ニュースレター

2005年10月01日

 

世の中の役に立つ、生活を豊かにするコンテンツ事業とは - ゼネラル・プレス

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JFS ニュースレター No.37 (2005年9月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第29回
http://www.c-gp.com/

東京の都心、東京ドーム近くのビルの一室に、国内外約400の企業・団体の環境報告書を所蔵する「環境報告書ライブラリー」があります。2000年から毎年の報告書が揃っており、その数は日本一です。これは、環境報告書の作成支援も手がける編集制作会社ゼネラル・プレス(以下GP)が運営しているもので、予約をすれば誰でも閲覧できます。

日本では、700社以上の企業が環境報告書あるいは社会面の報告を加えた社会・環境報告書を発行しています。環境省の調査によると、環境報告書の発行企業は、上場企業の4割、従業員500人以上の非上場企業の2割近くに達します。

2000年に、国際的な持続可能性報告のガイドライン作りを推進するNGO、GlobalReporting Initiativeから「GRIサステナビリティ・リポーティング・ガイドライン」が発表されると、多くの企業が、環境の側面だけでなく、社会と経済の側面での説明責任を意識するようになりました。以後、CSRの実践は、企業経営の重要課題として取り上げられるようになっています。

GPサステナビリティ・コミュニケーション事業部 企画調査室 主任研究員の筑紫透さんは言います。「サステナビリティという言葉をCSRという言葉に置き換えることにより、企業の責任範囲が明確になりました。社会に対する自らの責任を果たすことによって、企業活動が持続可能になり、結果として社会や地球環境の持続可能性に貢献できるのです。今まで、環境問題との直接の関わりは少ないと考え、環境コミュニケーションに消極的だった非製造業に対しても、経済や社会に対する説明責任が問われることにより、レポーティングの裾野が広がりました。」

GPは、生協の個人対応型無店舗事業の商品カタログの編集制作を中心に請け負う会社として1995年に20名のスタッフで設立されました。同社は、与えられた情報を単に編集デザインするだけではなく、顧客のニーズと読者のニーズを読み取り、生活の中で活かされる情報として発信すること、顧客と読者を結びつけ豊かなコミュニケーションを創造することを目指して実行してきました。この姿勢が評価され、設立10年目でスタッフは120名、年間売上高33億円に成長しました。

星野健二郎代表取締役の強い思いであった、環境・持続可能性をテーマとするサステナビリティ・コミュニケーション事業がスタートしたのは、2001年のことです。この事業は、GPの経営理念の一つである「事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献すること」をもっとも強く推進する事業であり、企業の環境報告書の企画・作成支援を柱に、会社案内や入社案内、広報誌やウェブサイトなど、幅広い分野で企業とステークホルダーとのコミュニケーションを支援しています。

GPによる環境報告書作成の強みは、生活者向けのカタログや情報誌を数多く制作してきた経験を活かして「企業の思いを読者の心に深く刻み込むこと」にあります。第三者の立場で、企業の環境や持続可能性への取り組みに関わり、その企業の強みと弱みを見つけていく、それらと読者の知りたいことをつなぎ合わせ、さまざまな企画に落とし込んで表現していきます。読者の心に訴えかける表現で、環境・持続可能性コミュニケーションを進化させていくことを目指しています。

「日本の企業は思いを伝える力が弱い。担当者の熱意が伝わってくる報告書は少ない。」--星野さんとともに事業を立ち上げた筑紫さんは、日本の環境報告書の弱点をこう指摘します。「自分たちはどこへ向かっているのかを示し、未達成の課題は何か、そして、それに立ち向かう決意を伝えてほしいのです。自社の強みや達成できた課題を伝えるだけでは、自慢話にしかならず、かえって読者にマイナスイメージを与えかねません。」弱さを見せることではじめて、読者の共感を得られると言います。

例を挙げてみましょう。ある文房具メーカーのCSR報告書では、少子高齢化や災害など日本の社会が抱えている問題を5つクローズアップし、それに対して自社はどう対応しているのか、事業として何ができるのかを特集しました。メーカーの価値観の一方的な押し付けにならないよう、ステークホルダーの意見に対して企業の考えと実践を述べる対話形式で編集しました。その中にメーカーがこれから挑戦していく課題が述べられています。

もう一つ、GPが、読者に「読んでみたい」と思わせる環境報告書を作るために大切だと考えていることは、企業のブランドイメージとの合致です。環境コミュニケーションは、企業のブランド価値の向上に大きな役割を果たします。それは報告書から受ける視覚的な印象が、読者すなわちステークホルダーが潜在的に持っている企業イメージと一致していること、ステークホルダーが企業に対して抱く疑問や問題点の中でも、より優先度の高いものに的確に答えていることがポイントです。

GPが作成支援した住宅設備機器メーカーの報告書では、「お客様にとって自社の商品は一生に一度の買い物であり、自社のブランド価値はお客様との相互理解によって築かれていく」という企業姿勢を伝えるため、顧客や異業種や地域社会とのパートナーシップに焦点を当てて、あえて環境やCSRを前面に出さないタイトルやページ構成としました。報告書の表紙デザインや写真の使い方にもこだわり、その企業らしさを表現しました。

GPのサステナビリティ・コミュニケーション事業部には、その企画力、制作力を強化するためのR&D部門があります。筑紫さんが率いる「企画調査室」です。制作スタッフへの環境やCSRの専門知識の教育・指導とともに、サステナビリティ分野での情報収集と分析を担当しています。国内外の環境報告書を独自に分析した調査レポートを毎年発行、CSR関連の最新ニュースを紹介するメールマガジンやウェブサイトの作成、企業の環境報告書担当者を対象とするセミナーなど、この分野での啓蒙活動も幅広く行っています。冒頭に紹介した環境報告書ライブラリーの運営も彼らの役割の一つです。また、昨年発行された調査レポートの内容は、JFSニュースレターの2004年6月号でもお伝えしました。
http://www.japanfs.org/en/newsletter/200406.html#1

企画調査室の活動から導かれる分析結果や知見は、GPの制作スタッフを通して、企業の環境報告書作成に活かされていきます。筑紫さんは、環境報告書を作成していく過程そのものが、企業の環境・CSR活動のPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルにおけるC(チェック)の部分に当たると言います。「環境報告書の作成を通して、企業の経営層や担当者が、自社の環境・CSR活動の弱みに気づき、社会で必要とされる企業であるために何をなすべきかを考えるきっかけになってくれれば、と思います。それは、コンテンツ事業会社としての、持続可能な社会への貢献の方法の一つでもあります。」(筑紫さん)

CSRの推進において、企業とステークホルダーとのコミュニケーションは、非常に重要になっています。企業とステークホルダーが持続可能性のためにどんなコミュニケーションを図るべきか。GPは、これからも企業のよきパートナーとして、社会に貢献する環境・持続可能性コミュニケーションの提案と実現に取り組んでいきたいと考えています。


(スタッフライター 西条江利子)

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