ニュースレター

2004年07月01日

 

日本の環境報告書白書からわかる、日本企業の動向

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JFS ニュースレター No.22 (2004年6月号)

環境報告書を発行している日本企業は約600社ともいわれますが、JFSの法人会員でもあるゼネラル・プレスは、日本の国内企業285社が2003年度に発行した環境報告書を対象に、調査を行い、「環境報告書白書2003」を発行しています。今回は、この白書から、日本の環境/持続可能性報告書の現状と動向をご紹介します。

まずタイトルですが、「環境報告書」231社(81.1%)、「社会・環境報告書」30(10.5%)、「レスポンシブル・ケアレポート」9社(3.2%)、「サステナビリティ・レポート」8社(2.8%)、「環境経営報告書」5社(1.8%)、「CSRレポート」2社(0.7%)。アニュアル・レポートと統合した形で発行している企業はありませんでした。「環境報告書」から「サステナビリティ・レポート」や「CSRレポート」への移行という近年の特徴は、今後も拡大すると考えられます。

報告書の内容は、「環境のみ」65.2%が多いですが、コンプライアンスや社会貢献活動、労働安全衛生など、環境以外の社会面も盛り込んだ、「社会・環境」の構成となっているのが27.4%。全世界で適用可能な報告書のガイドラインづくりを推進するGRI(Global Reporting Initiative)によるGRIガイドラインに準拠し「経済、社会、環境」のトリプルボトムラインの構成になっているものは、6.7%でした。

ガイドラインについては、50.9%が「環境省ガイドライン」に「準拠、参考、参照」したと記載しており、30.2%が「GRIガイドライン」を「参考、参照」した、と記載しています。

内容については、82.8%が環境会計を報告書に掲載しており、7.7%が環境対応の進捗度を統合的に捉えるための指標として、「環境効率(売上÷環境負荷)」や「ファクターX」などを独自に導入し、その結果について記載しています。また、海外事業所の取り組みを掲載する企業が大幅に増加し、21.8%となりました。

CSR(企業の社会的責任)への関心の高まりを背景に、21.8%の報告書で、経営者緒言においてトップがCSRについて言及しています。9.8%がコーポレート・ガバナンスについて記載。コンプライアンスに関する記載は、相次ぐ企業不祥事を契機に、企業に対しアカウンタビリティを求める社会からの要請が強まっていることや、コンプライアンス部門などを新設する企業が増えたことを背景として、昨年から大きく増え、24.9%となっています。

また社会面について、ステークホルダーに対する取り組みを個別に報告する企業も見られました。「お客様」(20.0%)、「従業員」(62.5%)、「取引先」(6.0%)などです。

トリプルボトムラインの観点から、「経済」について記載している企業は7%ありましたが、ほとんどが売上高・経常利益の推移などの財務情報などの記載にとどまっています。

読みやすい報告書をめざしてさまざまな工夫が凝らされるようになってきています。たとえば、巻頭にダイジェストやトピックスで一年間の主要な活動を紹介したり(38.6%)、コラムや読み物を入れたり(47.4%)、従業員のコメントでリアリティと親しみやすさを出したり(36.8%)しています。

30.2%が第三者レビューを実施しています。監査法人による第三者審査が最も多いですが、環境NPOや有識者などに企業に対する率直な意見を述べてもらうという第三者レビューも増えています。また、事故や違反などのマイナス情報を開示する企業は16.8%でした。

報告書自体の環境配慮に気を遣う企業が多く、77.5%が大豆油インクを使用、有機溶剤を一切含まないnon-VOC大豆油インクの使用も9.1%と昨年より増加しています。78.2%が再生紙を使い、ケナフや竹などの非木材紙の利用が4.9%、またFSC認証紙の利用も7%と増えています。

紙媒体だけではなく、総合サイトとしてのウェブの構築をする企業が増えており、66.3%。冊子には掲載しきれない詳細データや更新情報をウェブで公開している企業は22.8%です。

以上、ゼネラル・プレスの発行した「環境報告書白書2003」から、主なデータと分析を紹介しました。
ゼネラル・プレス http://www.c-gp.com/

全般的に、内容的には「環境」だけから、「社会・経済」面も入れようという動きが大きくなり、その指針として、環境省やGRIのガイドラインを参照する企業が多くなっています。また、ただ報告書を発行するという段階から、コミュニケーションのツールとしての位置づけをする企業が増えるにつれ、読みやすさの工夫やネガティブ情報の開示、ウェブとの連動も増えています。

これらの動きは、ステークホルダーに対する意識の広がりも含め、日本企業のサステナビリティへの取り組みの現状と方向性を示すものでもあります。


(枝廣淳子)

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