ニュースレター

2006年01月01日

 

人と人とのうるおいを - 三国コカ・コーラボトリング株式会社

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JFS ニュースレター No.40 (2005年12月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第33回
http://www.mikuni-ccbc.co.jp/
http://www.cocacola.co.jp/corporate/eko/index.html

世界のブランド「コカ・コーラ」で有名なザ・コカ・コーラカンパニーは、世界200ヶ国以上で事業を展開しています。日本でもその法人「日本コカ・コーラ株式会社」が、製品の製造・販売を行う別法人であるボトラー14社とともに、多種多様な清涼飲料水を提供しています。

今や「いつでもどこでも」便利に購入できるこの清涼飲料水ですが、それだけに、自動販売機や缶・ペットボトルなどの環境負荷が増えていないか気になるところです。今月号では、製造・販売から回収・リサイクルを担うボトラーである三国コカ・コーラボトリング(埼玉、群馬、新潟の三県を担当)のインタビューを元に、コカ・コーラシステムの持続可能な社会づくりへの挑戦に迫ります。

環境への高い関心

「はじめまして。人と人をうるおすコカ・コーラです。」2005年8月1日、日本コカ・コーラは自らの新たな生まれ変わりを期して、全国紙に大きな広告を掲載し、反響を呼びました。「私たちは、人と人のかかわりの中で生きています。人と人が理解しあい、助け合って、家庭を、社会を築いています。(中略)私たちコカ・コーラは、ただ人をうるおすのではなく、人と人のかかわりもうるおす会社になりたい...コカ・コーラへの皆様のご意見をお聞かせください。」こうして1万を超える意見が集まりましたが、このうち約4割が環境に関するものでした。同社のHPではその代表的なものをみることができます。
http://www.cocacola.co.jp/uruosu

挑戦1.自動販売機の負荷と価値

寄せられた声を見てみると、「自動販売機」に関するものがひときわ目立ちます。例えば次のようなものです。「自動販売機の数って全国ですごい数になると思います。その1台1台に太陽発電などの省エネ設備を取り付けたり、保冷温度を1度上げたり、冷たさを選べるようにすれば、トータルでかなり違ってくると思うのですが、いかがでしょうか」。

三国コカ・コーラの金子俊雄 総務広報環境部長は、「確かに自動販売機の環境負荷は私たちが最も力を入れて取組むテーマの一つ」と言います。しかしまず台数を見てみると、意外なことに、自動販売機数は過去3年間で15%強減っていることに気づきます。「これは、各社との競争状況の中で増加の一途であった自動販売機台数の市場での最適化を追求した結果であり、効率化が図られたと同時に、環境改善にも結びついております」と金子氏は言います。

三国コカ・コーラの自動販売機は約9万台です。同社は1995年に、電力会社や自動販売機メーカーとコカ・コーラシステムが共同で開発した、環境に配慮した「エコ・ベンダー」を導入しました。これは、夏場の午前中に庫内の飲料を通常の設定温度より数度低く冷やし、電力需要のピークである午後には冷却運転を停止し、冷温を維持するというものです。その他、売れる直前の製品だけを冷やしたり、断熱材を開発したりするなどの工夫を重ね、この15年間で自動販売機単体での消費電力は50%以下に削減されました。これらの結果、2005年には全体の消費電力量は2000年比で約30%低減する見込みだといいます。また、2020年までにノンフロン自動販売機への切り替えを100%完了する予定で取組みが始まりました。

果たして今後の課題は何でしょうか。「社会にとっての新たな価値を提案していきたい」と金子氏は言います。確かに、自動販売機は人が通るあらゆるところにあるからこそ提供できる、インフラとしての価値があるはずです。三国コカ・コーラでは、犯罪などの際、通報出来るように自動販売機へ住所表示ステッカーを取り付け、また、災害時に必要な情報を発信できるメッセージボード機能を搭載した自動販売機を公共施設などに設置するなど、環境面はもちろん、地域や人間にとっても付加価値を生み出す提案を他社に先駆けて始めています。

挑戦2.「理想の容器」

もう一つ、多くの声が寄せられたのは容器についてです。例えば、「ペットボトルとガラス瓶ボトル、どっちが環境にやさしいのか教えてください」や、「ペットボトルでの販売からもう一度、昔のように小瓶回収制度に戻してほしい。ビンを冷やして飲む方がおいしかった気がします」などです。

三国コカ・コーラではアルミ缶、スチール缶、びん、ペーパーカップ、PETボトルなど商品ごとに複数の容器を使って、商品である飲み物(更にはそれによる「うるおい」というサービス)を届けています。果たして、理想的な容器とは何でしょうか。「最も環境にいいのはマイカップ」と金子氏はいいながらも、「現実的にはお客様にそれ以外の容器で提供せざるを得ない場合がほとんどで、また、容器だけを変えれば解決するわけではないのも事実です」と指摘します。

例えば、リターナブルビンは、容器リサイクルという点で優れていますが、一方では、ビンの製造・洗浄・運送時における環境負荷もあります。回収の過程で、工場と市場が近い場合はよいですが、離れると運送でのエネルギー使用が増えてしまいます。

ライフサイクル全体で環境負荷を把握して下げていく視点が必要です。この考え方で今取組むのが、「プリフォーム」というプラスチック容器の利用です。これは、従来の約7分の1のサイズで、飲料を充填する前に自社工場で大きく膨らますことができる容器です。これを使うことで、無駄に「大量の空気を輸送」することがなくなるといいます。

また、容器リサイクルの一元管理に挑んでいます。これは、「全体の最適化」という視点で、今まで拠点ごとにバラバラだった処理業者の選定や管理などのプロセスを一括でできるようにすることです。環境負荷とコストとをバランスよく最小化できる事例をすべてに適用することができます。このように、各容器・各側面だけでなく、全体の流れで効率を最適化することを模索しています。

挑戦3.社会全体の環境負荷

これまでの2つの挑戦を進めていった一つの結果として、「お得意先様への環境改善のご提案」という三国コカ・コーラならではの活動が可能になっていきます。これは、他社との自販機設置の競争が激しくなる中で、逆転の発想で、3台を1台に集約したり、効果的なリサイクルを提案したりすることで、自動販売機設置先であるお得意様へのサービスを向上し、環境負荷も下げるというものです。お得意先様にとっては運用の効率化が最終的にはコスト削減につながります。同社では毎年の環境目標の中に、各部門で何件の「環境提案」をするかを定め、継続的に実行しています。

「確かに機器の切り替えなどで一時的には投資を伴いますが、長期的には喜ばれます。自社の営業部門からも私たち環境チームに、環境の情報がほしい、商談に立ち会ってほしいという声が増えています。」と金子氏は言います。お客様の環境負荷を下げて、お互いの経営的利益にもつなげる。環境と経済の両立へ向けた取組みといえるのではないでしょうか。

私たちの社会は、「いつでもどこでも」の便利さを追求しすぎて、何かを犠牲にしていないか。例えば、自動販売機によるエネルギー使用やCO2排出量は増えていないか。缶やペットボトルの容器は本当に必要なのか。こうした疑問に対しては、一つの会社だけで答えを出せるものではなく、すでに答えがあるわけでもありません。

冒頭で紹介した同社のメッセージは続きます。「あらゆる活動を、私たち企業の一方的なアクションではなく、人と人の双方向で進めていくこと、そして、人と人の関係がうるおいに満ち、確かな実を結ぶこと。それこそが、世の中を豊かにしていくということだから。」人と人とのコミュニケーションから生まれるものを、信頼とするならば、三国コカ・コーラは、信頼の構築を環境活動の原動力にしようとしています。社会における企業のあり方を模索する真摯な取組みに、今後大いに期待がもたれます。


(スタッフライター 小林一紀)

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