ニュースレター

2004年03月01日

 

環境問題に取り組む大学・大学生

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JFS ニュースレター No.18 (2004年2月号)

ここ数年、環境問題に熱心に取り組む大学や大学生が増えてきました。

環境問題に対する大学の動きには、(1)環境問題に関する学部や学科の創設による人材育成、(2)ISO14001取得などを通じて大学の環境負荷の低減 などがあります。

日本では、1960年代に公害が大きな社会問題となりました。それを受けて、国立大学の理系学部などに「環境」と名づけた学科が数多く設立されました。

1990年前後から、温暖化をはじめとする地球環境問題に対する社会の関心の高まりを受けて、「環境」学部や学科の設置がふたたび増えています。新規に学部や学科を立ち上げる場合もありますが、既存の学部や学科を統廃合して学部名・学科名を「環境」と変更する場合もあります。

国立大学だけではなく、公私立大学でも、理工系だけではなく、人文社会系でも、このような動きが見られることが今日の大きな特徴です。

環境先進都市をめざす北九州市にある北九州市立大学は、2001年に国際環境工学部という新学部を設立しました。環境問題に取り組むために必要な基本となる工学を身につけるとともに、環境問題の解決に欠くことのできない文化や社会の知識、外国語やコンピュータを自由に操る能力にも力を入れ、カリキュラムを組んでいます。また、日本だけでなくアジアの国々や世界に貢献したいとの思いから、海外からの留学生を積極的に受け入れています。

また、芸術系の大学でも新しい動きが出てきています。東京造形大学では2003年度より、デザイン学科に「サステナブルプロジェクト」という新しい専攻領域を創設しました。
http://www.zokei.ac.jp/university/index.html

地域の社会構造、行政と産業、交通や物流、エネルギーなどの新しい社会システムを提案し、デザインする「社会プロジェクト」、コミュニティの構造、家族や人間関係、教育・仕事・遊びなど、新しい価値観やライフスタイルを提案し、デザインする「文化プロジェクト」、都市環境や施設、住居と暮らし、製品とサービス、生産と消費など、新しい生活環境を提案し、デザインする「生活プロジェクト」を進めています。

たとえば、自然エネルギーを活用して、高齢者が使いやすい交通システムをプランニングしたり、 地域に根ざしたオーガニックフードの栽培から料理、食器からレストランまでをプロデュースしたり、循環をキーワードに、リユースやリサイクルで魅力的な製品をデザインしたり、という取り組みに注目が集まっています。

2001年4月には、大学名に「環境」をつけた大学が誕生しました。鳥取環境大学は、鳥取県と鳥取市による公設民営方式で運営されるユニークな大学で、「文理融合」「学際的・実践的なアプローチの重視」によって、環境問題の解決に貢献する人材の育成をはかることを目的として設立されました。

現在、環境政策学科、環境デザイン学科、情報システム学科で、1-3年生あわせて1.166人の学生が学び、51名の専任教員がいます。
http://www.kankyo-u.ac.jp/

また、ISO14001認証取得に取り組む大学も増えています。2003年12月末現在、日本ではISO14001認証登録数は13819件となっていますが、認証取得した大学の数は、1998年10月の武蔵工業大学に始まり、現在では30件を超えています。

大学の事務局が中心に進める場合も多いですが、なかには、ISO14001取得の活動をひとつの「現場」として、自身の環境負荷を下げつつ、教育効果との一石二鳥をめざすユニークな取り組みもあります。

千葉商科大学では、認証取得にあたり、関心のある大学生が指導教官の指導のもと、「ISO学生会議」を作り、環境関連のゼミやイベント等を連結させ、ネットワークを形成しながら、学生の環境意識を向上させていきました。その興味深い顛末と今後へのつながりは、『環境が大学を元気にする 学生がとったISO14001』(海象社)に載っています。

一方、大学生の側にも、サークル活動などを通して、積極的に環境問題に取り組もうという学生が増えています。20年前には考えられないことですが、現在では、多くの大学で環境系のサークルがあり、ごみ問題、交通問題、地元の生態系保全、まちづくりなど、それぞれの思いや分野で活動をしています。

たとえば、早稲田大学の「環境ロドリゲス」は、1997年12月に環境問題に強い関心を持つ学生が集まり結成された、早稲田大学公認の学生環境NPOです。
http://rodo.jp/

60人ほどのメンバーで、「My弁当箱キャンペーン」「生協と協力して大学の環境改善に努める」「ゴミ箱開発プロジェクト」など、様々な企画を打ち上げ、活動しています。詳しくはこちら→
http://www.japanfs.org/db/552-j
 
また、大学の枠を超えた学生サークルもいくつもあります。もっとも古い歴史のある学生環境サークルのひとつは、1991年に誕生した「A SEED JAPAN」です。1992年ブラジルで開催された「地球サミット」へ青年の声をとどけるため、世界約50ヶ国70団体が参加したA SEED国際キャンペーンの日本の窓口として、全国の青年の声をまとめ、国連へ提言書を提出したのが始まりでした。

地球サミット後に、会員制度を有する団体として新たにスタートし、さまざまなプロジェクトを自主的に運営しながら、「環境問題を経済や社会の構造そのものから見すえる」ことを念頭に、取り組みを進めています。
http://www.aseed.org/

また、1994年に発足した、全国青年環境連盟(エコ・リーグ)は、全国的なネットワークを支えるためのサポート機関として、現在約150団体 2000名をネットワークし、さまざまなイベントなどの活動を展開しています。メンバーは、10-20代の学生や社会人です。
http://el.eco-2000.net/

このように環境問題に取り組む大学生を支援するしくみもあります。日産自動車では、1998年から「日産NPOラーニング奨学金制度」を設け、毎年20名程度の学生に奨学金を支給し、環境や福祉などのNPOに派遣するインターンシッププログラムを実施しています。
http://www.nissan-global.com/JP/PHILANTHROPY/PROGRAM/PROGRAM06/NPO/index.html

また、1999年に設立された損保ジャパン環境財団も、「損保ジャパンCSOラーニング制度」を設け、大学生および大学院生35名程度を、年間に150-300時間、財団指定のCSO(Civil Society Organization市民社会組織、NGOと同義)に派遣しています。財団は、学生とCSOの橋渡し役を務め、奨学金と交通費を支給して活動を支援しています。
http://www.sjef.org/internship/
http://www.japanfs.org/db/305-j

ここ数年、環境意識の高まりを受けて、インターンの応募数が急増しているそうです。このような支援制度に加え、現在では、環境NGOなどでのインターンシップを単位として認める大学も増えてきており、意識の高い学生が在学中から現場で力を入れて活動することができるようになっています。

JFSでも損保ジャパン環境財団からのインターン生が活躍してくれています。また、大学生のボランティアメンバーもたくさんいます。今後、世界の思いを同じくする大学生との協働の機会や場も提供していきたいと考えています。

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