ニュースレター

2005年01月01日

 

日本での廃棄パソコンの行方

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JFS ニュースレター No.28 (2004年12月号)

日本ではどれぐらいのパソコンが使われているのでしょうか? 2002年度のパソコンの国内出荷台数は984万台。そのうち約4割が家庭向けと推定されています。家庭向けパソコンはこの数年で急増しており、家庭での保有台数は、2001年度で、推定約2400万台、普及率は50.1%に達しています。

パソコンの寿命は、買い替え需要や部品の取り置き期間などから、3年から5年くらいと考えられています。このため、今後廃棄パソコンの量はどんどん増え年間8万トンになると試算されています。

このゴミの量を減らすとともに、パソコンに使われている鉄・アルミニウム・銅などの資源を再利用するために、パソコンのリサイクルを義務付ける法律、「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」ができました。事業系パソコンは2001年4月から、家庭系パソコンは2003年10月から、パソコンメーカーが自社の使用済みパソコンを引き取り、適切なリサイクル処理を行うことになっています。

使用済みパソコンを再資源化して得られる部品や再生資源の比率(重量)の目標も法律で定まっています。2003年度は、デスクトップ・パソコン50%、ノートブック・パソコン20%、ブラウン管式ディスプレイ55%、液晶式ディスプレイ55%です。

日本には、いろいろなリサイクル法がありますが、「リサイクル費用の払い方」に2種類あります。例えば、家電(テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機)は廃棄するときに払いますが、自動車は、新車購入時に払います。事業系パソコンは家電と同じように、廃棄するときにメーカーが事業者からリサイクル費用を徴収します。家庭系パソコンは、最初に買うときにリサイクル費用を払います。PCリサイクルマークがついたパソコンは、廃棄時に費用はかかりません。

ただし、法律が施行された2003年10月前に販売された家庭系パソコンは、販売時にリサイクル費用を徴収していないので、廃棄時にメーカーに連絡して、振替用紙を送ってもらい、リサイクル料金を支払います。そしてパソコンを梱包して、送られてきた専用伝票「エコゆうパック伝票」を見やすい場所に張り、郵便局の戸口集荷もしくは窓口へ持ち込んで回収してもらうしくみです。

リサイクル料金は各メーカーが定めることになっていますが、ほぼ横並びで、デスクトップ・パソコンの本体やノートブック・パソコン、液晶ディスプレイなどは3150円、CRTディスプレイの付いた一体型のパソコンは4200円という設定です。

有限責任中間法人 パソコン3R推進センターの発表によると、「資源有効利用促進法」に基づき、パソコンメーカーによる家庭系使用済みパソコンの回収の始まった2003年10月1日から1年間の回収実績は186,302台。この回収実績は「エコゆうパック」伝票の発行部数に基づき算出したものです(エコゆうパック伝票はパソコン本体、ディスプレイそれぞれに1台1葉で発行されています)。

メーカーでは、回収したパソコンを解体し、部品や部材に分解・分別し、それぞれの専門業者に引き取ってもらいリサイクルしています。リユース可能な部品はできるだけ取り出して、リペアパーツとして活かそうという取り組みもあります。

使用済みといっても、まだ十分に使えるパソコンも多く、日本では中古パソコン市場が拡大しており、パソコン市場全体の1割近くを占めるとも言われています。

NECでは、自社パソコンを購入した一般のユーザーからも中古パソコンを買い取り、点検し、きれいにして「リフレッシュPC」として販売しています。2004年5月からは、Office2003を新規にインストールするサービスも始めました。これは、実際には元のパソコンより性能を上げてリユースする「アップグレード」になりますから、注目すべき取り組みです。

また、埼玉県にあるNPO「ユニバーサルコミュニティセンター」で、使用できるパーツごとパソコンを廃棄してしまうのは、パソコンに関する知識を持たない人が多いためではないかと考え、パソコンの仕組みや組み立て方を指導するパソコン教室をスタートさせました。

パソコンは難しい物ではないこと、アップグレードや、メンテナンスはちょっとの知識があれば可能であるということなどを教えます。3ヶ月に1回くらいのペースでパソコン教室を実施していく予定だそうです。

パソコンの機能が古くなったり、故障した時でも、必要なパーツの交換のみで対処することができる人が増えたら、使用可能なパーは使い続けることができますから、結果的にゴミも減らせます。

中古パソコンをリユースのために市民団体などに寄贈して利用してもらおう、という活動をしているNPOもあります。イー・エルダーは、ITを使って、非営利団体の活動の活性化や、情報弱者の生活の質の向上に役立とうと、IT知識や経験、技術および意欲を持つ高齢者が活動しているNPOで「リユースPC寄贈プログラム」を運営しています。

企業から中古パソコンを提供してもらい、再生企業や福祉作業所に再生作業を委託し、非営利団体に送り出しています。マイクロソフトがソフトウェアを提供し、日本IBMが修理用部品や再生技術、セキュリティ管理の支援を行うなど、本業を通したコラボレーションによる再生が行われます。プログラムの運営費用は、日本IBMやマイクロソフトのほか、中古パソコンの提供企業が支援しています。

イー・エルダーでは、このプログラムを始めた2001年には、283団体に1025台のリユースPCを贈りました。2002年には731団体に2011台、2003年には808団体に3050台を贈っています

企業の社会貢献活動を支援するとともに、非営利団体の活動活性化を助けよう、パソコンのリユースを進めることで環境負荷も下げよう、パソコン再生という作業を通して、地域の活性化や障害者の雇用促進をしようという、幾つもの目的を同時に満たすプログラムです。

パソコンに限らず、原則は「リサイクルよりリユース」です。リフレッシュPCとして他のユーザーに使ってもらったり、リユースPCとして社会の役に立ててもらったりする取り組みは素敵な取り組みです。

将来的には、グレードアップしたいときにも、「CPUやハードディスクなど必要な部分だけ、高機能のものに取り替えられる」しくみができないでしょうか。キーボードやディスプレイ本体の寿命自体はまだ残っているわけですから。そうしたアップグレードが可能な「成長する製品」のコンセプトは多くの企業にあるのですが、まだ実現にはいたっていないようです。

一部がダメになったり古くなったときに、「全部取り替える」というのは、あまり洗練されたやり方ではありません。時代の最先端をゆくITビジネスが扱うパソコンですから、新しい「モノとのつきあい方」の提案が出てくることを期待しています。

私たちユーザーも、目先の新さに目を奪われるのではなく、本当に自分が必要としている機能を見極め、あと少しの工夫でパソコンを長く大事に使っていきたいものです。


(スタッフライター 米田由利子・枝廣淳子)

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