ニュースレター

2003年10月01日

 

宇宙船の旅 - 川口市民環境会議と川口市立飯塚小学校の5年生

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JFS ニュースレター No.13 (2003年9月号)
シリーズ:環境学習の現場から 第1回

埼玉県川口市内の環境NPO、川口市民環境会議(浅羽理恵代表)は、年に一度の「エコライフDAY」を通じて、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出削減を広く市民に呼びかけています。一日版環境家計簿を独自に作成し、市民みんなに環境に配慮した一日を過ごすよう呼びかけ、記入済みの一日版環境家計簿を回収して、その効果を合計する取り組みです。市内の大手スーパー、公民館、図書館、市役所をはじめ、小中高の学校へも環境家計簿を配布し、児童生徒やその家族も参加する川口市の一大イベントです。

一日版環境家計簿には、約20の記入項目があります。例えば、「ペットボトル入りの飲みものを買うのを控える」と87g、「シャンプーや台所用洗剤は、使いすぎず、適量使う」と121g、「買い物袋を持っていき、余分な包装は断る」と48g、「自家用車を使わないで、徒歩やバス・電車を使用する」と830gの二酸化炭素削減につながります。

第4回目を迎えた今年は、参加者が2万8千を超えました。珠算教室に通う子供たちやボランティアの高校生が夏休みを返上して集計作業にあたりました。

2002年のエコライフDAYには、11,744人が参加し、1日で二酸化炭素を1,366,788g削減しました。この二酸化炭素を、身近なものに置き換えてみると、2.7本のドラム缶に入った石油を節約したことになり、これは98本の木が1年に吸収する量に相当します。(直径26cm,高さ22mの50年杉で算出)

川口市民環境会議では、一年のうち一日だけでも自分の生活を振り返り、環境に配慮した商品を選択するグリーンコンシューマーが増えてくれることを期待しており、エコライフDAYの内容をもっと理解してもらうため、学校への出張授業も行っています。

6月下旬の環境教育出前授業に参加させてもらいました。川口市立飯塚小学校5年生のクラスで、総合学習の一貫として実施された環境学習授業で、約30名の生徒を対象に4人のボランティアが講師を務めました。

授業の前半は、「これから宇宙船に乗って50年間旅をします。何を持っていきますか?」の問いに、5-6人の班に分かれて検討し、模造紙に書いて発表です。「今から50年? 僕らが61歳になるまでか-」

その日は気温が高く蒸し暑かったせいか、ペットボトル入り清涼飲料水は、持ち物リストの上位を占めました。更なる涼を求めアイス、プールを挙げる班も。50年分の食糧・水、お菓子、テレビ、ゲーム、宇宙服、ゴミ箱、多種類の動物。勉強道具を挙げた感心な班もあって、各班ごとに特徴があって興味深い結果となりました。

講師が、「水や食糧の保存法は?」「ゴミ処理や電源はどうするのかな?」と問題を投げかけます。子どもたちに資源の「循環」に気づいてもらうことが狙いです。意外だったのは、子どもたちが「水は腐る」ということを知らなかったことです。巨大冷蔵庫を用意する、ゴミはそのまま宇宙に捨てる、巨大焼却炉を作る、電池を大量に持っていく、などのアイデアが飛び交いました。

「でも宇宙船の中でも、今までと同じ生活のしかたで良いのかな?」議論を進めていく中で、オゾン層破壊の原因は、もしかしたら私たち人間が作り出している?と、気づき始めた子どもたち。

次に、「30年後の地球」をイメージしたビデオを見ました。世界人口増加、人間活動の拡大による資源の枯渇、地球温暖化の悪化、南北の貧富の差の拡大など、現在の地球が直面している様々な問題を厳しく警告する内容です。子どもたちの中に「危機感」が少し芽生え始めたようです。子どもたちは一言もおしゃべりをせず、真剣に見入っています。

最後に、1992年にブラジルのリオで開かれた国連環境開発会議で、子ども代表だったセバン・スズキさんのスピーチが紹介されました。当時12歳だった彼女は、大人に向かって「オゾン層に開いた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。どうやって直すのかわからないものを、壊し続けるのはやめてください。」「大人はみんな子どもを愛しているっていうけど、このことを行動で示してほしい」と訴えました。自分たちとほぼ同じ年の女の子が、自分の将来、みんなの将来について真剣に考えていたことが、子どもたちの心に響いたようです。

授業の終わりに書いてもらった感想文の中には、自主的に目標を立てた子どもが多くいました。「使っていない部屋の電気はこまめに消す」「水の使いすぎに気をつける」「寒い日には厚着をし、暑い日には薄着で、夜も窓を開けて寝るようにする」「給食を残さない」「ゴミを減らしてリサイクルする」「ゴミが多く出る商品はなるべく買わない」など、自分でできることから始めてみよう!と気づいた子がたくさんいました。

また、「自然が大好きなので、水が汚されて、森がどんどん切れらていくのがとても嫌だ。人間は生物や地球がなければ何もできないので、明るい未来になるようにしたい」などの意見も。「大人と子どもが力をあわせて努力すれば、地球環境をよくできそうだ」「環境についてもっと知りたいのでこういう授業をもっとやってほしい」との意見もありました。

最近、「環境教育におけるコラボレーション」の重要性がよく訴えられています。地元に密着したNPOが、学校教育の現場に入って、自分たちの知識や経験を活かして、子供たちに直接問いかけ、揺さぶり、気づきをもたらすようすを見て、改めてコラボレーションの重要性を感じました。子供たちの気づきや驚きをどのように行動につなげていくか? これも大切な次のステップであると思います。

(高橋彩子)


 


 

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