ニュースレター

2005年10月01日

 

"コンビニ"から"コンビに"へ - 株式会社ファミリーマート

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JFS ニュースレター No.37 (2005年9月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第30回
http://www.family.co.jp/company/eco/index.html

身近で便利なコンビニ

仕事が始まる前に、お昼の弁当やお茶を買う。夜郵便局や大きなお店が閉まったあと、宅配便を送ったり、電気代や保険料を払ったり、ATMでお金を引き出したり、週末のコンサートや映画のチケットを予約したりする。コンビニエンスストアは、こうした忙しい現代人のあらゆるニーズを捉えて、誕生からたった30年ほどで全国各地どこでもみられるようになりました。

ファミリーマートは、国内に6,500店、海外に5,300店超を構えている大手コンビニチェーンです。2008年には世界全体で20,000店を目指しています。標準的な店の面積は約120平方メートルで、食品・飲料、雑誌、日用品など約2,800アイテムがおいてあり、24時間オープンです。フランチャイズシステムで通常は店長が夫婦で経営し、15-20名ほどのスタッフが交代制で勤務しています。

気軽に何でも手に入る便利なコンビニエンスストアですが、便利であればあるほど、避けて通れない課題もあります。例えば、商品包装や売れ残った食材がゴミになる。24時間お店で電気を使わなければならない、などです。

「コンビニ」から「コンビに」へ

そこで今ファミリーマートは、「ただ便利で近いだけのコンビニ」からの脱却を目指しています。そして「お客様に心の豊かさを感じていただける、お客様にとって一番気持ちに近い、なくてはならない『コンビに』なりたい。」というビジョンを掲げました。

ただ単にモノを売るだけではなく、24時間営業の全国の店舗網を活かして社会に貢献するにはどうしたらよいか。この問題意識から、店舗を地域社会の拠点にする、また環境保全型のコンビニエンスストアとする、という活動を始めています。

取組みのひとつは、店舗を「地域のセーフステーション」、つまり「まちの安全・安心な生活拠点」とすることです。例えば常時には、緊急時の際の通報や、女性や子供などの駆け込みへの対応をします。そして地域の要所にネットワークを広げているコンビニエンスストアは、地震などの災害発生時に、生活必需品の供給を維持する重要なライフラインとなります。安否の情報や帰宅困難者の連絡拠点とするほか、本社からのメール配信で、全国約6,500店舗が瞬時に募金活動を開始できる体制になっています。これはまさに、地域に根ざしながら全国規模での情報系統をもつコンビニエンスストアのもつ強みです。

実際に2004年10月に「新潟県中越地震」が発生し多くの被災者が生まれたときには、ファミリーマートの商品調達や配送機能をフルに活用し、支援物資の提供と、全国の店舗での義援金募集を行いました。同年12月のインドネシア・スマトラ島沖地震の際にも、タイファミリーマートは緊急対策本部を設置し、奇跡的に被災を免れたプーケットの8店舗を通して地域住民や観光客のために臨時配送で商品を絶やすことなく営業を続け、ライフラインとしての役割を果たしました。

社会的メッセージを発信

もうひとつ、ファミリーマートが全国の店舗網を活用して行っているのが、社会的メッセージをのせたさまざまな情報発信をすることです。たとえば、世界の子どもたちの権利を実現するための支援活動を行うNGO「セーブ・ザ・チルドレン」に店頭募金を通じて協力しています。「これからも、さまざまな社会的メッセージに協力していきたい。」と同社社会・環境推進部の高橋哲さんは力強く語ります。

このように、常時・非常時を通じて、地域の安心・安全に貢献するインフラとなる。また、社会的キャンペーンを全国店舗網に乗せて発信していく。これがファミリーマートがお客様にとってなくてはならない「コンビに」なるための社会面における挑戦です。

「環境保全型コンビニエンスストア」

そしてもうひとつ、環境面での大きな挑戦が、「環境保全型コンビニエンスストア」となることです。「地球環境と永続的に共存しうる社会の実現。それはファミリーマートが思い描く『21世紀にあるべき環境保全型コンビニエンスストア』の姿です。」と同社は社会・環境報告書の中で述べています。

そもそも、店舗の環境負荷はどれほどなのでしょう。同報告書によると、使用量では、一店舗平均年間で、電気18万kWh、水道360立法メートル、フライ用油662リットル。そして排出量は、生ゴミ4.5トン、可燃ごみ8トン、廃プラスチック1.5トン...など。その他、商品の輸送のための燃料使用と排ガスなどがあります。一家庭(平均4人家族)と比べると、電気(4,000kWh弱とすると)は約40家庭分、生ゴミ(25kgとすると)は150家庭分以上となります。

「環境保全型コンビニエンスストア」を目指して同社がまず取り組まねばならないのは、電力消費量の削減です。24時間営業のため照明に多くの電気を使います。これを減らすため、きめ細かい取組みとして、店内を5つのゾーンにわけて必要な照度を調節しています。たとえば、雑誌コーナー天井の蛍光灯は、店外からの太陽光により採光して照度を落とします。そして2004年度には、業界としては初めて、新しい照明方式で圧倒的な省エネ効果をもつ白色LED(発光ダイオード)を表の看板に導入しました。「導入の初期コストは現行よりかかりますが、消費電力は半分以下です。今後は標準仕様として順次店舗に導入していければ。」と高橋さんは言います。また、従来は別々だった空調、冷蔵、冷凍の各機能を一体化し電気を効率よく利用する「総合熱利用システム」を導入して、電力削減に努めています。

次に、物流ではどうでしょうか。同社では従来からCNG(圧縮天然ガス)配送車を使用していましたが、充填スタンドの不足や1回の充填による走行距離が短いなどの課題がありました。そこでその心配がないハイブリッドトラックを、業界に先駆け実験的に投入。検証を経て、今後は全面的にハイブリッド車への切り替えを進めていきます。

資源循環ではどうでしょう。店舗運営面の取組みとして、フライ用商品の調理で使用した廃食用油を業者に回収してもらい、飼料などにリサイクルするシステムを導入。現在では一社による廃食用油回収リサイクルの拠点数としては約5,500店と、日本最大数となっています。また、賞味期限を過ぎて廃棄物となってしまう商品を生ゴミとして回収し、肥料・飼料へとリサイクルするシステムも導入。現在では約600店が取り組んでおり、引き続き対象地域を拡大していきます。

こうした業界を先駆けてのさまざまな取組みを行うファミリーマートですが、真の「環境配慮型コンビニ」への取組みは始まったばかりと考えています。今後の課題としては、例えば全店舗でのCO2排出量の把握と削減があります。また、環境配慮型の容器包装の導入を進めていますが、完全な生分解性の素材への切り替えはこれからです。安全性や安定性についての懸念を解決しつつ推進します。

持続可能な社会における、地域社会の拠点となり、社会的キャンペーンや環境配慮型ライフスタイルの発信元となる。「お客様にとって一番気持ちに近い、なくてはならない『コンビに』なりたい」と考える、ファミリーマートはこれからも要注目です。


(スタッフライター 小林一紀)

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