ニュースレター

2006年07月01日

 

LOHAS - 日本での展開

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JFS ニュースレター No.46 (2006年6月号)

「何だか最近大流行のヨガ。始めてみたら本当、自分の体がよくわかって気持ちいい。静かに自分の内面を見つめて、周りの人や自然に感謝できるようになったんです。」「子どもや家族の健康を考えたら、たとえ少々高くても、やっぱり農薬や化学物質を使っていないオーガニック食品がいい。でもそれって、よく考えると飲み水や空気にも関係してくることなんですよね。」「気に入って買った洋服は、フェアトレード。途上国で子どもに労働させたり、適正な賃金が支払われない事態を改善し、現地の人々が自立できるような仕組みを支援するんですって。ステキな洋服だけでなく、自分の行動がそんな風に役に立てるなんてとても嬉しい。」・・・・・。

今、こんな日本人が続々と増えています。これまでにも一部の人々の取り組みはありましたが、気になった人なら誰でも、肩肘張らずに気軽に生活に取り入れられるようになったきっかけは、何と言っても「LOHAS(ロハス)」という言葉の広がりでしょう。

LOHASとは、ご存知の方も多いと思いますが、Lifestyles of Health And Sustainability(健康で持続可能なライフスタイル)の略。米国で生まれたマーケティング用語の1つで、消費者をその考え方や行動パターンで区分した際の1つの層を表しています。伝統にとらわれることなく、かといって最新テクノロジーや社会的成功だけを追い求めるのでもない、オルタナティブな方向性を目指す新しい価値観をもった人々を指しています。主な特徴として、
1.環境・健康に関心が高く、実際に行動に移している
2.社会的課題に対して意識が高い
3.自己啓発や精神性の向上に関心が高く、購買意欲も強い
4.気にいった商品を家族や友人にすすめるなど、発信力が高い
ということが言えるそうです。

この言葉が、初めて日本でメディアに乗って紹介されたのは2002年の9月。同年6月米国で開催された第6回LOHAS展に初の日本人として参加した大和田順子さんが『日経新聞』や『日経エコロジー』にレポートしたものでした。続いて、この大和田さんを派遣した、環境コンサルティング会社のイースクエアが同10月にLOHASの名付け親であるポール・レイ博士などを招いて、国際シンポジウムを主催しています。米国ではLOHASという言葉は、あくまでマーケティングに携わる人々がセグメントとしてこの言葉を使っているので、一般の人々でこれを耳にする人はほとんどいません。日本ではこのようにメディアを通じて言葉が先に一般の人々に公開されたため、本場アメリカとは違った展開を見せています。

調査によれば、米国では人口の2-3割がこのLOHAS層に属しているそうです。日本でも2005年2月、米国とまったく同じ調査方法、分析手段によるインターネット調査を行ったところ、29.3%がLOHAS層であると判明しました。男女の比率はほぼ半々、学歴は大卒以上が55.6%と高学歴、年収も600万円以上の割合が半数近くに上っていました。

この調査からわかったLOHAS層の特徴は、「上昇志向を持ちつつ、人のためにも役に立ちたい」「自分の健康のため、環境に配慮する」「環境にいいことを行うのは、自分にとって気持ちが良い」「社会的課題全般に関心が高い」「消費をリードする力が大きい」「トレンドに敏感、ブランドイメージを重視」「環境、企業姿勢、つくり手のこだわり、気持ちよさを感じることを重視」「商品を買うときにその影響を考えて購入する」「商品の背景、自分のライフスタイルにどう役立つか、専門家からの評価を気にする」「マス以外の情報にも目を向ける」などといったものでした。

この調査は、日本の企業が何となく感じていた昨今の消費者の傾向を、数字としてはっきりと見せてくれるものになりました。このような価値観を好ましいと思う消費者が実際にいるというデータは、企業が新しいマーケティングの手段として取り組むための判断材料の1つとなったことでしょう。お話をうかがった大和田さんによると、実際、既に企業ではこのような価値観をもつ消費者を視野に入れた商品開発が進んできているとのことです。

ロハスの広がりを後押ししたのが、ソトコトというエコをキーワードにしたライフスタイル提案雑誌です。同誌は特に2005年の7月からは、ほぼ毎月さまざまな形でロハスを特集していることもあり、「これだけロハスが周知されたのにはソトコトの貢献が大きい」と評価している関係者も多いようです。一方で、このソトコトという雑誌の編集会社ほか数社は、「ロハス」という言葉をさまざまな分野にわたって商標登録しています。この商標登録に関しては、無断使用による問題が報道されたり、「商標ビジネスで儲けようとしているのでは?」と疑問視する声も少なからずあり、ロハスという考え方に反するものとして、バッシングもかなりありました。これについて同編集会社は「際限なく何でもロハスと銘打つことを食い止めることが当初の目的であり、今や一般化してしまった言葉なのでは」という見解を示しており、言葉の使用をめぐる問題については一応の落ち着きを見せつつあります。

さらに2005年夏頃から、加速度的に多くの雑誌が「ロハス」の特集を組み、テレビやラジオの番組でも耳にするようになりました。インターネットでロハスという言葉を検索すると、日本語のページだけでも237万件ヒットします(6月6日現在)。また昨年来、ロハスをテーマにした書籍の発刊も相次いでいます。

企業側から見ると、「環境・エコ」というのは、CSRという側面からもこれからの企業にとっては至上命題であるとはいえ、どちらかというと禁欲的な響きがあり、企業として全面的に推し進めるには訴求力が足りなかったと考えられます。そのなかで、メディアの後押しもあってスタイリッシュなイメージを伴った「ロハス」は、禁欲とはむしろ対照的に、消費によって世の中を変えていこうとする切り口なので、ビジネスを推進しながら社会貢献につながるという、企業にとっても大きなメリットを持ったアプローチです。「エコ」が企業の環境推進部門に働きかけたのに対し、「ロハス」は本来の目的どおり、営業やマーケティング部門の新しいキーワードとして浸透し始めています。

その動きの1つとして、2006年5月、さまざまな分野の企業への情報提供と、議論の場を提供するために、前述のイースクエアと広告代理店の電通、印刷会社の大日本印刷が主催する「ロハスマーケティングイニシアティブ」が発足しました。

当面一年間の予定で、年間6回の研究会が実施されます。参加募集は春と秋の2回ですが、春季は33社が集まりました。

また、2006年4月末に開催されたLOHAS10には、LOHAS-WORLDという日本の民間団体の企画・運営により、初めて日本企業も出展しました(JFSもパネル参加しました)。日本人が初めてLOHAS展に出席したのが第6回のときで、その後も日本人参加者は数名単位でしたが、今年は日本ルームを設け、7社が出展、約50名が参加しました。

オーガニック日本酒、お香、銀座のオーガニック旅館、そして竹の繊維でできたタオルやマフラー、Tシャツなど、「和のロハス」とでも呼べるような日本ならではの製品も展示され、LOHASの本場アメリカでも大いに注目を集めました。日本国内よりも、むしろ米国での展開の方が早いのでは、と感じた出展者も多かったようです。

個人レベルではどうでしょうか。

やはりメディアの力が大きく影響しており、ヨガやマクロビオティックなど、内外の有名人が取り組んでいることなどをきっかけに、これまで環境にはあまり関心を払っていなかった層へ大きく広がりを見せています。きっかけは「ロハス」という雑誌で目にした言葉にすぎなくても、結果として一歩立ち止まって自分の食生活を考え直したり、そこから派生して自分の周りのこと、さらには地球環境にまで思いを馳せるような人がどんどん増えていくとしたら、このロハス人気は一つの大きな役割を果たしていると言えます。「エコ」や「環境に優しい」では前を素通りしていた人々を、とりあえず店の中に引き入れているわけですから。

ただ日本ではあまりにも急速に広まったために、現時点では一過性のブームであるとか、流行語のような捉え方をされているのも事実です。ロハスはただの流行語か、それともライフスタイルの主流になっていくのか。数年後の市場、消費者意識の変化がそれを証明してくれることでしょう。

参照WEBサイト:
http://www.lohas-world.com/lohas10/index.html
http://www.bmshop.jp/cgi-bin/bms/list.cgi?ctg_id=soto


(スタッフライター 長谷川浩代)

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