ニュースレター

2003年10月01日

 

大量生産から適正生産へ - 画期的なセル方式によるベルトレス革命、日本の製造業で進行中!

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JFS ニュースレター No.13 (2003年9月号)

近代的な工場といえば、ベルトコンベヤーのうえを流れながら製品ができていく様子を思い浮かべる方も多いことと思います。コンベヤーを使った流れ生産システムは、1785年ごろから考えられていました。フォード自動車ではコンベヤーを用いた流れ生産が1913年に始まっています。

これまでは、「優れたライン設計をすれば、コンベヤーシステムは生産性の観点からきわめて有効な生産方式」と多くの工場で導入されてきましたが、ここ数年、日本の製造業では、新しい生産方式が導入され、経済面でも環境面でも効果を上げています。

作業者がベルトコンベヤーに沿って一列に並ぶ生産方式をやめて、セル(小さな単位)での生産に切り替えているのです。これは、アメリカで生まれた大量生産に対して、注文に応じて生産する「オンデマンド生産」という新しい生産システムです。

そのリード役を果たしているリコーの例をご紹介しましょう。6月号でもご紹介したように、リコーの「環境経営」の考え方は、「環境に積極的に取り組むことによって、利益を生み出さなくてはならない」というものです。

そのリコーでは、ここ数年で生産工程が大きく変わってきました。見込み生産による大量生産から、オンデマンドによる適量生産への移行です。それを支えているのがコンベアレス生産です。

まず、営業社員が客先で受注すると、製品とユーザー個々のオプションを受注フォーマットに入力し、ネットワークで即時に御殿場工場へ送ります。その情報は、工場内での発注伝票に書き換えられ、すぐに生産が始まります。

この工場では、全工程をコンベアレスで組み立てるフォーメーション・セル生産方式がおこなわれています。フォーメーション・セル生産は、生産パターンを複数用意しておくことによって、週単位で生産量を変えることができる非常に自由度の高い生産方式。需要変動の激しい製品を効率よくスピーディーに供給することができます。

消費者の多様なニーズに対応するために、以前の大量生産から、多品種適量生産へ、コンベアライン生産からセル生産へ、移行したのです。その結果、コンベアレス化によって、消費電力も大きく削減されました。

リコーユニテクノ工場でも、コンベアラインから台車びきラインへ、大型電動台車から、手作り台車ロボットへ移行することで、電気使用量、CO2排出量とも従来の80分の1になり、組み立て工程の消費電力を太陽光発電でまかなえるようになりました。

「これまではお客様が買うか買わないか、まだわからないものを工場は一生懸命作っていましたが、いまはお客様が買うと決まったものを提供する方式です」とのこと。

日本企業では、リコーだけではなく、キヤノン、ソニー、NECなどの大企業でも相次いでセル方式を導入し、成果をあげています。

たとえばキヤノンでは、1998年から2002年までのセル生産導入効果としてベルトコンベアを20km撤去し、72万平方メートルのスペースを削減し、自動倉庫を45基撤去し、外部倉庫は17箇所(13万平方メートル)廃止しました。仕掛り回転期間は31%短縮し、排出量はCO2換算で54,677トンの省エネを達成(2002年)。それにともなって、1,738億円のコストを削減しています。

JFS理事でもある千葉商科大学の三橋規宏教授は、「環境問題を解決するには、『大量生産、大量消費、大量廃棄』から『適正生産、適正消費、ゼロエミッション』に移行しなくてはならない。セル方式によるベルトレス生産革命は、見込み生産を前提とする大量生産から、必要なものだけ作るというオンデマンド生産を前提とする適正生産への移行である」と環境と経済の両立の観点から、高く評価しています。

フォードがベルトコンベアを導入してから100年近くたったいま、新しい製造業のパラダイムシフトが日本で起こりつつあるのです。


 


 

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