ニュースレター

2003年09月01日

 

「開発する全製品をグリーンに」 - 松下電器グループ

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.12 (2003年8月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第3回
http://panasonic.co.jp/index3.html
http://panasonic.co.jp/eco/

松下電器産業株式会社は、1918年に創業し、現在は子会社を含めグループ全体で約40ヵ国に約29万人の従業員を抱える総合エレクトロニクスメーカーです。部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器等に至るまでの生産、販売、サービスを行っています。

2002年度の連結売上高は約7兆4000億円で、売上の地域別内訳を見ると日本(47%)、米州(19%)、欧州(13%)、アジア/中国他(21%)となっています。日本ではNationalのブランドで知られていますが、海外ではグローバルブランドのPanasonic、オーディオブランドのTechnics、北米地域特定ブランドのQuasarで知られています。
http://panasonic.co.jp/company/info/about/

同社は環境にとって大きな影響をもつグローバル・メーカーとして、環境経営の展開に先駆的役割を果たしてきました。大きな影響というのは、同社が2002年度に排出したCO2排出量が、日本の事業所だけでも日本全体の約0.11%(産業部門では約0.27%)、化学物質の排出・移動量は日本全体の約0.2%に及んでいることが示しています。

影響の大きさを強く認識している同社は、製品の全ライフサイクルでの環境負荷低減はもちろん、優れた環境配慮型製品の提供とそのコミュニケーションを通して、一企業の枠を超えて持続可能な社会づくりに波及効果を及ぼすことを掲げて積極的に活動をしています。特に同社の製品に関する目標は「開発する全製品を"グリーンプロダクト"にする」と、極めて野心的かつ明解です。

今回のニュースレターでは、同社の数有る取組みのなかから、特に私たちの生活に直接的に関わる環境配慮型製品について、いかにしてそれを生み出しているのか、そしてそれが社会へどのようにコミュニケーションされ、どのような波及効果があるのかについてみてみたいと思います。

まず、グリーンプロダクツの基準ですが、これは明解かつ高水準なものでなければ意味がありません。同社ではまず環境配慮設計にもとづいた製品を「グリーンプロダクツ(GP)」と称し、これを2つに分類します。1つは、エネルギー・資源・化学物質の3つの視点から製品ライフサイクルでの環境への影響を最小化した「環境効率向上型製品」、もう1つは、環境問題を解決する目的を持って開発した「環境問題解決型製品」です。

さらに、グリーンプロダクツの上位概念として「スーパーGP」というカテゴリがあり、これは、環境効率の飛躍的な進歩に加えて、持続可能な社会の実現に向け大きなトレンドを作る「持続可能性追求型製品」として社内で認定した製品です。
(「環境効率向上型製品」は、次の三項目の一項目以上をクリアし、他は業界トップレベルである必要があります。その三項目の2002年度の内容は、1)エネルギー利用指標が2000年度比12%以上向上、2)化学物質は鉛フリーハンダ導入と指定6物質の使用禁止、3)資源利用指標は2000年度比20%以上向上、となっています。)

有害化学物質の使用に関して同社では、今年大きなブレークスルーを成し遂げました。2003年3月末までに、12000機種、グローバルの全製品に対し、有害化学物質である鉛を使用しないはんだ「鉛フリーはんだ」の導入を完了したのです。電気製品のもっとも基本的な仕組みは、部分と部品をつなぎ合わせ、そこに電気を通すことで様々な機能を実現することにあります。

そのつなぎ合わせるための物質には約5000年もの歴史をもつといわれる「はんだ」を使用していましたが、このはんだには鉛を含めることが必然と考えられてきました。鉛フリーはんだの全面的導入は有害物質をできるだけ使用しないクリーンなモノづくりの大きな一歩となります。
http://panasonic.co.jp/ism/handa/

上記の進展も貢献し、2002年度に開発した製品のうち、583機種がこの「環境効率向上型製品」として認定され、グリーンプロダクツ開発率は41%(目標28%)となりました。これらの製品の環境配慮内容は、わかりやすくより多くの方にお伝えすべく新聞(7本)やテレビCM(2本)を通じて一般の方々へコミュニケートされ、取組みが広く認知されました。次なる目標は、2010年度にグリーンプロダクツを全体の90%に拡大することになります。

そしてまた、「スーパーGP」として初めて2製品、『Theノンフロン冷蔵庫』と『待機時省エネIPD』が今年認定されました。前者は、冷媒、断熱材に全くフロンガスを使用していない冷蔵庫で、新開発の真空断熱材利用に省エネと温暖化防止効率を飛躍的に高めます。「ノンフロン」というトレンドを創ったという点で、持続可能な社会への波及効果があると考えました。また後者は、機器の待機時消費電力を自動的に制御して大幅に削減するスイッチング用半導体素子です。汎用性の高いこの機器を多くの製品に適用することで、やはり社会全体の省エネルギーに貢献できることが期待できます。

松下電器の掲げる、「開発する全製品をグリーンプロダクツに」という目標は、一見野心的にも思える挑戦に見えます。しかし、同社の中村社長は、2003年環境経営報告書の緒言において、1)環境問題は企業倫理と同一であり、企業経営そのものであること、2)環境問題に対して透明性を高めて取組むことが、企業倫理を高める原動力となること、そして、3)社員がいきいきと、自らの仕事に誇りを感じ、正々堂々と事業活動を営むことによって、持続的に発展しうる企業となる、という哲学を述べています。この言葉を目にする時、同社が取組む、一見して野心的にも思えるこの目標は、そのために達成すべき当然の課題なのだと納得できるのです。

English  

 


 

このページの先頭へ