ニュースレター

2005年12月01日

 

社会が変わる、日立が変える - 日立製作所

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JFS ニュースレター No.39 (2005年11月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第32回
http://www.hitachi.co.jp/

日立製作所は、日立鉱山の電気機械修理工場が母体となって1910年に創業し、国産初の5馬力誘導電動機を完成させたという歴史のある会社です。現在の日立グループは、情報通信システム、電子デバイス、電力・産業システム、デジタルメディア・民生機器、高機能材料、物流およびサービス、金融サービスの7つの部門で事業を展開し、高機能素材から発電プラントまで、幅広い領域で社会インフラシステムの構築に携わる企業集団です。

日立グループ(以下、日立)は、国内623社、海外529社で構成され、従業員数は、世界中で約34万人、2004年度の連結売上高は9兆円に上ります。海外での売上高比率は36%です。

日立は、創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献すること」を基本理念とし、国内外で活動してきました。「社会が変わる、日立が変える」のブランドメッセージには、日立の知識と技術を武器にして新たな事業分野に取り組み、よき企業市民として、よりよい社会への変革を担いたいという思いがこめられています。同社の世界各地での積極的な取り組みをいくつかご紹介しましょう。

エジプト政府が進めている緑地を増やすための国家プロジェクトの一つに「ムバラクポンプ場の建設」があります。これは、アスワンハイダムによって生まれたナセル湖から、砂漠地帯に毎日水を供給して、2250平方キロメートルの土地を緑地化する計画で、1998年に着手されました。ここに、日立製の大型ポンプ21台が使われています。

過酷な状況のなかで建物の建設とポンプの設置を同時に行なうという、過去に例のないプロジェクトでしたが、日立は、英国、エジプトの会社と国際コンソーシアムを結成し、5年間で完成させました。品質の確保とコスト削減のために、エジプトの協力工場で鋼材の加工・溶接を行なうこととし、技術スタッフを滞在させてきめ細かく指導しました。その結果、現地の雇用を生み出し、現地の人々への技術移転にも大いに貢献しました。
http://www.hitachi.co.jp/csr/highlight/2005/act0501/

中国の重慶市では、急速な自動車の普及による交通渋滞と大気汚染を緩和するため、2005年12月に跨座型モノレールを開業する予定です。日立は、車体がレールにまたがる跨座型モノレールを40年前に開発し、技術を蓄積してきました。重慶市でも現地での技術支援を行なっています。

モノレールは、地下鉄よりも低廉で工事期間が短く、定時性と輸送力の点でバスよりも優れており、ルート設定でも既存の建物や地形による制約を受けにくいという利点があります。日立は、環境負荷の低い都市交通システムの一つとして注目されているモノレールの開発を、持続可能な社会の構築に貢献する事業として力を入れています。

このようにグローバルに活動している日立にとって、国内外の1000を超えるグループ企業全体で環境負荷削減を徹底していくことは、きわめて重要な課題であると同時に、実現できれば大きな強みとなります。

2004年、日立は「環境に配慮したモノづくり」に対する考え方を明確にし、グループ共通のルールとしました。そして、そのルールを実現するための仕掛けづくりに取り組み、「環境CSR対応モノづくり規程」の策定と、そのための業務システムの構築を進めています。

エネルギー、リサイクルについては、過去から取り組んできて蓄積もあり、データを集計して進捗を図っていく仕組みが整っていました。しかし、化学物質管理については、製造工程で工場が排出する化学物質の測定はできていましたが、製品に含有する化学物質に関するデータを把握する仕組みは不充分でした。日立は、今後強まっていく化学物質管理に対する規制と情報公開の要請に応えていくために、最優先で、「製品含有化学物質一元管理システム」の構築に取り組んでいます。
http://www.hitachi.co.jp/csr/highlight/2005/act0502/

このシステムに則ると、まず製品の設計段階において、日立が禁止している有害化学物質を含まない部品を調達先から選びます。調達先のメーカーでは、部品に含まれる化学物質のデータを日立のデータベースに入力し、禁止物質の不含有保証書を提出します。

その部品を使った製品の固体番号あるいはロット番号と、部品の化学物質データをリンクさせて管理します。そして、製品固体の化学物質の含有量が管理基準に適合していることを確認した上で出荷し、出荷データもシステム上のデータベースに記録します。このようにして、部品の一点一点に含まれる化学物質について、調達から出荷までのトレースが可能になります。

日立グループ全体で扱う部品の種類は、年間150万点にのぼり、その調達先は7000社を超えます。また、日立もサプライヤーとして、多くの企業にさまざまな素材や製品を納入しています。その全てを一つのシステム上にデータベース化し、管理する仕組みは容易にできるものではありません。

しかし、いったんシステムを構築すれば、それまでグループ企業がそれぞれ個々に保有していた化学物質の使用情報を一元管理することが可能になり、グループ全体で適切な化学物質の管理を行っていくことができます。どの工場でどの部品が使われているかが分かるので、万一製品出荷後に部品に含まれる化学物質に関する不備が発見された場合でも、グループの全製品で、当該部品の使用の有無を即座に確認することが可能です。システム活用の次のステップでは、化学物質の使用量を把握することにより、より負荷の少ないものへの代替や、具体的な数値目標を設定して使用量を低減していくことができます。

システムの構築に当たっては、調達先メーカーの協力が不可欠です。その大半は中小のメーカーですが、日立は、調達先が化学物質の分析データを準備しやすいよう、データ入力を依頼する化学物質群を、業界団体であるグリーン調達調査共通化協議会で共通化している25物質群と一致させました。

また、日立は全ての調達先に環境保全活動の定着させるため、2006年度末までに、全ての主要調達先がISO14001などの外部環境認証を取得し、日立のグリーン調達基準を理解して協力する"グリーンサプライヤー"となることを目標に掲げています。中小メーカーに対しては、少ない費用で取得できる日立独自の視点を加えた環境マネジメント認証制度を制定し、コンサルティング活動も行なって、環境経営の推進を支援しています。現在までに、調達先の約7割がグリーンサプライヤーになりました。

日立の製品含有化学物質一元管理システムは、2005年6月からグループ内の3つの企業でモデル展開を行い、現在はグループ全体への導入を進めています。2006年6月のRoHS指令の施行までには、RoHS対象となるグループ企業約700社の全てで、このシステムが稼動する予定です。

グループ企業のみならず、調達先を含めたサプライチェーン全体で、環境負荷削減を推進しようとする日立の姿勢は、持続可能な社会に向けたグローバルな活動を支え、社会を変えていく大きな力になると確信しています。


(スタッフライター 西条江利子)

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