ニュースレター

2004年03月01日

 

地域ぐるみで環境マネジメントシステムの構築、ISO14001自己適合宣言へ - 長野県飯田市

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JFS ニュースレター No.18 (2004年2月号)
シリーズ:地方自治体の取り組み 第4回


まちのシンボルは「りんご並木」

長野県飯田市は、日本のほぼ中央、南アルプスと中央アルプスの間に位置し、恵まれた自然環境と豊かな文化をもつ元城下町です。人口約106,000人。天竜川の河岸段丘の上にできたこの街には、かつて小京都と呼ばれる美しい町並みがありましたが、1947年の大火で市街地の大半が灰となりました。

大火の教訓から、市街地を東西南北に貫く25メートル道路緑地帯が防火帯として作られました。そこに市内の中学生の、「春にはりんごの白い花のかおりが、そして秋には真っ赤なりんごが実るりんご並木にしよう」という提案で、りんごの植樹が計画されました。

「盗む者がいないような美しい心をもった人が住む街をつくることこそが美しい街ではないか」という中学生の願いは、りんご並木の実現とさまざまな物語を生みました。50年が経過した現在も中学生の手で守り育てられているりんご並木は、中心市街地を再生するためのワークショップの意見を取り入れ、歩行者優先の公園型道路になっています。 
http://www.city.iida.lg.jp/namiki/home.html


地域ぐるみで飯田版環境ISOの取り組み

「りんご並木のまち」と「人形劇のまち」としてのイメージが定着している飯田市は、環境都市としてもその名を高めつつあります。1996年、市は第4次基本構想で、目指す都市像を、「人も自然も美しく、輝くまち-環境文化都市-」とし、一貫してサステイナブルなまちの形成をはかるプロジェクトを推進してきました。

96年に策定された環境基本計画「21'いいだ環境プラン」では、2010年までに効果的な推進を図るため、目標値を具体的に設定しました。5年後にはこれまでの取り組みを評価・分析するとともに、見直しを実施。見直しは、市民で構成された「飯田市環境市民会議」と、市職員からなる「ワーキンググループ」により約1年間をかけて行いました。

新エネルギーの分野では、97年より家庭の太陽光発電システムの設置に対して、市独自の支援(資金融資、利子補給金交付)を実施。太陽光発電の普及率は現在全国でもトップクラスになっています。今後はバイオマスエネルギーの導入なども検討されています。

97年には、ISO14001の認証取得をめざしていた飯田市内の企業5社と飯田市役所で、「地域ぐるみでISOへ挑戦しよう研究会」が発足しました。

この研究会は、名前を「地域ぐるみ環境ISO研究会」に変更し、現在では、「点」の活動を地域での「面」の取り組みに発展させようという参加事業所が30社近く。各社がISOの認証を取得した後も引き続き持続可能な地域づくりをめざして、環境改善活動の裾野を拡げるさまざまな取り組みを進めています。

さらに、ISO14001の基本的な取り組みを、簡易なシステムとして展開する飯田版環境ISO「南信州いいむす21」の登録認証制度をつくり、南信州地域でEMS(Environmental Management System:いいむす)を21世紀に展開していく取り組みも始まりました。

この活動は、無理のない計画を立てて環境改善活動を実施し、地域ぐるみで環境保全に挑戦しようというものです。「地域ぐるみ環境ISO研究会」が環境に配慮した活動を行っている事業所を推薦し、「南信州広域連合」に登録・公表します。これにより参加した事業所の信頼度の向上やイメージアップ、さらにはコストダウンをはじめ事業の業績アップにつながることが期待されています。
https://www.city.iida.lg.jp/site/kankyouseisakujouhou/isokenkyuukai


飯田市役所ISO14001自己適合宣言へ

2000年1月、長野県内初の自治体として「ISO14001」の認証を取得した飯田市役所は、2003年1月、3年間のISO14001の登録有効期限を前に、外部の審査機関による更新審査を受けず審査登録を継続しないことを決め、ISO14001自己適合宣言へと移行しました。日本の自治体では初めてです。

これまで、市役所独自の方式「いいむす21」を構築・運用するという挑戦や、地域ぐるみの研究会による連携、外部からの客観的な評価、内部監査の実施、職員への教育訓練を重ねてきたことがその背景です。

市では、これを審査登録よりも厳しい自己責任を伴うものと受け止めており、今後も国内外のさまざまなネットワーク活動を通じて、地球規模の連携の強化を図ろうとしています。また、ホームページなどを利用して、積極的な情報公開を進めていく予定です。


まちづくりの原点「むとす」の精神

「ISO14001自己適合宣言」「地域ぐるみ環境ISO研究会」「いいむす21」「南信州いいむす21」、このようなさまざまな環境への取り組みは、「自分たちのまちは自分たちでつくろう」の精神を原点としています。

それを表している言葉が「むとす」。日本の代表的な辞書『広辞苑』の一番最後の言葉「んとす」と同義語で、「今まさに-しようとする」すなわち、「誰かに言われてからではなく、自らが進んで主体的にものごとを始める」という意味です。

中学生のイニシアティブで始まり、市民が協力して実現したりんご並木の例にみられるように、飯田市の積極的な取り組みの真髄は、市民の中にある「むとす」という自律の精神にあるといえます。

2004年5月26-28日には、第12回環境自治体会議が飯田市で開催されます。環境自治体会議は、環境に配慮した行政の推進に取り組む全国74の自治体のネットワークです。日本中の自治体が、「飯田らしい取り組み」を感じ、学ぶ機会となることでしょう。

環境自治体会議:http://www.colgei.org/
飯田市環境情報ページ:https://www.city.iida.lg.jp/site/kankyouseisakujouhou/


(スタッフライター 八木和美)

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