ニュースレター

2004年09月01日

 

循環型社会の実現をめざして、ゼロ・ウェイスト宣言のまち - 徳島県上勝町 

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.24 (2004年8月号)
シリーズ:地方自治体の取り組み 第7回


日本では大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済社会活動から、「循環型社会」の実現に向けてさまざまな法律が制定されています。2001年1月に施行された循環型社会形成推進基本法では、廃棄物は、第1に発生抑制、第2に再使用、第3に再生利用、第4に熱回収、最後に適正に処分するという優先順位が設けられ、環境への負荷を減らすために、あらゆる主体が取り組む社会がめざされています。

一方で、減少傾向にあるものの、依然として廃棄物は焼却や埋立て、海洋投棄という処分が続いています。焼却炉をはじめとした最終処分施設建設や焼却への依存は、温室効果ガスの発生、有害物質による大気や土壌汚染、健康や農作物への影響、自治体の財政圧迫などの深刻な問題を引き起こすだけでなく、廃棄物の発生源を抑制するものではありません。

このような問題の根本的な解決をめざして、2003年9月、日本の自治体初の「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町があります。徳島県の上勝町です。


葉っぱビジネスで高齢者がイキイキと働く町

徳島県上勝町は四国山脈南東の山地に大小55の集落が点在する町です。総面積109.68平方キロメートルのうち約85%は森林。人口約2200人、高齢化率44.32%という過疎と高齢化が同時進行している四国一小さな町でもあります。

上勝町はかつて木材と温州みかんが主な特産の町でしたが、木材は外材の輸入増大から、みかんはオレンジの輸入自由化から採算が取れなくなってしまいました。1981年2月には、マイナス13度という異常寒波に襲われ、ほとんどのみかんが枯死し、町の産業が大きな打撃を受けました。このような背景から、農家、農協、町などが協力して、「強靭な問題解決能力を中核とした人間形成」を重点施策とするまちづくりへの取り組みが始まりました。

この町は今、全国からたくさんの視察者が訪れる場所になっています。視察先のひとつは、高齢者による「つまもの」ビジネスです。つまものとは、料理に彩を添える四季折々の植物の葉や花などですが、1999年に町長を代表取締役として設立された株式会社いろどりは、モミジやサクラ、あじさい、ナンテンなど季節を表現する300種類以上のつまものを日本全国の料亭や市場に出荷し、年間に約2億5000万円の売上をあげています。同町の高齢者の収入源となっているのです。

このビジネスに携わっている人は約180名。平均年齢67歳の女性が中心で、80歳を超える人を含むすべての人がFAXとパソコンを活用して、市場の情報を共有しています。

このしくみは「葉っぱをお金にかえる魔法」と紹介され、農業活性化、過疎地のIT活用のモデルとしての評価を受けるとともに、高齢者が健康で誇りを持って生きる自信につながっています。


ゴミ分別34種類、収集車の走らない町

さらに注目されていることが、ごみに対する取り組みです。上勝町では収集車がごみを収集するのではなく、町内に1ヶ所だけあるゴミステーションに住民がごみを持ち込みます。持ち込まれたごみは、そこで34種類に分別され、徹底した資源化が図られています。

ごみステーションは毎日午後2時まで開いています。ステーションに持ち込めない高齢者のためのボランティア団体も誕生し、ステーションでは毎月第4日曜日に衣類や書籍などのフリーマーケットも開かれるようになりました。

上勝町のごみ対策は、3割を占める生ごみを堆肥化することから始まりました。1995年には全国で初めて生ごみ処理器の購入費の補助制度を実施。1991年から始まっていた野外用生ごみ処理器への補助とあわせ、現在はほとんどすべての家庭で堆肥化が行われています。

1997年の容器包装リサイクル法の施行以降のごみは19分別化され、リサイクルできないものは、町内にある2基の小型焼却炉で焼却処分されてきました。その後、分別は25種類に増え、2000年のダイオキシン類特別措置法の施行をきっかけに小型焼却炉を閉鎖。ごみはさらに34分別になり、現在は約79%が再資源化されています。


ゼロ・ウェイストへの取り組み

2003年9月19日、上勝町議会は日本の自治体では初めての「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。前文で、現在の焼却を中心とする政策は、廃棄物の発生を促し抑制にはつながらないことなどを明らかにし、2020年までに上勝町の焼却や埋め立て処分するごみをゼロにするという目標と、目標達成のために、国や県にごみの発生を抑制する法整備などのしくみづくりに最大限の努力を求めるなど、5つの行動宣言が記されています。

「ゼロ・ウェイスト」は、1996年にオーストラリアの首都キャンベラで始まったごみ政策の考え方で、ごみをゼロにするのではなく、無駄をゼロに近づけるという意味が含まれています。ニュージーランドやカナダなど多くの国の自治体で取り入れられており、2003年7月、上勝町を訪問した米国セント・ローレンス大学のポール・コネット教授によって、町に紹介されました。

上勝町のゼロ・ウェイスト宣言では、地球をよごさない人づくりに努めること、地球環境をよくするために世界中に多くの仲間をつくることも宣言しています。そのために、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーの設立が計画されています。すでに組織をつくるための人材の公募が終わり、本格的な活動に向けた準備が進んでいます。

上勝町の笠松和市町長は、ゼロ・ウェイスト達成のために、国や徳島県に対して商品の回収を製造者に義務付け、回収できない商品は製造・販売を禁じる法律の制定(拡大生産者責任)を求める意見書を提出したり、ゼロ・ウェイストの精神を日本各地に出向いて講演をするなど、精力的な活動を行っています。

このような上勝町の一連の取り組みは、環境省の2004年度「環境と経済の好循環のまちモデル事業」の対象地域となり、日本政府の構造改革特区や地域再生計画としても承認されました。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=5683&hou_id=5032

日本の各地で、「自分たちのごみを何とかしたい」という自治体や住民の取り組みが広がっています。小さな町から発信された「ゼロ・ウェイスト」という大きな言葉と取り組みが、日本の津々浦々に広がる日が1日でも早く来ることを期待しています。

参考 http://www.kamikatsu.jp/(上勝町役場)


(スタッフライター 八木和美)

English  

 


 

このページの先頭へ