ニュースレター

2004年06月01日

 

「天然ガスの可能性を追求する」 - 東京ガス

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JFS ニュースレター No.21 (2004年5月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第11回
  http://www.tokyo-gas.co.jp


東京ガスは、首都圏を中心に都市ガスを提供する、日本最大の都市ガス会社です。同社は、1885年の設立から現在までの約120年にわたり、一貫して都市ガスの安定供給に努めてきました。2003年度末(2004年3月末)時点で、約8,800人の従業員を擁し、約940万件のお客さまに対し、都市ガス約110億立法メートルを提供し、約1兆140億円の売上高、約1,160億円の経常利益を上げています。

都市ガスの主原料は、現在は天然ガスです。同社は、1969年に日本で最初にLNG(液化天然ガス)を輸入し、1972年から天然ガスを原料とする都市ガスの供給を開始しました。現在はアラスカ、ブルネイ、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、カタールの6カ国から長期契約によりLNGを輸入しています。輸入されたLNGは国内のガス製造工場で気化され、熱量を調整したうえで、ガス導管を通してお客さまに届けられています。

天然ガスは、石炭・石油等の他の化石燃料に比べ燃焼時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)や酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)も全く排出しないため、クリーンなエネルギーといえます。
http://www.tokyo-gas.co.jp/env/gas/category01.html

このようによりクリーンなエネルギーである天然ガスは、1999年度では日本の一次エネルギー供給量の12.7%を占めていますが、政府の「長期エネルギー需給見通し」によれば、2010年度には13.2%-14%を占める見通しとなっています(総合資源エネルギー調査会 報告書 2001年6月より)。

環境経営のトップランナーを目指し、「地球環境問題の改善に貢献する」ことを企業行動理念に掲げる同社は、持続可能な社会づくりにどのような役割を果たしつつあるのでしょうか?

同社は、自社の事業活動(ガスの「生産」「供給」)とお客さまのエネルギー使用(ガスの「使用」)の両方の場面で、環境負荷低減に取組んでいます。

先ず「ガスの生産(=ガスをつくるとき)」では、輸入したLNGを海水で加熱・再ガス化して都市ガスをつくっています。LNG導入に伴う製造効率の向上と製造設備の省エネ化等により、ガス製造時のエネルギー使用を大幅に抑制しています。また、LNGの-162℃の冷熱を、発電や冷凍倉庫、ドライアイスの製造などに有効利用する取組みを進めています。これらの取組みにより、ガス製造量あたりのCO2排出量は、2002年度には90年度の約4分の1程度に抑制しています。

次に「ガスの供給(ガスをお届けするとき)」をみてみましょう。ガス導管の埋設工事は、道路を掘削して行うため、掘削土やアスファルト・コンクリートが発生します。同社は、掘削残土を削減するため、「非開削工法」等の新工法を導入し掘削残土を減量化するとともに、発生した掘削残土を再利用・再資源化する取組みを進め、99年度に約150万トン排出していた残土を、2003年度には約50万トンに抑制しています。また、廃ガス管のリサイクルと再利用も積極的に進めています。

そして最後に、「ガスの使用(ガスをお使いいただくとき)」です。お客さまが都市ガスを使用する際CO2が発生します。同社は、お客さまのエネルギー使用における環境負荷を低減するため、電気と熱を効率的に利用できるガスコージェネレーションシステムの普及や、よりエネルギー効率の高いガス機器などのより燃料効率の良い製品の提供に努める一方で、環境にやさしい食生活「エコ・クッキング(※)」の普及活動をしています。

実は日本のガス会社にはこのエコ・クッキング活動を展開するところが増えています。これは、環境問題への気づきの場として、「食」を通して、「身近な題材で、体験的に楽しく考えよう」というコンセプトのもと、買い物から料理、片づけに至るまでの一連の流れを通して環境に配慮した食生活を提案するものです。東京ガスでは、1995年からエコ・クッキング講座を開催し、2003年度には15,700人(開催数:500回)が参加。自社の料理教室やショールームだけにとどまらず、行政・企業・NGO/NPOや学校と連携して講座を幅広く開催しています。
http://www.tokyo-gas.co.jp/ecocom/ecocooking
http://www.tokyo-gas.co.jp/ecocooking (子供向け)

同社が地域や学校に対し無料で配布している小冊子『エコ・クッキング読本』には、買い物・料理・片付けに際して、ガスや電気の使用からくる環境への負担を減らし、更に経済的にも得をするヒントが書かれています。例えば、料理のところでは、「なべ底からはみ出さない程度の火加減が一番エコ」「ふたや落しぶたをするだけで熱効率がぐんとアップ」「鍋底の大きな鍋の方が、短時間で効率よくお湯を沸かすことができます」「お湯を沸かすなら、熱効率のよい給湯器からお湯を注いで沸かすほうがお得です」などです。

それぞれのケースで、ガス使用量、CO2排出量、そしてガス料金を対比させ、エコ・クッキングをすると環境にも家計にもいかにいいかを一見してわかるように示しています。例えば、24cmの鍋で大根の煮物を一日一回、365日したとして算出すると、落しぶたをしない場合では、年間でガスは33立法メートル、CO2排出量は79kg、ガス料金は3,673円かかりますが、落しぶたをすればガスは13立法メートル、CO2排出量は31kg、ガス料金は1,422円ですむといった紹介がされています。この小冊子ではまた、各料理のレシピやエコ・クッキングをするためのポイントを掲載しています。実際の料理教室においては、エコ・クッキングの効果を体感してもらうために、班ごとに、水、ガス、電気の使用量を計測し、実際にその差を確認してもらうこともあるそうです。

ガスのお客さまとともにCO2排出を減らす活動を展開する一方、同社は来たるべき水素社会に向けて積極的に技術開発をすすめています。そのなかでも力をいれているのが、燃料電池です。
http://www.tokyo-gas.co.jp/pefc/index.html

燃料電池は、水素と空気中の酸素との化学反応により発電するシステムで、CO2やNOxの排出量が少なく、排熱も有効に利用できるという特徴があります。既に定置用電源として実用化されている燃料電池には、りん酸形燃料電池(100kW-200kW)があり、環境問題に関心のある需要家や熱需要の多い病院などを中心に、2003年度末までに、同社管内で61台(9,780kW)が導入されています。

また同社が2004年度末から市場に導入すべく開発を進めているのが、固体高分子形燃料電池(PEFC)を用いた家庭用燃料コージェネレーションシステムです。このタイプの燃料電池は、「始動性がよい」「小型・軽量化が可能」「構成材料が安価」という特徴をもち、家庭用コージェネレーションのほか、自動車用や携帯用など幅広い分野で開発が進められています。同社では、「電気も出る給湯器」をコンセプトに、都市ガスからお湯と電気を取り出すシステムとして開発しています。従来のシステム(給湯器を使い、さらに電気を火力発電所からまかなう)に比べて、一次エネルギー消費量が約20%近く、CO2排出量は30%近く削減することが可能としています。
http://www.tokyo-gas.co.jp/techno/index.html

燃料電池自動車の燃料として、水素やメタノール、ガソリンなどがあげられるなか、同社は、天然ガスから作った水素の供給をめざして、水素ステーションの建設プロジェクトにも参加しています。同社は、持続可能な社会に向けて何ができるのかを念頭に、クリーンなエネルギーとしての天然ガスの導入からそれを効率的に利用する製品の追及へ、また、自社の事業活動のみでなくお客さまのエネルギー使用の両方の場面での環境負荷低減へ、そして、水素社会に向けた技術開発から市場への製品投入へと、様々な事業を展開しています。「環境経営のトップランナーとして地球環境問題の改善に貢献する」ことを企業行動理念に掲げる東京ガスの挑戦はまだまだ続きます。

※「エコ・クッキング」は、東京ガスの登録商標です。

(スタッフライター 小林一紀)

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