ニュースレター

2005年10月01日

 

2005年版環境白書、脱温暖化

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JFS ニュースレター No.37 (2005年9月号)

"人"と"しくみ"づくりで築く新時代
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/hakusyo.php3?kid=222

はじめに

2005年版環境白書が、05年6月に公表されました。1969年に公害白書として初めて作成されてから、37回目の刊行となります。「脱温暖化 -"人"と"しくみ"づくりで築く新時代」をテーマとする今年の環境白書をご紹介しましょう。

このテーマは、05年2月の京都議定書の発効を受け、温室効果ガスの6%削減という日本の約束を達成するために、当面の取り組みを進めつつ、温室効果ガス濃度の安定化という究極の目的に向けての脱温暖化社会の構築に向けた取り組みを一層強力に進めていくことが必要であるとして設けられたものです。

京都議定書目標達成へ向けて

京都議定書の約束を確実に果たすため、4月に「京都議定書目標達成計画」が閣議決定されました。本計画の基本的な考え方は「環境と経済の両立」です。すなわち、温室効果ガス6%削減へ向けての取り組みが日本経済の活性化や雇用創出などにもつながるよう、技術革新や創意工夫を生かし、両立に資するようなしくみの整備・構築を図ることを目指しています。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=6699&hou_id=5937

具体的には、省エネ機器の開発・普及、エネルギー利用効率の改善、技術開発の一層の加速、環境意識の向上に加え、広範な社会経済システムの転換を伴う地球温暖化対策を実行し、さらに、世界をリードする環境立国を目指し、技術革新の促進を図るとともに、国、地方公共団体、事業者、国民の参加と連携を図り、そのための透明性の確保、情報の共有を図ります。これらを多様な政策手段を活用して推進し、定量的な評価・見直しを行うとともに、国際的連携を確保することなどが基本的な考え方です。
 
日本の温室効果ガス全体の基準年(1990年)排出量は12億3700万トン-CO2であり、6%削減を達成するには、第1約束期間(2008年-2012年)における排出量を年間11億6300万トン-CO2に減らす必要があります。しかし、2003年度における排出量は13億3700万トン-CO2、基準年比8.3%の増加となっており、削減約束との差は14.3%と広がっています。

部門別に見ると、排出量の約2割を占める業務その他部門、約1割を占める家庭部門、約1割を占める運輸(自家用自動車)部門からの排出量が大幅に増大しています。オフィスや家庭におけるエネルギー消費量の増大、旅客需要の増大などがその背景となっています。

これまでのさまざまな対策を現状通り実施した場合の2010年度時点での温室効果ガスの排出量は、基準年比で約6%の増加と見込まれています。従って、6%の削減約束を達成するには、従来実施している対策・施策に加え、さらに約12%相当分の排出を削減しなくてはなりません。

目標達成のための対策・施策として、次のようなものが挙げられています。

エネルギー起源CO2削減のためには、技術革新を利用した「エネルギー関連機器の対策」「都市・地域の構造や公共交通インフラを含む社会経済システムを省CO2型に変革する対策」など。非エネルギー起源CO2削減のためには、混合セメントの利用拡大等。メタン削減のためには、廃棄物の最終処分量の削減等。一酸化二窒素削減のためには、下水汚泥焼却施設などにおける燃焼の高度化等。代替フロン等3ガス削減のためには、産業界の計画的な取組、代替物質等の開発等。

また、健全な森林の整備、国民参加の森林づくり等、森林吸収源によって3.9%の削減を目指し、京都メカニズムによる共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)の海外における排出削減事業を推進することで、1.6%の削減を図るとしています。

同時に、事業所の温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度を構築し、国民に対しては、ライフスタイルの見直しへの取り組みを求めるメッセージを発信。すでに「チーム・マイナス6%」というスローガンで、国民運動を展開しています。

公的機関の率先的取り組みとしては、政府の事務および事業にともない排出される温室効果ガス量を公表し、夏の軽装(ノーネクタイ・ノー上着)を閣僚懇談会で申し合わせ、実行しています。また、サマータイム、環境税、国内排出量取引などの導入については、それぞれ今後の課題として総合的に検討するとしています。

脱温暖化に向けた人づくり、しくみづくり

脱温暖化社会を実現するためには、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動やライフスタイルを見直すことが鍵です。それには、家庭や職場などの身近なところから、無駄を省き、環境保全に自発的に取り組む「人」を育成していく「人づくり」が必要です。

家庭におけるエネルギー消費に起因するCO2の排出量は、日本全体の約14%を占め、1990年度から約3割も増加するなど、他の部門と比較しても顕著な伸び率を示しています。また、一人1日当たりのゴミの排出量は1kgを超えており、家庭から排出される生活排水は、一人1日当たり200-250リットルといわれています。

家庭において電気、ガスなどのエネルギーや水、紙などの資源の節約によって無駄をなくす取り組みを継続して行うことで、「意識せずにとっている環境に負荷を与える行動」を「環境を意識した行動」に変えることが大切であるとし、家庭を「人づくり」の原点と位置づけています。

白書では「家庭で簡単にできる主な取り組み」として38項目を挙げていますが、「ごみは分別する」「洗車はバケツで」「テレビは見る番組を決めて見る」などに家族全員で取り組むことで、家庭での環境教育を促進し、環境を意識した行動が社会全体に広がっていく効果も期待できます。

前述の国民運動「チーム・マイナス6%」では、「冷房は28度に設定しよう」「蛇口はこまめにしめよう」「エコ商品を選んで買おう」「アイドリングをなくそう」「過剰包装を断ろう」「コンセントをこまめに抜こう」の6項目を38項目の中から選んで集中的にキャンペーンしています。

企業や地方公共団体には、家庭に「環境家計簿」を配布しているところがあります。電気、ガス、水道、ガソリン等の使用量を記録し、目に見える形で、環境に配慮したライフスタイルの習慣づけをねらうものです。また、家庭の自発的取り組みを後押しするため、省エネ家電、低公害車の導入、太陽光発電システム、高効率給湯設備の設置等を促進するための家庭向けの融資や補助制度も設けられています。

学校も「人づくり」の重要な拠点です。学校における取り組みの例では、石川県立大聖寺高校が紹介されています。2002年から「いしかわ学校版環境ISO」に基づく環境マネジメントシステムを構築し、「京都議定書に挑戦!」をスローガンに掲げてCO2削減を図っています。全生徒及び教職員による節電、節水、ごみの削減等の取り組みにより、2003年度のCO2排出量は対2001年度比15.2%、可燃ごみ量は40.4%、紙使用量は44.9%削減できました。

最後に小池百合子環境大臣が本白書に寄せた巻頭言から一節を抜粋して締めくくりましょう。----「もったいない」とは、単にモノを使い惜しむのではなく、そのモノの持つ本来の値打ちや役割に着目して、無駄にすることなく、それを生かしていくための言葉です。私たちは、その「もったいない」という言葉の精神に立って、これまでの事業活動やライフスタイルを見直し、持続可能な社会を構築することを、世界へ発信していきたいと考えています。


(スタッフライター 小柴禧悦)

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