ニュースレター

2006年09月01日

 

ソフトとハードのセットで環境負荷を低減する - 富士通グループ

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JFS ニュースレター No.48 (2006年8月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第49回
http://jp.fujitsu.com/

IT(情報技術)は、サステナビリティにどう貢献できるのでしょう。日本における情報通信企業のリーディングカンパニー富士通は、サービスを通してこの問いに対する答えの一つを提供しています。同社は2004年、物流大手の日本通運の要請を受けて、膨大な数の車の運行データを一括して収集・管理し効率的な運転を促す情報システムと車載端末を開発。これが約14,000台の全営業用車両に導入されましたが、その結果、車両を運転する燃費が約10%向上しました。燃費の改善はそのまま、物流の燃料コストの削減として事業面の大きなメリットにつながっています。この事例は、膨大な情報が複雑に絡み合いコントロールが不可能に見える状況でも、それを正確に把握し管理する情報技術を活用することにより、確実に環境負荷を減らし、企業も事業を効率化することが可能であることを教えてくれます。

富士通グループ

1935年に創業された富士通は、情報通信分野において、先端技術を基盤とした高信頼・高性能な製品・サービスを、公共分野、産業分野、民生分野に幅広く提供しています。現在グループ全体で約15万人の従業員を擁し、2004年度の売上げは約4兆7,600億円、営業利益は1,600億円に達しています。その事業は、大きく3つに分けられます。ITコンサルやインターネット・データ・センター、システム統合などのソフトウェア・サービス(44%)、サーバー、モバイル通信インフラ、パソコン、携帯電話などのプラットフォーム事業(36%)、半導体などの電子デバイス(15%)です。地域別の売上げを見ると、売上げの7割を日本が占めていますが、欧州、米州で2割、アジア・豪州他で1割と海外での事業が広がっています。

ハード、ソフト事業両方の環境負荷を理解する

暮らしやビジネスに溶け込んだ同社の多様な製品は、開発・設計から回収・再利用まで、どのように環境と関わっているのでしょうか。富士通では、自らの事業活動をはじめ、顧客先や社会全体での環境負荷を低減することを目標に、それを可能にする基盤として、環境負荷の全体像を数値で把握しようと努めています。富士通のマテリアル・バランス(PDF)
http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jeco/report/rep2005/2005report39-40.pdf

パソコンや携帯電話に代表されるハード製品は、開発・設計、調達、製造、物流・販売、使用、回収・再使用・再利用というライフサイクルがあります。製造段階で、資源・エネルギー・水の使用、排出物を最小にすること、顧客が使用中の環境負荷(主に消費電力など)を最小化すること、また、顧客が使用したあとの製品の回収・再利用が特に重要です。

パソコンのライフサイクルにおける負荷と取組み(PDF)
http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jeco/report/rep2005/2005report41-42.pdf

ソフトウェア・ソリューションの環境負荷はどうでしょうか。環境に配慮した設計を行う供給業者の選定、環境負荷を減らすシステムやサービスの導入などにより、顧客の環境負荷を低減していく必要があります。

こうした状況の中で同社は、自社のエネルギー消費によるCO2排出量については、2010年度には1990年度(108.3万トン)以下に、廃棄物についても、発生量を2006年度末までに2003年度実績(50,873トン)に比べて3%削減することを目標に掲げています。

ソフト面の革新

まず、ソフトウェア・ソリューションから、富士通がどのような革新を行っているか見てみましょう。企業や自治体が環境に取り組むには、膨大な量の情報を正確に把握し判断に生かすための情報インフラが必要になります。例えば、サプライヤーからの仕入れではグリーン調達をどうするか。製造段階では、エコ・デザイン、省エネ、廃棄物抑制、化学物質管理。流通・販売では、情報開示、温暖化対策、モーダルシフト、エコ包装、回収ではグリーンロジスティクス、そしてリサイクルでは省エネ、廃棄物発生抑制といった具合に、各段階で適切なソフトウェアがあるかないかで環境負荷は大きく変わってくるでしょう。

富士通では、ソフトウェアが環境負荷の低減に貢献する効果に着目し、ソフト・サービスを導入することによる効果を定量的に測る手法を開発しています。これは、CO2排出量を「物の消費量」「人の移動量」などの環境影響要因別に評価し、ITソリューション導入後の環境負荷削減効果を把握していくものです。この「環境影響評価手法」を活用して負荷低減効果が15%以上(CO2換算)になるものを「環境貢献ソリューション」として認定。2004年6月からこの認定制度の本格運用を開始し、2006年3月末までに、累計54のソリューションを認定しています。環境ソリューションの提供(PDF)
http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jeco/report/rep2005/2005report49-50.pdf

その一つの事例に、株式会社三越にサービスを提供した事例があります。一日あたり何万人もの利用客がいる三越デパートは、2004年9月より、業務改革と併せて環境負荷削減のために、商品の注文伝票や取引記録を電子化する富士通の小型POSターミナルを3,400台導入。これにより、年間で伝票用紙180万枚、ジャーナル用紙140万ロールの削減、サーバーの集約による電力消費の削減につながりました。「様々な情報をご提供いただいてはじめて、環境負荷削減効果の計算が可能になりました。」と語るのは富士通環境本部SD企画統括部長の佐藤貢氏です。CO2に換算すると、年間1,300トンの削減に上ることが計算からわかりましたが、これは三越のCO2排出量の約55%に相当するそうです。「これらの取組みによってITが環境負荷低減にどのように貢献できるかを明確にしていきたい。」と佐藤氏は意気込みを語ります。

ハード面での革新

こうしたソフトウェアの革新の一方で、ハード面での取組みはどうでしょうか。同社では、新規開発する製品についてLCAに基づいたエコ・デザインを進めています。1993年から独自の製品環境アセスメントを導入し、1998年にグリーン製品評価を強化し、適合した商品を自社内で「グリーン製品」と認定して市場に送り出しています。2004年からは、「グリーン製品」であることを前提条件に、「省エネ」「3R設計・技術」「含有化学物質」「環境貢献材料・技術」などの環境配慮要素のいずれかが業界でトップ水準の製品またはシステムを「スーパーグリーン製品」と認定しています。2005年には21製品群、累計33製品群のスーパーグリーン製品を提供しました。

スーパーグリーン商品はどれも、業界をリードする革新性を備えています。その一つの事例が、2005年1月、世界で初めて大型筐体部分に植物性プラスチックを採用したノートパソコン「FMV-BIBLO NBシリーズ」です。これは、キーボードやマウス、ワンタッチボタンなどの一部の部品を除くプラスチック製品を、天然素材約50%のプラスチック(トウモロコシなどのでんぷんを主原料とするポリ乳酸)でまかなうもの。ノートパソコンの筐体に採用した場合、従来の石油系樹脂に比べ、筐体のライフサイクル全体でのCO2排出量を約15%削減できます。「情報通信産業は、素材、輸送、電気など、どれをとっても石油に大きく依存しています。

環境面、コスト面の両方の理由で、脱石油という大きな方向性に向かってトライアルする必要があります。」と佐藤氏は展望を語ります。

同社は今後も継続してこの技術を採用し、適用部品を拡大していく予定です。こうした植物系素材の他にも同社では、持続可能な社会構築に寄与する先進的技術の研究開発として、高濃度燃料で長時間駆動可能なマイクロ燃料電池、光触媒チタンアパタイトなどの研究が進んでいます。

株式会社富士通研究所HP
http://www.labs.fujitsu.com/jp/eco/research/researchindex.html

未来に向けて

このようにソフト、ハード両面からの革新を進める富士通が、持続可能な社会に向けて今直面する課題は何でしょうか。それは、海外などへの活動拡大に伴いグループ会社の環境負荷比率が高まっていることです。これについてグローバル会社として責任を認識する富士通は、2005年度には、ISO14001グローバル統合認証の取得をはじめとして、海外事業所を含むグループ全社で環境経営の体系を確立しました。このISO14001グローバル統合認証は、従業員約11万7,000人が参加する一大統合環境マネジメントシステムです。同社は今後このシステムを運用し、グローバルな負荷をグループ全体で軽減していく予定です。

今、私たちの生活のあらゆる側面に、情報通信革命の影響が及んでいます。情報技術の発展が、持続可能な社会の構築にどのように貢献できるのか。富士通は今、グローバルに展開する情報通信企業として、社会全体、ライフサイクルを見据えた環境負荷低減に正面から取組んでいます。同社からこれから次々と生まれるであろう、様々な技術・システム革新に期待しています。


(スタッフライター 小林一紀)

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