロン類、エアバッグ類への対応を行う」「適正な競争原理が働く仕組みとする」「最終埋め立て処分量の極小化を図る」「不法投棄の防止に資する」を基本的な考え方としています。

自動車製造業者および輸入業者(以下、自動車メーカーという)は、自らが製造または輸入した自動車が使用済みとなった場合、その車から発生するフロン類、エアバッグ類及びASRを引き取り、リサイクル(フロン類は破壊)を適正に行うことを義務付けられました。

使用済み自動車は、所有者から引取業者(登録制)が引き取り、フロン類回収業者(登録制)に渡ってフロン類が回収され、次に解体業者(許可制)に渡ってエアバッグ類が回収され、有用な部品、資材が回収されます。最後に残った廃車ガラは、破砕業者(許可制)に渡ってASR となります。自動車メーカー(認定制)は、回収されたフロン類、エアバッグ類を回収料金を支払って引き取り、ASRも引き取ります。

業者の認定制は経済産業・環境両大臣が行い、登録制は事業所所在地を管轄する都道府県知事などへの登録が必要で、許可制も都道府県知事などの許可が必要となります。

これら各段階の事業者に対して、引き取り、引き渡しを行う際に、情報管理センターへ報告を義務づける「電子マニフェスト制度」(移動情報管理システム)が導入されました。情報を一元的に管理し、適正な処理を確認します。

リサイクルに必要な費用は、基本的に新車購入時に、自動車所有者が負担します。

制度施行前の既販車の場合は、最初の車検時、登録・車検を受けない構内車などは引取業者に引き渡す時に負担します。リサイクル料金は、自動車メーカーが定めて公表しますが、不適切な料金設定に対しては国が是正を勧告・命令します。リサイクル料金の管理は第三者機関の資金管理法人が行います。

リサイクル法施行後の実績

現在、使用済み自動車は、約85,000社の引取業者、約22,000社のフロン類回収業者、約5,800社の解体業者、約1,200社の破砕業者の手によりリサイクル処理されています。

リサイクル料金は、車種毎に決まったフロン、エアバッグ、ASRの料金に資金管理料金・情報管理料金を加えた合計金額となり、1台およそ6,000-18,000円に設定されています。

移動情報管理システムの運用、リサイクル料金の管理は、自動車関連業界が設立した(財)自動車リサイクル促進センターが行っています。同センターは業務に関する事業報告書を毎年発表します。また、フロン類の回収・破壊、エアバッグ類の引取・リサイクルを一元的に実施することを目的として、自動車メーカーは、基金を拠出してメーカー共通の引取窓口となる中間法人・自動車再生資源化協力機構(自再協)を設立し、一連の業務を委託しています。

ASRの引取・リサイクルでは自動車メーカーは2グループに分かれて対応しています。 トヨタ、ホンダなど8社はTHチームを作り、豊通リサイクル(株)に実務を委託し、日産、いすゞなど11社は自動車破砕残さリサイクル促進チーム(ART)を作り、運営委員会で企画を行い、複数の商社と連携しながら対応しています。

ASRのリサイクル率については、法律で段階的な向上(2005年30%、2010年50%、2015年70%)が設定されていますが、2005年度におけるARTグループの平均値は66%、THチームではトヨタ57%、ホンダ60%など、既に2010年の目標値を達成しました。

ASRの処理は、ガス化溶融炉による高温処理により固形分を再資源化するとともに、熱利用してリサイクル率を上げる方式が実用化されています。JFSサイトにも例が紹介されています。
http://www.japanfs.org/db/798-j

一方 タイヤのリサイクルに関しては、日本自動車タイヤ協会によると、2005年における廃タイヤの排出量102万2,000トンのうち、輸出、更生タイヤ台用、再生ゴム・ゴム粉などとして37万3,000トンが原型または加工利用され、52万4,000トンが金属精錬・セメント焼成用、発電等として熱利用されています。

各社の取組み

1997年に通商産業省(現・経済産業省)が策定した「使用済み自動車リサイクルイニシアティブ」では、2015年以降、リサイクル実効率95%以上を達成するという数値目標を示しています。リサイクル実効率とは、使用済自動車の全重量に対するリサイクルに向けられた重量の比率です。

この目標を達成すべく、各自動車メーカーは自動車の設計段階からリサイクルに配慮した製品作りに取り組んでいます。車体の構造面では、解体しやすい構造とするため、部品の数や締結箇所を減らしたり、簡単に解体できる構造にすることで、短時間で解体、部品回収すると共にASRを減らせるように工夫しています。

素材面では、リサイクルが容易な材料を採用しています。樹脂材料を例に取ると、よりリサイクルしやすいオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)に置き換える、また素材の統一を図る、材質の表示をする等です。さらに再生材から作られた部品を使うようにしています。

こうした取り組みの結果、ニッサンは マーチ、ノートでリサイクル実効率95%を達成したと発表しています。各社とも力を入れているので、全車種について早期の目標達成が期待されるところです。

おわりに

自動車リサイクル法が施行されて1年半が経過し、マニフェスト制度による2005年度の使用済み自動車の引取台数は約305万台と報告され、従来400万台と言われていた数量と大きな差がありました。その原因としては、輸出に回る中古車や廃車の台数の増加傾向が顕著であるとともに、法施行にともなって使用済み自動車の流通経路に変化が出ていると見られています。

自動車に関しては、法施行後の新たな事態に適切に対応し、適正で持続可能なリサイクルを進めながら、持続可能なモビリティとそのなかでの役割を考えていく必要があると考えられます 。


(スタッフライター 小柴禧悦)

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