ニュースレター

2005年08月01日

 

3年目の節目を迎えるJFSのしくみと現状、今後

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.35 (2005年7月号)

2002年8月に設立されたJFSはまもなく3才の誕生日を迎えます。この号では、これまでのご協力にお礼申し上げ、今後のいっそうのご支援をお願いしつつ、JFSの現状とこれからについてご紹介したいと思います。

「ジャパン・フォー・サステナビリティ(Japan for Sustainability)」という名前には、私たちの2つの使命が込められています。「for」の「-のために」という意味から、「持続可能な世界のために日本にできること」----日本の取り組みや考え方、技術などを世界に発信して使ってもらおう。これが私たちの第一の使命です。

「for」には「- へ向かって」という意味もあります。「持続可能な日本に向かって」私たちはどうやって進んでいくのか? 日本のあるべき姿「ビジョン」について、セクターや立場を超えた多くの人々を巻き込んで議論し、そのうねりが持続可能な日本へ向けての推進力となる場を提供していきたい。これが2番目の使命です。

最初の使命のために、日本中から多くの持続可能な社会への動きを伝える情報を集め、そのなかから毎月30本の記事を日本語と英語で発信し、毎月ニュースレターを174ヶ国数千人のオピニオンリーダーたちに届け、海外との連携を深める活動をしています。

2つめの使命のために、日本のビジョンと持続可能性指標を考えていく「指標プロジェクト」を進めています(同プロジェクトについては、今後のニュースレターで詳しくご紹介する予定です)。そのほか、日本の方々にJFSを知っていただいたり、海外の識者を囲んでいっしょに勉強するなどのイベントを年間10本ほど実施しています。

JFSは現在、2名の共同代表を含む4名のコアメンバーと2名の常勤事務局スタッフ、10名近いパートタイムの事務局スタッフ、3名のインターン生たちが、3名の理事に見守られ、60を超える法人会員企業・団体と約250名の個人サポーターからの資金サポートをいただいて、活動をしています。

日本ではNGOに対する寄付控除がきちんと整っていないこと、NGOそのものが欧米に比べて歴史が浅く、社会における位置づけもようやく認識されるようになってきた段階であることから、日本の多くのNGOは資金難や人材難などの問題を抱えつつ、必死に活動しています。

JFSも例外ではありません。会員からいただく資金は小さな事務局の維持に充てさせていただき、毎月30本の情報発信をするための活動やさまざまなプロジェクトの運営は、約300人のボランティアの方々の力によっています。「JFSのヒミツはボランティア組織にあり」なのです。海外への情報発信というこれまで日本になかった活動を可能としているのは、この「21世紀型の新しい組織のあり方」だと思っています。

JFSは「アメーバ」みたいな組織です。かっちりとした組織体制が固まっているわけではなく、必要な作業があればチームを作り、作業が終われば解散し、2つのチームが1つになったり、1つのチームを2つに分けたり、その時その時の状況と必要性にあわせて、柔軟な形を取っています。

これはジャズ・プレイヤー方式とも言われます。基本的にフラットな組織で、「この指とまれ」式にやりたい人が集まってやり、目的が達成されたら解散するやり方です。組織を固定化しないこと、状況ややりたいことに対応して自在に変化し、責任と権限の委譲を進めていく自立・自律的チーム型を組織の基本としています。

JFSには「月に30本、日本の環境の取り組みを英語で世界に発信する」という基盤活動を支えるためのチームが10近く、指標やその他のプロジェクトやイベントのために時期を限って活動する特定目的チームもあわせると、30ほどのチームがあります。

新しい活動はボランティア全員の参加するメーリングリスト(ML)で参加者を募り、手を挙げてくれたメンバーでチームを作って進めていきます。ボランティア希望者には、その時のチームのリストをお送りして、興味のあるチームに参加してもらうしくみです。

では、毎月どのように30本の記事を日・英で作成し、発信しているのでしょうか?多くのチームが有機的につながって運営されているのです。まず、「情報収集チーム」が、各地域や業界などから「これは面白い!」という情報を見つけてきます。月に200本近く寄せられる情報のなかから、持続可能な社会をかいま見ることのできる情報や海外に役立ちそうな情報を選びます。

2番目の「和文作成チーム」が、関連情報を探したり、メールや電話で取材して、和文記事を作成したあと、「英訳チーム」が英訳します。「ネイティブチェック・チーム」が世界に通用する英語にしたあと、ウェブにアップします。ネイティブのチェックは、変更履歴が残る形で入れてもらい、英訳チームに戻します。自分の作った英語をネイティブが添削してくれるのですから、英語の力がつくと評判です!

このほか、世界の関心のありそうな方々にJFSのニュースレターを紹介する「海外配信先開拓チーム」、ウェブの運営にあたる「ウェブチーム」、海外からJFSに入ってくるさまざまな問い合わせ等に対応する「海外対応チーム」、海外からの問い合わせについて、国内の情報を検索し、和文・英文の記事として世界に発信する「リサーチチーム」などが活躍しています。

特別活動チームとしては、持続可能な日本のビジョンと指標を作ろうという「指標チーム」、米国カンザス大学の学生さんとの議論・交流から自国と世界について考える学生主体の「日米学生環境会議チーム」、日立環境財団の助成を得て、自然から学ぶバイオミミクリーの考え方や技術の情報を集め、内外に発信する「バイオミミクリチーム」、江戸時代の日本の持続可能な社会を英語で伝える「大江戸プロジェクトチーム」、JFSの本を出すための「出版チーム」、子ども向けのサイトの準備を進める「キッズチーム」、毎年12月に開催される日本最大の環境展示会へ向けての「エコプロダクツ展チーム」などが活動しています。

JFSの活動のほとんどはメールのやりとりで進められているため、日本の各地のみならず、海外在住の日本人のボランティアの方々もたくさんいます。自分の時間の空いたときに参加できるため、会社員や小さなお子さんのいる主婦の参加が多いことも特徴です。

JFSでは、「使命感」「達成感」「それぞれにとっての成長の場」を大事にする「思いのマネジメント」を意識しています。これは、「思いを重ねてもらう先を明示し続けること」「思いを重ねた結果、世界をどう動かせたかを伝えること」「思いを重ねた結果、自分も成長できることを伝えること」です。

「日本には、毎月30本ずつ、知恵や技術を満載して、元気や刺激を与えてくれる情報がこんこんと湧きつづけている泉があるんだよ」----情報の内容のみならず、この泉が希望と今後の方向性を示し続ける存在であることが、これから厳しい時代を迎える世界に役立つのだと信じて、今日もJFSでは、多くのボランティアさんが情報を集め、1本1本記事を書き、英語にし、ウェブに情報やリンク先を載せ、発信先を広げ、その他のプロジェクトを進めつつ、活動しています。

JFSではこれまで(7月29日現在)、953本の記事を発信し、35本のニュースレターをお届けしてきました。3年という節目を迎え、JFSではこれまでの活動がさらに効果的になるよう改善を続けるとともに、日本や世界を動かす効果的な介入ポイントを探しつつ、活動を続けていきます。ぜひいろいろなアイディアやフィードバックをお寄せ下さい。そして、世界の方々に、ぜひ「こういう活動をしているところがあるよ。日本の情報があるよ」と伝えていただけたらうれしいです。

(枝廣淳子)

English  

 


 

このページの先頭へ