ニュースレター

2005年01月01日

 

「IT、で、エコ」 - NEC(日本電気株式会社)

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JFS ニュースレター No.28 (2004年12月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第21回
  http://www.nec.co.jp/

「IT、で、エコ」。日本電気株式会社(以下NEC)は、この非常にシンプルな表現で、「ITやネットワーク技術を通じて持続可能な社会の構築に貢献する」という企業姿勢を明確に打ち出しました。2003年のことです。

日本のインターネット利用者は、2003年末現在7,730万人、人口普及率は6割を超えました。情報通信産業の市場規模は、116兆円(2002年)、1997年に建設業を上回って以来、日本で最大規模の産業になっています。実質GDPでは日本全体の11.5%を占め、1995年から2002年の年平均成長率7%増と、非常に高い成長を遂げています。(総務省「平成16年版 情報通信白書」より)

情報技術"IT"は、生活、産業、教育など、あらゆる分野でさまざまな変化をもたらし、社会基盤のひとつになっています。そして、持続可能な社会の構築においても重要な役割を果たすことが期待されます。

日本の情報通信産業の一翼を担うNECグループは、創業は1899年にさかのぼり、国内92社、海外103社の拠点があります。一貫してお客様の経営革新に役立つことを目指し、IT・ネットワークと半導体を核とするソリューション事業(お客様の問題を解決する事業)を行ってきました。従業員数は14万人を超え、連結売上高は4兆9千億円、そのうち海外の売上は21%を占めています(2004年3月末現在)。

NECの環境への取り組みは、1970年代の公害防止に始まり、80年代には地球環境問題に対応するための全社的な組織体制を整えました。まず取り組んだのは、パソコンや電話機などのハードウエアの生産に伴う環境負荷の低減で、たとえば、廃棄物の削減、化学物質の管理、CO2排出量の削減などです。現在もISO14001(環境マネジメントシステム)の全社的構築を通じ、継続して取り組んでいます。

90年代に入ると、LCA手法やグリーン調達などによって製品そのものを環境配慮型にしていく活動も加わりました。さらに、日本における製品の回収リサイクルシステムの構築、再生可能な素材の開発、環境情報の積極的な公開など、新しい取り組みにも挑戦しています。

このように、NECは、生産現場や形ある製品においての環境配慮を積み重ねてきました。しかし、この1-2年、ITの進展と企業の社会的責任への関心の高まりを受け、ITソリューションを提供する企業として、社会の要請にこたえ、取り組みを全社的にアピールしていくには、今までの延長線上ではない、新しい展開が必要だと考えるようになりました。

本業で、環境負荷を低減し、持続可能な社会に貢献するという目標に向かうためには、ハードウエアを担当する社員だけでなく、ソフトウエアの技術者や営業マンを含めた社員全員の力が必要です。社員一人ひとりが本業の中で意識改革をしてほしいという思いから、NECは、ITソリューションと環境配慮をむすびつけました。そして生まれたのが「IT、で、エコ」というコンセプトです。このコンセプトは社内での動機付けとなる同時に、社外に対してもNECの企業姿勢を強く印象付けるものとなりました。
http://www.nec.co.jp/eco/ja/

CSR推進本部 荒木久生さんは、「IT、で、エコ」にこめられた思いを次のように説明します。「今までのような成長する社会は限界に達しています。循環型の社会に向け、あらゆる場面で効率化を図っていかなければなりません。 全ての人々が豊かさと安全を確保し、環境効率を高めていく過程において、情報を広く、深く、漏れなく、見る、聞く、扱うこと、すなわちITは、大きな役割を果たします。」

ITをうまく使うことによって、効率の良い産業の仕組みを作ることができます。生産性を向上し、人や物の移動を減らし、紙を減らすなど、資源効率の向上や温暖化防止につながる地球環境への貢献が期待できます。そして、それは既に実現し始めています。

NECのお取引先である乳業メーカーでは、原料供給者から工場、営業部門、お客様までをシステムで管理するサプライチェーンマネジメントにITを導入しました。お客様の要望に合わせた最適な生産計画や在庫計画を作成し、トラックを満載にして製品を運ぶことによって、保管、廃棄される製品が減り、製品輸送を効率化できました。その効果をCO2排出量に換算すると、IT導入前と比較して約30%削減されたことが分かりました。

別のお取引先の製薬メーカーでは、営業マンがお客様から要望された製薬情報について、モバイル端末から社内ネットワークシステムにアクセスし、その場で回答できるシステムを導入しました。従来のように紙資料を持って再三お客様を訪問する必要がなくなり、端末やネットワークシステムの消費エネルギーを割り引いても、CO2排出量の約30%削減が見込まれるとのことです。

インターネットとパソコンを利用して一カ所に集まらなくても学習できるe-ラーニング、ウェブを利用したインターネット会議、コンビニエンスストアで発注と受け取りをするインターネットショッピングなど、NECでは、環境負荷低減効果が見込めるたくさんのエコ・ソリューションを開発しています。

「IT、で、エコ」は、まだスタートしたばかりで、広く一般に浸透している考え方ではありませんが、環境経営に関心の高い企業や自治体で少しずつ導入が進んでいます。荒木さんは、「ITの導入による環境負荷低減効果、例えばCO2排出量は、目に見える効果ではありません。効果を精度高くシュミレーションし、分かりやすく提案することが大切だと考えています」と言います。

反面、IT機器の活用拡大に伴って電力量やCO2排出量の増加といった地球環境への悪い影響もあります。

NECは、自ら事業活動にともなうCO2排出量と市場でのNEC製品の使用によるCO2排出量を合計しました。この合計に相当する年間500万tのCO2を、NECが提供するITソリューションを通じて削減しようと考えています。このようにして、2010年までに、自らの事業および自社製品の使用によるCO2排出量を相殺することを目指しています。

また、「IT、で、エコ」の一環として、ITの拡大によるマイナス影響を減らす取り組みも行っています。例えば、国内で中古パソコンを再生し再販売することによりパソコンの寿命を延ばすリフレッシュPCの仕組み作りや、ケナフ繊維を利用して強度・耐熱性・難燃性を高めたバイオプラスチックの開発および電子機器への実用化研究など、環境配慮型のIT機器の開発に力を入れています。

以上のような取り組みをいっそう加速していくために、NECは、「IT、で、エコ」を社員一人ひとりの意識の中に根付かせ、実践につなげることが不可欠だと考えています。そのための社内での環境教育を重視しており、e-ラーニングシステムを使った全員必須の環境教育などを実施、その成果を確認するために、2001年から毎年社員の環境意識調査を実施しています。

アンケートの回答結果によって、社員を、環境知識と行動力の2つの軸によって4つのグループに分類します。2003年度は、国内11,292人の社員を対象に調査した結果、環境知識が高く行動力もある「エコ・エクセレンス」グループが、全体の約1/4にのぼりました。

この調査からも、きちんと進捗を測りながら、社員の環境意識を高め、「IT、で、エコ」を実践する社員を一人でも多く増やしたい、というNECの意気込みが感じられます。ITの力によって、環境負荷は少ないが豊かな生活が送れる社会を築くために、これからも、NECの全社員が参画して、「IT、で、エコ」の可能性にチャレンジしていくことを熱く期待しています。


(スタッフライター 西条江利子)

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